第5話

 「なんか、その俳優さん。

 演技だけは上手かったんだけど他が駄目だったっていうか。

 バラエティ番組であんまりしゃべんないし、共演者とも打ち解けるのが苦手だったみたいで…いつの間にかテレビから姿を消したイメージがあるなあ。

 言って不器用な人…?」

 


  

 「そうだったんだ。私は全く覚えてすらいないよ。 

 この冬のドラマにだって端役でしか出てないし。

 今何歳くらい?」




 「うーん。私が小学生の時で朝ドラの時が15歳っていうから、今は33、4歳くらいじゃないかな?」




 「あー……そっかあ。

 もうそんな歳なんだー」




 

 30歳過ぎれば、もうそんな歳だと言われる。

 それに近頃は女優も、俳優と呼ばれる時代だ。

 

 


 人気絶頂だったあの当時は、変装しなければカフェで呑気にコーヒーなんて飲めなかった。

 今みたいにネットですぐに晒される事はなくても、誰かが携帯のカメラで撮りまくるような時代だった。



  

 だけど今はすっかり落ち目だから、変装なしだって気づかれない。悲しい事に。




 それでも女優をやめないのは、私にはそれしかないから。




 その子達が言うように私は不器用な人間だ。




 *




 あれがつい昨日の出来事。

 そんな私に。なぜ君が……?




 「綿貫くん?

 冗談で言ってるなら私怒るよ?」

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