第10話
もしかすると私も、売れていた時期はこんな風に傲慢だったかも知れない、なんて事をぼんやりと考える。
「……綿貫くん。はっきり言うね。
私はあなたの事は、才能のあるいい俳優だと思ってる。
それに、まだこれからも伸びると思う。
ただ……
私はあなたには一切興味がない。
顔も好みじゃない。だから……ごめんね。」
「……そっか。
顔が好みじゃないって言われたら、それはどうしようもないですね。」
言われた事が少し堪えたのか、昴生は少し残念そうに前髪をかき上げた。
それから深い溜息を吐いた。
諦めてくれた?
そもそもこんな私に、君のように今人生が一番輝いてる人が興味を持ってるなんて、ありえない。
「だけど……興味を持って貰える可能性はありますよね?
例え今はゼロでも?」
話は終了したように思えたのに、昴生は自信ありげに、にこっと笑った。
「なら……いくらでも待ちますよ。
侑さんが俺の事に興味を持つまで。
————だってもう、要らないんでしょう?
人生。
ねえ。侑さん。
もしも本気で死にたくなったら、最後に俺の事を思い出して下さいよ。
そしたら……俺が侑さんの人生ぜんぶ、責任を持って引き受けるから。」
「……綿貫くん。私はあ」
「あ、俺もう行かなきゃ。
じゃあ、またね。侑さん。」
もう一度はっきり断ろうとしたのに、昴生は手を軽く振って、部屋からあっさりと出て行った。
あれは本当に誰なんだろう……?
確実に私が知ってる綿貫昴生じゃない。
私の人生に責任を持つ……?
本当に何言ってるのあの後輩は。
もうあとは坂を転げ落ちていくだけの女に、本当に何言ってるの……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます