第3話アロマサロン◇

大学生は学校へ行くことができず、リモートで授業する所も多かった。楽しい新学期が悲しい新学期になってしまったのだ。日本国中が我慢を強いられる事態となっていた。

六月になって、制限が少し緩和されたのもで、れもん薬局が休みの日曜日も営業しているというので、瑠璃子は、アロマサロン・ティートゥリーに連絡をして訪店する事にした。 

店の前の駐車場に車を停めて、店を外観から眺めると、色々なハーブの写真が壁に掛けられていて、木で出来た棚には綺麗な小さな箱に入ったアロマオイルが並べられていた。ガラス窓越しから中を覗いていると、色白で目鼻立ちの整った美人が出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。お電話頂いた沢田さんですか?モリ―のご紹介の。」

「そうです。沢田瑠璃子です。こんにちは。」

店に入ると、柑橘系の爽やかな香りがした。瑠璃子はアロマ専門店に来るのは初めてだったが、香りの中ににいるだけで気持ちが和らいだ。

「中村佳乃子と申します。」

 肩まで伸ばしたダークブラウンの髪をふわりと後ろで束ね、ハーブの模様の髪飾りで止めていた。細っそりとしたボディラインが際立つアイボリーのノースリーブのワンピースを着ていた。佳乃子は瑠璃子に近づくと名刺を渡した。「アロマサロン・ティートゥリー中村佳乃子」と、書かれた名刺からは良い香りがした。

「中村佳乃子さんですか。私、松木で「れもん薬局」を経営している沢田瑠璃子と言います。」

瑠璃子は飾り気のない写真の入った自分で作った名刺を渡した。

「この名刺、良い香りですね。アロマオイルが浸み込ませてあるのですね。」

「そうなのです。うちのお店の名前と同じティートゥリーの香りです。お気に召しましたか?」

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