第9話
死にたいなんて言ってないのに、死にたいと思ってる心を見透かされたのか。
この男は一体誰………?
堂々と私と体の関係を持ちたいと発言する、何やらとんでもない男みたいだ。
「———侑さん。返事は貰えないんですか?」
昴生は微笑みながら、答えを催促する。
「言わなくても分かってるなら、敢えて言う必要ないでしょ?」
視線を逸らして私は淡々と断った。ドラマのセリフみたいに。
今日の撮影の最後のセリフの確認をするフリをして。
———これまでの女優生活でこんな風にアプローチしてきた男達が何も全くいなかったわけじゃない。
ただしそれもまた、人気絶頂期の時だけの話。
そういう人は大抵私と関係を持ちたがった。
私の持つ知名度が欲しかったから。
勿論当時は、そんな男達の告白を断るのも慣れていた。
だけど今は、こんな落ち目女優に好き好んで交際を申し込む人なんていない。
どうせ、からかってるんでしょ?
私は鏡台の前に立つ、背の高い昴生を見上げた。
「ねえ…侑さん。これだけは聞かせてくださいよ。
何で断るんですか?
俺、自分で言うのもなんだけど、今俺ほど売れてる人気俳優なんてこの日本にいないと思うんですけど。
しかも結構稼いでる。
顔もそこそこ悪くはないでしょう?
その俺が侑さんを下さいって頼んでるんですよ。美味しい物件だとは思いませんか?」
本当に自分で言っちゃうんだ。
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