第12話

 *



 この役が終わったら白紙のスケジュール。

 しかもコロナの影響で、どの俳優も仕事が激減してる。

 それが私ともなると尚更だ。




 「ごめんなさい、侑さん。

 私が不甲斐ないマネージャーなばかりに。

 営業はしてるんですが、中々見つからなくて。」




 鳥飼とりかいさんは人気が低迷した辺りから私の担当になった、私より年下の女性マネージャーだ。



 帰り道の車の中。鳥飼さんが悲しそうに呟くと、返って申し訳ない気分になる。




 「大丈夫だよ、鳥飼さん。

 それにこんな私のために一生懸命仕事を探してくれてありがとう。

 本来なら私も一緒に営業するべきなのに。

 でももう……いよいよ、なのかもね。」




 「や……やだ、侑さん。そんな。これが最後みたいな言い方しないでくださいよ。

 それに営業は本来マネージャーの仕事なんだから!

 明日も明後日も私、色々と知ってる会社に頑張って掛け合ってみますからー!」



 

 「明日……そう言えば私。

 明日は社長に呼ばれてたんだ。」




 「社長に……?何ですかね?私は何も聞いてないけど…あ。もしかして?

 何か仕事を見つけて貰えてたら嬉しいんですけどねえ。」




 「うん。本当にそうだといいけど。」


 


 人気が低迷してる私に、今の社長は死ぬほど冷たい。

 そんな人がこんな私のために、直々に仕事を探してくれるなんて事があるんだろうか。

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