第6話

 今一緒に共演してる刑事ドラマ。



 その主役がこの男。綿貫昴生だ。

 今日は私が出る最後の撮影があって、同じ事務所の先輩だからと彼が控え室に挨拶にきた。



 その流れで今の告白だ。

 



 「冗談じゃなければ怒らないんですか?」




 鏡台を背に寄りかかり、昴生は意味あり気に含み笑いをする。



 人気俳優の返す返事はやはり一味違う。

 気もする。



 

 「だって侑さんが自分は駄目な人間だって言うから。

 もうどうしようもないって。

 生きてても仕方ないって言うから。

 そんな悲しい事言うくらいなら、どうせもう俳優業にも……この世にも未練なんてないんでしょ?

 だったら俺に下さいよ。

 侑さんの残りの人生を。」





 そんな言い方した覚えは—————いや。




 したのかな。無意識に。

 この後輩くんに。



 だって今日のこの仕事が終われば後のスケジュールは真っ白だし、一昨日恋人には別れ話をされるし。

 


 でもこの世に未練がないなんて言ってない。


 

 言ってないよ。



 言いたくても。踏み留まったはずなのに。

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