第5話

「皆ー!待ちに待った体育祭だぞー!」


「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」


「…」


「…」


騒いでいるクラスメイトを片目で見ながら、愛羅と一緒にいた。

そして、もう隣には心花がいた。


最近はこの3人で行動する事が多い。

だが、それをよく思っていないのか、よく教科書が使い物にならなくなっている。


まぁ、お金あるし、校長に頼めばくれそうなのだからいいのだけれど。


「「はぁ…」」


ため息をつく。

それは隣からも聞こえてきた。

どうやら、心花もため息をついてあたらしい。


「どうしたんだ?ため息なんかついて」


「お前もだろう…。私はあまりこういう騒がしいのは好きじゃないんだ」


「そうなのか」


「あぁ…。そうだな、まるでテレビの砂嵐…。それかもしくは、黒板を爪を立てて引っ掻くだとか…。それと同じくらい、アイツらの声はうるさくて、不快なんだ」


「まぁ、分かるよ」


「それで?お前はどうしてため息なんかついているんだ?」


「同じ理由だ。それと、」


「…?」


「お前の反対隣の人が俺の腕に抱きついているのが嫌なんだ」


「…そこを変わったりしないからな」


「おい、下着を取ってるやつが何言ってんだ」


「いや、あまり注目されたくないからな…。それに、それをやると、お前みたいに変な目で見てくるやつがいるからな」


「あぁ…」


邪な考えと優しさが混ざった生暖かい目か。


でも多分、俺と愛羅よりも心花と愛羅の方が認められるし、男子も諦めると思うけどな…。


「でも、やってみないと分からないんじゃないか?ほら、愛羅。心花と交換してくれ」


「…私は等価交換を求む」


「ミルクティーを奢ろう」


「分かった」


「そんなに軽いヤツで大丈夫なのか…?」


「軽い物でお前に抱きついてくるんだ。有難く思え」


「確かに…。他の人だとかだったらミルクティー何本ぐらいになるのだろうか…」


「もしかしたら、自動販売機丸々一個求めるかもしれないかもな」


「そ、そういうものなのか…?ってもう抱きついてるし…」


「あっ…。じゃあ、俺はここで…」


「お、おい!私を置いていくなぁー!」


「きっと、柚葉君はミルクティーを買ってきてくれている」


「そ、そうじゃなくてな…」



「ね、ねぇ…。あれ見てみて」


「どれ…?って、あ、あの2人ってそういう…?」


「もしかして、あの男の子は2人をくっつける為に…?」


「お役目ご苦労さまです」



「お、おい、あれ見ろよ」


「な、何!?ここあいだと!?そんなの僕のデータにはないぃ!」


「どういうデータだよ…。ってあれ?どうしたお前?」


「…」


「お、おい、何か言えよ…」


「ごめん…。俺、新しい扉開いたわ」


「「理解出来る」」




ザワ…。ザワ…。

と何か言いながら興味津々な目で皆が見てきている。


「柚葉ぁ…早く帰ってきてくれ…」


「心花ちゃんは、私と一緒にいるの…いや?」


「嫌じゃないが…。視線が…」


「えへへ…そう…」



「…私らはどうやら邪魔らしい」


「行こいこ」



「…俺らも行こうぜ」


「そうするか…。百合の間に入る男は殺されるからな」



「これでいいよね?」


(良くなーい!!)


「あれ?他のやつらはどうしたんだ?」


俺は周りにいなくなった


「ゆ、柚葉ぁ。こ、交代しよう」


「ん、柚葉君の腕に失礼」


「な、俺の大変さが分かっただろう」


「そ、そうだな…。よく耐えてたな…」


「ん、酷い」


話していると、視線を感じた。


「うわ、またアイツかよ」


「離れろよ…!」


「百合の邪魔しやがって…」


「「そっちぃ〜?」」



「正直言ってキモイ」


「綺麗な百合の花が咲いていたのに…」


「じゃあ、私たちで咲かせる?」


「えっ…?」



などなど、言われたりイチャつかれたり。


やはり、俺はここにはいられないのだろう。

腐ったミカンは周りも腐らせる。

俺はここから離れるとしよう


「待ってください。何処へ行こうとしているのですか」


「お前は…」


声をかけられた方を見るとそこには女子寮の番人が。


榧月かやつき 透葉とうはと申します。榧月と呼んでください」


「榧月。女子寮以来だな」


「はい。そうですね。ですが、同じクラスですので、いつでも話そうと思えば話せたのですが…」


榧月は愛羅の事を見ながら言った。


「どうやら、私はお邪魔のようでしたので」


「…」


すると、また周りがどよめいた。



「あれって…」


「榧月さん…だっけ?」


「私、あの人かをあまり人と喋ってるの見た事ない」


「私も」




「あれっ?榧月が喋ってる。珍しい」


「ホントだ」


「あんま人と喋る人じゃないのにな」


「いや、性格の問題だ」


「性格…?」


「アイツ…。真面目ちゃんだから」




「見てよ。真面目ちゃんが、女たらしと喋ってる」


「ホントだ。注意してるのかな?」


「そんな事は無いでしょぉ」


「じゃあ、オトされたって事?」


「確かに〜!」


「「あはははは!」」




「…」


「おい。言われてるぞ」


「大丈夫です。元からなので」


「私から見て、大丈夫だと思えないのだが」


「…策は打ってあります」


「何…?」


「あれです」


そうして指を指した方向には、


「元気にやってるか?諸君」


校長が立っていた。


「こ、校長!?なんてをこんな所に…!」


「ははっ。ちと、娘に会いたくなってなぁ」



「聞いたか?」


「あぁ」


「校長先生が男とイチャついてると聞けば、間違いなくヤられる」


「そうだな…ククッ。俺たちの時代がやってきた…!」




「…。どうだ?愛羅。調子は?」


「絶好調」


「そうか。それは何よりだ。柚葉君」


「はい」


「娘を、よろしく頼むぞ」


「承知してます」


「うむ。…ここにいる者よ!周りの噂や外見だけで判断しないでほしい!それこそ、娘達を言葉の刃で傷つけるのもな」


「「「…」」」


「分かったのなら、娘達を傷つけるのは止めて欲しい。これは、娘からも言われた事だ」


そう言って校長は去っていく。


「最後に、皆の者。体育祭を全力で楽しんでほしい」


そう言って校長は姿を消した。


お言葉だが、校長。

多分、逆効果だと思うぞ。


それだと、俺達が校長に言いつけたという印象が出来てしまう。



さっき言われたことを思い出す。

皆に聞こえない程度で話した言葉。


『娘をよろしく頼む。もちろん、柚葉君の友達も』


「あぁ。分かってるさ」


つまりあの言い回しは

油は、撒いた。あとは材料になる木。

そして、火。


…俺が木になって、クラスメイトに燃やしてもらう。

そして、やけどとして、一生一人で背負うしかない。


「おい、柚葉」


「なんだ?」


「…。


そんな一言だけだった。


重かった。でも、軽くなった気がした。


「ああ。そうするよ」


「本当だろうな」


「…前の俺とは違うんだ」


ひとりぼっちで、頼ろうとしても、誰にも頼れなかった俺とは。


「さぁ、どうするんだ」


「俺達、この組団で木を立てる」


「…ふふっ、言い回しが校長に似てきているな」


「確かに。お父さんも言いそう」


「…私には分かりません。後で嫌と言う程分かるよ」


初めようじゃないか。

俺達の今の立場を帰る逆転劇を!

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雨の日に傘を落としただけなのに…。 なゆお @askt

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