第3話
数日後…。
「えー、川瀬さんは今日風邪で休みだそうです」
朝の会中。
そんな事を先生は言った。
「だから、柚葉。お前が書類を届けてやれ」
…は?
「何でですか?」
「…お前はどうやら川瀬さんと裸を見る以上の事をしている仲だと聞いているのだが…」
「違います。誤解ですね。あれは愛羅の嘘ですよ嘘」
「…いいから。お前がやれ。評定落とすぞ」
「それが教師が言うセリフですか?」
「分かったな」
「…はいはい」
まぁ、仕方がない。
これ以上駄々を捏ねても、会話は進まないだろう。
諦めるしかない。
そして、放課後。
先生に言われ、職員室に来たのだが…。
「あぁ、すまないが校長室に行ってくれないか?」
「えっ?」
「どうやら校長先生がお前に話したい事があるらしい」
「えっ?」
「いいから行け。じゃないと次は…」
「…先生。今までお世話になりました」
「止めろ!逃げようとするな!」
と無理やり校長室に連れてこられたのだが。
「よく来たな。君が、愛羅の言う柚葉君か…。中々優しそうな子で安心したよ」
「はぁ…」
校長は俺の肩の手を置いて言った。
「娘を預けるには、そこら辺はちゃんとしているだろうな?」
痛い痛い。
パワハラで訴えるぞ。
「いえ、僕なんかでは力不足ですよ」
「ふむ、そうか。だがな、やはり君がいい。雨の日の事を聞き、先生対しても正義を貫き、自ら私の元へ来たのだ。誇ってもいい事なのに、誇ろうとしないその心。素晴らしい」
「雨の日は偶然傘を落としただけです。先生に対してはクソみたいなやつにはクソみたいなやつをぶつけようと思いまして。ここへ来たのも、先生に物理的に背中を押されて来たんですけど」
「ふむ…。君は嘘が苦手なんだな。目が泳いでいるぞ」
「人と目を合わせるのが苦手なんです」
「…。まぁ、これを届けてくれ」
「お断りします」
そういうと、校長は銀色のケースを目の前に出し、開けた。
するとそこには札の束が。
しかも、ケースいっぱいの。
「…はぁ。ちなみにどこに届ければいいんですか?」
「寮だ」
「は…?うちの学校の寮って…。女子寮に行けって事ですか」
「あぁ。許可は取っている」
「じゃあ…」
僕は帰りますと言って帰るつもりだったが、
スッ…
と出されたパソコンの中にあった俺の単位を見て受ける事にした。
女子寮にて。
「ダメです」
「えっ?」
「聞こえなかったんですか?ダメだと言っているのです」
「いやでも校長が許可は取っていると…」
「はぁ…。どこからかその情報が漏れて、今あなたのような人たちが押し寄せてきているんです」
「…見えないんだけど」
「そうでしょうね。私が一匹残らず駆除したので」
「ヒェッ…」
「あなたも私に殺…ゲフンゲフン!駆除されたくないのであれば今すぐ帰る事ですね」
「…いいよ。だが、最後に質問だ」
「どうした?」
「愛羅はどうしている?」
「私達で看病している。愛羅さんは女子にも好かれる人だからな」
「そうか…。なら、これを渡してやってくれ」
「それは…?」
「先生に頼まれた書類だ。あと飲み物やゼリーなんかも」
「…ありがとうございます。毒味をした後で愛羅さんに渡しますので」
「じゃあ俺はこれで」
そうして女子寮から離れる。
ゲーセンとかで暇つぶして、やりましたって校長に言っておくか。
「待て」
「…校長」
「どうした?随分帰りが早そうだが」
「…渡す物は渡したので」
「ほう?そうか。なら追加で娘と話して貰えないか?娘はああ見えて寂しがり屋なんだ」
「…」
どうしたものか。
女子寮には入れない。
なら、校長が帰った後にでもゲーセンに…。
「女子寮までついて行ってやろう」
あっ、終わった
またまた女子寮にて。
「「…」」
なんだこの無言の空気は…?
「まさか本当に校長先生に頼まれていたなんて…」
「こちらも、情報の機密性が無かった事、謝ろう。申し訳ない」
「いえ、大丈夫です。それよりもお言葉ですが、その人で大丈夫なんですか?」
「ふむ…。柚葉君がここへ来た時、君に不躾な視線を向けただろうか?」
「いいえ。他の男共とは違いました。私の視線を見てちゃんと話してくれました」
「では、柚葉君が無理に入ろうとしたか?」
「いいえ。確かに無理やり入ろうとしたり腕を掴んできたりしてきた害虫…ごほん!男共は私がこの手で抹殺…ゴホンッゴホン!排除したので」
こいつ隠すつもりあるか?
さっきから言い間違えが酷いぞ。
「…そういう事だ。柚葉君は他の者達とはどこか違う。根本的ななにかが」
「…ええ、その様ですね。なら、いいですよ。通してあげます。部屋はここに書かれているところにあります」
「なんで口頭じゃないんだ」
「あれ」
そう言って、顔を入口のところに向けた。
そこには張り付いている男子達が。
「…排除してもらえるか?」
「言われなくとも」
「じゃあ、俺は行くな」
「えぇ。よろしくね」
「コチラからもよろしく頼む。あの者達の対処は任せて欲しい」
「よろしくお願いします」
そうして、俺は愛羅の部屋へと向かうのだった。
愛羅の部屋の前まできたのは良いのだが…。
「これどうやって入ればいいんだ…?」
俺は愛羅の部屋の前で悶えていた。
愛羅は風邪だ。
あまり動かすような事はしたくない。
でも、入ろうにも鍵を持っていない。
悩んでいると、扉が開いた。
「っ!?男だと!捕まえろ!」
「なぁぁぁぁぁぁ!?」
そうして捕らえられ、中に入れられた。
「む゙ー!」
そうして手足と口をガムテでぐるぐる巻きにされてしまった。
「さぁ、遺言を言え」
そして俺は今、金属バットを向けられていた
「む゙ー!」
「そうか。口を封じてられているのか。良いだろう。ここまで来てやった褒美に喋れるようにしてやろう」
口に貼られているガムテを取って貰えた。
くそ痛い
「ぷは!愛羅!俺だ!柚葉だ!」
「…ふん。愛羅様の名前を呼ぶなど、万死に値する。死を持って償え!」
「クッ…!」
悪い…。俺、死んだわ
「ダメえ!」
「!?」
俺の目の前で止まった金属バットの光景は、背中の冷や汗を製造させた。
「ゲホッ!そ、その人ゲホッ!ケホッ!は、殺しちゃカハッ!ダメェ!」
「分かりましたから、ベットにお戻りください!」
「うぅ…。運んでって」
「はい!喜んで!」
するとその人はめっちゃ笑顔で愛羅を運んで行った。
少し後…。
「すまない…」
「いや、怪しい動きしてた俺も悪かった」
「何故あんな怪しすぎる事をしていたんだ?」
俺立ち止まってただけなのになぁ…。責任を俺に押し付けるのか。
「いや、愛羅に開けて貰うしか、中に入れないんだけど、愛羅を動かしても大丈夫かと思ってな。実際、あんな状態だったからお前がいて良かったよ」
「ふむ…。お前が校長に認められたのも分かる気がする」
「まぁ、一応友達出しな」
「ちなみに私は親友だ。つまり私の方が上だな」
俺は理解した。
あぁ、こいつ馬鹿だな。
さっきの発言や行動といい、おかしなやつだ。
そう思っていると
「ふむ。もしやお前心の中で私をバカにしているな」
と言われてしまった
「まぁ」
「否定をしろ。お前はまっすぐなやつだな。もしかしたら、私よりバカかもしれん」
「えぇ…?」
すると、突然金属バットを持ち出した!
「すみません。嘘です。僕より頭めっちゃいいっす。いやー。尊敬しますね」
「お前ってやつはな…。まさかとは思うが、金につられてここまで来た訳じゃないだろうな」
「…」
「はっきりと分かった。お前、私よりバカだな」
「仕方が無いこと。金欠なんだ」
「…何に使っているのかは知らんが計画的に使えよ」
「多分来月には全部無くなってる」
「…はぁ。私は帰るぞ」
「あぁ。またな」
「あぁ。あっ!そうだ」
ドアへ向かう彼女はこちらを振り返っていった。
「私の名前は木谷原 心花。自称愛羅様の親友だ」
「自称かよ!」
「ふふっ。さらばだ!」
「行っちまった…」
ホントになんだったんだ?
「おい、大丈夫か?」
「うーん…。柚葉君の浮気者…」
「確かにアイツは女だけど、そういう感じじゃない。あと、俺達別に付き合ってないだろ」
「大丈夫…。ここで押し倒せば…」
「押し倒す位体力あるなら、まずは風邪を治せ」
「ん〜」
「ほら、ゼリーとか食べるか?」
「食べさせて〜」
「はぁ…。今日だけだぞ」
「えっ?柚葉君が優しい。明日は風邪かも」
「おい。あまり言うと食べさせないぞ」
「あーん」
「早い。準備が早い」
「2回も言わなくても…」
「大事なことだからな」
「そんなに…?」
「あぁ。ほい。あーん」
「あむっ。う、美味い…!味分からないけど!」
「…早く治せよ」
「優しい…。もしかしてお父さんからお金を積まれた?」
「…(メソラシ)」
「…後で追加でお金入れておくね」
「よし。ほらあーん」
「あーん。うむっ。美味しい〜」
そうして俺は愛羅の看病をした。
後日、家には金が積まれたキャリーエースが置き配されていた。
…。盗まれてたらどうするんだ…。
もちろん数えたけど異常はなかった。
────────────────────
あとがき
どうも。なゆおです。
今回のあとがきでは、話の公開速度を書きたいと思っております。
この作品は現時点で8話までスタックがあります。
そして、最新話の5話前の話をどんどん公開しようと思います。
最新話が最終話になった時はその時考えます。
執筆速度が遅いため、公開が不定期になりますが、ご了承ください。
これからも見てくださったら嬉しいです。
以上、受験生のなゆお君でした。
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