第11話


 「はい、カット!」



 「わー、侑さんお疲れ様でしたー」


 

 最後のシーンを撮り終わると、共演者とスタッフからバラバラとした拍手と、小ぢんまりとした花束が送られた。

 

 

 最初の数話に出るだけの本当の端役。

 しかも殺されて終わりという。

 血糊を拭き取り私は慌ただしく挨拶する。



 「ありがとうございました。」



 拍手が疎になったところで、またスタッフが慌ただしく動き出した。


 

 「はーい、では時間がないので撮影再開しまーす。」



 私の演じる役が死んだ所でこのドラマは終わらないし、撮影はまだまだ続く。

 忙しそうな共演者とスタッフの後ろ姿を見つめ、私はもう一度深く頭を下げた。




 「ねー…まりか見てよあれ。まだスタジオにいるつもりかな?もう出演シーンもないくせに。」



 「ホント。さっさと帰れっつの。

 まだ自分が売れてる女優だとでも思ってんのかな」




 ヒロイン役で人気俳優の浅井あさいまりかと、共演者のアイドルの子が露骨に悪口を囁きながら移動していった。




 1人だけ切り離された空間。まるで自分の存在がこの世から消えたかのよう。




 そうして、撮影所の脇にいる目立たない私を最後に見たのは、あの人だけだった。

 綿貫昴生。



 彼だけが私を見つめ、謎めいた笑顔を向けていた。



 

 〈————侑さん、また会いましょう〉




 声には出さず、器用にそう口だけ動かす。


 

 その時の昴生の笑顔は、カメラに写ってないこんな時でも、息を呑むほど美しかった。

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