第7話

 さっきから不敵に笑うこの男は、確かに同じ事務所の後輩だ。




 しかも今一番売れてる人気俳優。私とは天と地ほどの差がある。




 なのに熱っぽい視線を傾け、目の前に立ち塞がっているのは、どう考えても私の知ってる綿貫昴生じゃない。

 性格はいつも真面目で、礼儀正しくて、素直で、先輩思い。

 これまでのイメージと全然違う。





 「私の人生なんか貰ってどうするの?」




 「俺色に染めます。」




 淡々と言って笑う。綺麗な声で。




 「どういう意味……?」




 「まんまです。

 侑さんと色んな事したいです。

 一緒にご飯食べたり、映画見に行ったり。

 あ、セックスもしたいです。

 恋人みたいに。

 どうせ死ぬ気なら………それ全部俺のしたいことの時間に当てて下さい。」




 一体この目の前にいる男は誰?




 確かに、人見知りの私が気兼ねなく喋れる後輩の1人ではあるけれど。



 こんな自信に満ち溢れた笑い方をする後輩を、出演してる恋愛ドラマの中でも見た事がない。



 いつも視聴者を溶かすような甘い演技しかしないのに。

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