第15話 ◇おしゃれな店◇
「まあ、少し。中村さんお酒強そうですね。」
「私ね。実はあまり強くないのです。すぐ酔っぱらっちゃって。でも日本酒好きなんです。」
そう言うと、佳乃子は運ばれてきたおしぼりを瑠璃子と木村に渡した。
「中村さん、良い香りしますね。」
「これ店の名前の「ティートゥリ―」をベースにブレンドしたの。いい香りでしょ。」
「食事の時につけていても邪魔にならないですね、爽やか。」
「そうでしょ。私すごく好きな香りで店の名前にしたのです。」
コース料理を予約してくれていたのか、先付から始まって、刺身や焼き物、煮魚など季節の地場の食材を使った目にも美しい料理が出てきた。
「私、このお店知りませんでした。」
佳乃子は、瑠璃子の前に置かれた色鮮やかな津軽ビードロの盃に冷酒を注ぎながら言った。
「ここね。前はおお好み焼き屋さんだったのです。この通りは、私が若い頃は賑やかだっだったのだけど、どんどん店が閉まって、この店、お父さんが経営していたのですが、今は息子さんがおしゃれな創作和食を始めたのですよ。若い女性やカップルも多いのですよ。予約でいつも一杯なのです。」
「そうなのですね。私は息子と二人暮らしで、外食はラーメンやそばやうどんばかりで、こんなおしゃれな店に来る事ないから、嬉しいです。」
「息子さんと二人暮らしなのですか?」
「ええ。息子が二人いるのですが、上の息子は結婚して松山にいて孫が二人います。今は下の息子と暮らしています。主人は十年程前に病気で亡くなりました。」
「そうなのですか。沢田さん若々しいわ。お孫さんが二人もいるように見えないですよ。」
「ありがとうございます。」
「私も今は独身なのですよ。離婚したのです。息子と娘がいるのですけど、二人共の県外にいるので、普段の食事は惨めなものです。コンビニのお菓子とかカップラーメンとかね。」
「町なかにお住まいなのに?いつでもどこにでも食べに行けそう。」
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