第4話

数日後…。


「えっ…?お礼?」


「そう。私自作のお弁当」


「…一応聞いておくが、変な物入れてないよな?」


「むっ、失礼な。私の心は富士山の天然のように純粋で綺麗」


「自分でそれ言うか?」


「うん。ちなみに私視点では柚葉君は泥そのもの」


「腐ってるってか」


「そこまで酷くない」


「1番悪くてどんくらいなんだ?」


「ゴキブリ」


「なら俺、マシな方か」


ゴキブリなんかたまったもんじゃない。


「…で?弁当だっけ?愛羅は何食うんだ?」


「オソロの弁当」


「おおぅ…」


「実質愛妻弁当」


「凄い並びの六字熟語だな」


「とりあえず食べて欲しい。きっと驚く」


そうして差し出してきたお弁当はとても美味しそうだった。


「…ちなみに料理の腕前は?」


「おかしを作れるレベル」


「よし、大丈夫だな」


あとは変な物が入っていない事を祈るしかない。


いざ、食べてみる…。


と、


恐ろしく無味だった。


「んっ?」


そういえば、体ダルいな。


「なぁ、愛羅。おでこ触ってくれないか?」


「!?喜んでさわる」


そうして触られた愛羅の手は冷たかった。


「えっ!?熱いよ!どうしたの!?」


「…悪ぃ、風邪かもしれねぇ」


「なら休まないと!」


「いや、いい。どうやら軽そうだし」


「味、感じないんでしょ?なら、ヤバい。休まなきゃ」


「いや大丈夫…」


ヤバい。クラクラする…。


「つ…!」


そうして俺の意識は暗闇へと放たれた。




「ん…」

目が覚めると、見知らない天井がそこにはあった。


「ここは…」


そこは保健室では無かった。

だが、1回来たことがあるから分かる。


「愛羅の部屋…」


何故保健室ではないのか。

そして、何故愛羅の部屋なのか。


「あ、起きましたか」


そこには愛羅の自称親友が


「心花…。色々ツッコミたい事はあるが、まずなんでお前がここに?」


「それが聞いてくれよ!私、本当に愛羅さんとお友達になれたんだ!」


「そうなのか…。それは良かったな。てか、なんで愛羅の部屋なんだ?」


「保健室の先生がいなく、成績優秀な私と愛羅さんで、ここの部屋に運んできてあげたんだ」


「なんでそこで成績優秀が出てくるんだ…」


「おいここがどこか忘れたのか?医学大学だぞ」


「あっ、そうだった」


医学大学。

市内で1番設備や環境が整っており、お金が安く、試験さえ合格すれば、将来有望な医者になれると聞いて受けたのだった。


「はぁ…。本当に大丈夫か?」


「あぁ。大丈夫だ。俺はこれで失礼するよ」


「…おい。愛羅様から聞いたがお前、40度出てるらしいな」


「大丈夫だ」


「そして、バイトをかけ持ちしているらしいな」


「そう。だから休んだら他の人に迷惑がかかるからさ。そこをどいてくれない?」


すると俺は押された。

その反動でベットに倒れてしまう。



「こんなに弱いやつが行ってももっと迷惑がかかるだけだ。それに、もうかけているだろう。愛羅様に」


「…なら、せめて家に帰らせてくれ。家で母が待っているんだ」


「お前の帰る所は男子寮だぞ。そんな所に母がいてたまるものか」


「…どうしてもなのか」


「あぁ。貴様はそこで倒れているといい。もうじき愛羅様が来る。かける言葉は分かるだろうな」


「「ごめん」だろ?」


「「ありがとう」だ。バカ。」


「じゃあ、そう言っておくよ」


「ふん。せいぜい泣かせない事だな」


すると、部屋に愛羅が入ってきた。


「柚葉君!起きて大丈夫?」


「あぁ。大丈夫だ」


「よ、よかった。急に倒れたから…」


「…すまんな。心配しただろ?」


「うん。沢山。だから、ああいう事やめてね」


「…」


俺が黙っていると、心花が俺の事を睨んでくる。

そうだった。


「あと、ありがとう。俺の事を看病してくれて」


「…そんなの、当然の事。私の友達なんだから」


「友達、か…」


「うん。友達。いや?」


「…いいや。そんな事は無いさ」


「そ、そう…。えへへ…」


「…」


おい、心花。俺の事を睨むな。怖い。


「ねぇ、約束しよう」


「何を?」


「もうこんな事が無い事」


「…約束しかねる」


「む、ダメ。約束しよう。そして守ろう」


「…分かったよ」


「指切りげんまん…」


「嘘ついたら」


「キスしちゃうよ」


「…」


「ふふ、風邪をうつすとちょっとは良くなるっていう。でも、わざと倒れちゃダメだよ」


「…柚葉、最期の言葉だけでも聞いてやる」


「違うんです。心花さん。てか僕病人っすよ」


「弁明の言葉を聞いていないのだがな…。そんなに殺されたいのか」


「むぅ…。心花ちゃん、そんな事言っちゃったら、私嫌いになっちゃう」


「すみませんでした」


「…」


手のひらクルックルやな。

「ちなみに、柚葉君にはここで1夜過ごしてもらう」


「「えっ?」」


「仕方ない。動けないのだから」


「よし。動けるようになったわ。じゃ、帰るな」


「そうだな。帰りに倒れるなよ」


「そんな事しねぇよ…」


「どうして2人は帰るようにしているの…」


「お前がおかしな事を言うからだな」


「愛羅様がおかしな事を言い始めるものなので…」


「それは残念…。でも帰るなら、私のブラを置いていって」


「…。よし、お前は泊まっていけ」


「おい、お前なんて事してるんだ」


「柚葉君にはお金を…」


「うわ、急に寒くなってきたなぁ…」


「なら暖まれ。よし、私は帰るとしよう」


「…せめてさすがにブラは返そうぜ」


そうして心花はブラを愛羅に返した。


「…ちなみに聞くけど、他にも持っていてりとか、」


「そんな事…」


「心花ちゃんの部屋には最低でも2桁くらいの私の私物や盗撮などの物がある」


「…」


「…スミマセンデシタ」


謝っても許されねぇよ。


そうして心花は、戦利品ブラジャーを家に持ち帰り、

俺は愛羅の家で泊まった。


愛羅が、一緒のベットに寝ようとした時はびっくりした。


翌日、俺は金を貰って家に帰った。


そして、風邪が治った日…。


「ねぇ、柚葉君。私、柚葉君がお見舞いに来てくれたからお弁当を渡した。つまり、柚葉君も何かするべき」


「えぇ…」


「ん、その顔は何をすればいいか分からない顔」


「いや、何かするかしないかを迷ってるだけだよ」


「そんな柚葉君にアドバイス」


「話聞いてる?」


「ん…」


そうして短い息を吐きながら愛羅は唇に自分の指を当てた。


俺は溜息を吐きながら、愛羅がまたくれた弁当を愛羅の口へと運んだ。


すると、愛羅は口を開け、俺が差し出した唐揚げを食べた。


「ふむ…。これも悪くない」


「さいで」


「…さっきから私は何を見せられているんだ…?」


そして隣で手作り弁当を食べている心花が。


「ほら、心花ちゃん。あーん」


「な、何!?あ、あーん…」


「どう?美味しい?」


「そ、そうだな…。とても」


「なら良かった」


「っ〜!」


「で、柚葉君はなんでそんな遠くにいるの?」


「いや、百合の間に入る男にはなりたくないからな」


「百合…?」


「おい、貴様。変なのを教えるな」


「すまん。つい」


やっぱり…百合って最高だよね。


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