第2話

翌日。

日常へと戻った俺は、本を読もうとすると何処からとも無く、舌打ちが聞こえた。


集中してたのに…。途切れさせやがって…。


そう思いながらまた本を読み進めた。

だが、殺意の籠る視線が何故か刺さっていて集中しようにも、出来なかった。


本に手に持っていた栞を挟み、顔を上げた。


そこには「やっと気がついたの?」と言いたげな顔をした愛羅が目の前に俺に体を向けていた。しかも、顔が触れ合いそうな程近い。


それこそ、本一冊分くらいな距離がある。


それを顔1つ分まで離して話しかけた。


「どうしたんだ?」


「…おはよう」


「あぁ、おはよう」


「じゃ、」


「えっ?それだけ?」


「うん。私は柚葉君に挨拶したいが為にここに来た」


「あのな…。俺思うんだ。八幡先輩みたいなのがいるのはしょうがないけど、お前もお前で接し方が悪いよ」


「私はこういう事は柚葉君にしか言わない」


「おい止めろ。その発言は爆弾になる」


「大丈夫。私は柚葉君に告白されても優しく受け止める」


「本当に止めてくれ。てか、俺が本当に告白したらどうすんだよ」


「優しくフる」


「俺不合格じゃねぇか」


キンコーンカンコーン…。


「あっ、チャイムが鳴った。じゃあ今度の休み時間の時にまた来る」


「遠慮しときます」


「じゃあね」


「おい、話聞いてたか?本当に来ないでくれよ?俺が死ぬんだから」


「うん」



本当に分かっているのだろうか…。



そして、授業が終わった。



「本当に来ないのか…」


アイツが!?いやぁ、成長したねぇ…!


と言いたい所だが次の授業はプールだった。


クソっ!他の学校はやってねぇのに…!

なんでこの学校はプールやるんだよ!


と、心の中で愚痴りながらプールに向かった。


そしたら、持ち物検査をしていた。



「おいお前、スマホは朝に没収したよな?」


「…はい」


「これも没収な」


「そんなぁ…」


「あとここにスマホを持ってきていた事を女子に言うな」


「そんなぁ!」


「次」


「はい!」


「…おい、これはなんだ、これは?」


「カメラであります!」


「しかもちゃんとしてるやつじゃねえか…。没収!」


「クッソォォオオ!」



…なにやってんだアイツら。


勿論俺はそんな物を持ってきていなかった。



…だが、事件は起きた。


「先生!カメラが!」


「なに!?」


「なんだ?」


体操をしていたが、止めて女子更衣室の方を見る。


それは、小さなカメラだった。


「こんなに小さいカメラ…。犯人は用意周到の様だな。おい男子ぃ!今すぐ体操を止めてこっち来い!」


「いやなんでだよ」


俺達は持ち物検査をした上、そんな物を付けれる度胸や時間が無い。


それにこのクラスとも決まっていない。

他のクラス…。

それも、他の学年までもが容疑者である。


そんなはずなのに俺達が疑われるのは不服に過ぎない。


「お前ら…。こんな事をするなんて」


だが目の前のクソ教師はどうやら俺達を疑っているらしい。


「誰がこんな事をやったんだ!!!!」


大きな声に皆、体を震わせた。

そうだった。この先生は学校で1番恐れられている生活指導の先生だった。


「俺は悲しいぞ…。お前らがこんな事をやるなんて…」


いや、なんで複数形なんだよ。


そう思っていると、


「柚葉がやったんじゃないか?」


とある男子が言った。

違うわ。


もしかしてだけど、俺の事をよく思わないやつか?


「確かに。愛羅の事をいやらしい目で見てたもんな?」


おいお前もか


「どうなんだ?柚葉」


先生も俺を疑うのかよ。

証拠も無しに…。


でもここで認めれば、愛羅に絡まれなくなるのでは…?


ハイリスクハイリターンだが、やるか。


「は…」

「違う」


「えっ?」


「柚葉君はそんな事をしない」


愛羅…?なんでだ?


「それに…」


愛羅はこちらに近づくと腕を絡めてきて、こう言った。



「「「!?」」」


「そ、そうなのか…」


「いやいやいや…!」


「柚葉君は黙ってて。捕まりたいの?」


「こんな事になるぐらいならその方がいいわ」


「取り敢えず、柚葉君は私が守る」


「えぇ…」


「それよりもそこ。それを言う君が設置したんじゃないの?」


「はあ!?」


「現に私の胸をチラチラと見ている」


「そ、それは腕を絡めてるから、大胆なことすんだなって…」


「あ、見てる事は否定しないんだ」


「見てない!」


「分かった」



コイツ絶対に分かってないな。


「で、結局どうなのさ」

と、他の女子が言う


「俺はやってない!」


「本当に?」


「本当だ!」


埒が明かないな…。


「そういうば、先生はやってないの?」


唐突に出た1つの言葉。

確かに、先生は男性で未婚者である。

だが、たからと言ってそんな事をするような人では無い。


だが、見てわかるくらいに驚いた。


「えっ!?お、俺がそんな事する訳無いだろ!」


明らかに。


あの小型カメラは遠隔で見たり録画したりするような物だ。


見れる範囲以内にスマホを持っていると思われるのは先生だけだ。


持ち物検査をしたのが墓穴を掘ったな。


誰も指摘しようとしないので仕方なく俺が言う事にした。


「先生。その右ポケットに何が入ってるんですか?」


「ス、スマホしかないぞ!」


「では、そのスマホの中。見せてくれますか? 」


「な、何でだ!?」


「はぁ…」


長くなりそうだ。


「おい、男子共。日々の恨みをぶつける機会だ。コイツを捕らえろ」


「了解!」


「ああ!」


「日々の恨み…!晴らしてやる!」


「おい、お前ら!や、止めろぉぉ!」



スマホにロックはかけてない。


見ると、女子が持っているカメラのリアルタイムの映像が流れていた。


その先には男子に踏んだり蹴ったりされてる先生がいた。


「…一応聞いときますが、先生。何か弁論は?」


「お前がやったんだ!グヘっ!」


「だそうだ…。どうする?愛羅」


「私のお父さんに言う」


「お父さん?」


「知らなかった?私のお父さんはここの学校の校長」


「は…?」



それからというもの、先生の罪は校長へ伝わり、クビ…。


かと思われたのだが…。


「これからは心を入れ替える!」


「!?…」


何故かいるのだ。


裏でなにかが起こっている。

そう感じた。

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