第18話

 「侑の事好きだけど…ごめん。

 それに今、俺の事好きだって言ってくれる子がそばにいる。

 そもそも女優と付き合うなんて……俺には初めから無理だったんだ。

 ……だからもう俺達、終わりにしよう。」




 確かに私達は、普通の恋人のように頻繁には会えなかった。

 女優なんだから週刊誌に撮られないようにしろとか、会う頻度を減らせとか、社長からは口を酸っぱくして言われていた。

 実際にまだ人気のあった時期は、スケジュール調整が難しくて、全くと言っていいほど会えなかった。




 今彼のSNSを開けば、新しい彼女との日々を惚気るツイートが、ひっきりなしに上げられている。




 〈今日彼女の家でお家デート〉



 〈肉じゃが美味い〉



 〈やっぱり家庭的な子は落ち着く〉




 私は————聖。




 私はあなたの何だったのかな。




 女優という仕事をしていて、あなたに寂しい思いをさせたのは分かっていた。




 だけど私は、あなたを忘れた事は1日もなかった。




 いつか女優しごとを辞めて結婚しようと思うくらい、好きだった。




 最後の電話でも、つい私は自分を偽った。




 『分かった。

 新しい人と、お幸せに。』




 こんな時に、馬鹿みたいに職業病が出るなんて。




 『嫌だ』



 『別れたくない』



 『まだ好きだよ』




 どうしてそう言えなかったの。




 明日からどうしよう。

 社長の提案を断れば解雇される。

 例えパワハラによる不正解雇だとしても、仕事がないのを理由にされれば太刀打ちできない。




 そうなると、女優を続ける事すら難しくなる。



 

 そしたら何をして生きていこうか。

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