雨の日に傘を落としただけなのに…。

なゆお

第1話

ザーー!

いきなり降った雨は止まないかと思うぐらいに強くなっていた。


「はぁ…」


そうしてため息を付くのは俺…

の隣の美少女だった。


名は分からない。

生まれた時から女というものに興味はないからだ。


嘘ですめっちゃあります。

なんならエッチしたいです。


でもまぁ、それでも陰キャな俺にはクラスメイトの名前を覚える事なんて難しいだけだ。


「はぁ…」


隣の美少女はまたため息をついた。

きっと俺と同じ屋根の下で雨宿りするのが嫌なんだろうな。


クソ…やっぱり折り畳み傘ぐらいでも持って来た方が良かったか!?


いや、まて!

確か、朝…。


「今日雨降るらしいから折り畳み傘持ちな〜」


「そうなのか、一応持っておこう」


という会話をした(気がする)!

よし!そうなれば傘を彼女に差し出し、


『君の家まで送るよ(キラッ)』


とカッコつけよう!


よし、まずは彼女の気を引く為に…


「そ、そういえば折り畳み傘を持ってきていたような気がするなー。今思い出したわ〜(棒)」


とわざとらしく言う。

そして折り畳み傘を…。

ん?あれ?

あれれ?


「ない、ない!折り畳み傘が!俺の命が!」


「…」


あぁ、終わった。

俺は黒い雲に向かって見上げた。


唾を吐けたら吐きたかった。


でもタダでさえ彼女の好感度が低いんだ!

これ以上下げる訳には…。


よし、走ろう。


家までダッシュしよう!


「おらぁぁぁぁぁぁ!」


「…!?」


彼女もびっくりしちゃった。

でも叫ばずにはいられない。


「神様の…クソ野郎おおぉぉぉぉぉぉぉ!」



翌日。


俺は風邪を引き、昨日の美少女が家に来て、傘のお礼と言って看病してくれる。


そんなシチュエーションとは反対に、

俺は元気で、相変わらず教室の隅っこで日向ぼっこし、1人昨日神様に言ったクソ野郎発言を後悔していた。


クッソ!

なんで10連10回連続最低保証なんだよ!


うわーん!ガチャの排出率が悪すぎますー!


そんな事を思っているとHRが始まろうとしていた。


「えー、起立、礼」


「ふぁ〜…」


眠いな。

…。寝よう。

きっと、

起きたら美少女が目の前にいてくれるはず…。


「…きて…おき…起きて…起きて」


「ん…むぅ、」


「やっと、起きた」


「えっ?」


そこには昨日の美少女が。

それに俺はびっくり仰天!


「カヒュッ…」


「えっ…」


「あぁ、ごめん。息が…」


「大丈夫?」


「大丈夫だよ。うん。本当に」


「…。良かった」


「カヒュッ…」


「えっ?」


カヒュッ…(尊死)

をしてしまった。


いかんいかん、これでは変な人みたいになっちゃう!


「ありがとう。起こしてくれて」


よし!まずはドロー!

会話のカードデッキから何を選ぼう…。


「それより…はい」


おっと、これはラリーを続けなければ!

ん?これ、俺の折り畳み傘じゃん


「昨日はありがとう…。でも、あんな芝居みたいなのしなくて良かったのに…」


その時、俺の中に入る未知の出来事!


あぁ、そうか。きっと折り畳み傘を探す時に落としてそれを使ったみたいだな。


きっと、あれはわざとだと思われているんだろうな。


「えっと、あれは…」


待て。これってこの美少女とお近づきになれる流れでは…!?


「…バレちゃったかな?」


「芝居ならもうちょとちゃんとした方がいい」


「…あはは、うん。そうだね」


芝居じゃ無いんですけどね〜!


「何かお礼を…」


「是非!」


「…」


「あっ、」


やべぇ、欲望に忠実過ぎた!


「…と言いたい所だけど、遠慮しておくよ。本当に落としちゃたみたいだからね」


「…そう。分かった」


「えっ?」


そうして美少女は黒板に向き合った。


…欲望に忠実になった方が良かったかもしれない。


俺はため息を付きながら寝始めた。




「おい、お前」


「えっ?誰?」


授業が終わり、次の準備をしていた時、誰かが話しかけてきた。


「俺の事は別にいい…。それより授業中、と話してただろ?」


「あれって…。あの美少女の事か?」


「シッ!誰かに聞かれたらヤバい!」


「何でだ?」


はこの学校で1番強いとされる八幡先輩と付き合ってるらしい」


「カヒュッ…」


「だから話すのは…」


「お、俺はぜ、全然、怖くないし?」


「…!マジかよ!」


「あぁ、大マジだ!ドンと来い!」




1時間後…。


「もうアイツには近づくなよ」


「わ、わかりました」


誰だよ。コイツの事怖くないって言ったやつ。


俺か。

俺だったわ。


「イテテ…」


正直言ってこういう風に校舎裏に呼ばれて締められるとは思わなかったな…。


「はぁ、保健室行くか」


「…手伝おうか?」


「出来ればそうしてくれ…。って、」


「愛羅」


「えっ?」


「川瀬 愛羅。私の名前。あの人は八幡 浩一郎。自称私の彼氏」


そう言いながら肩を貸してくれる。


「そりゃ、迷惑な奴だな」


「そう。でも、いつまでもああやって言ってるのを見過ごしている私のせいでもある」


「いやいや…。そんな事は無いだろ」


「…君も同じような事を言うんだね」


「君も?」


「前助けた人も同じような事を言っていた」


「ちなみにこんな感じの事は今までにどれくらい…」


「もう数えるのは止めた」


「…すまん、やっぱお前のせいだわ」


「ん、そんな事を言われたのは初めて」


「そうだろうな」



保健室にて


「今言うのもあれだと思うけど、私が肩を貸していたのを八幡君に見られてしまった」


「ごめん。俺明日死んでると思う」


「大丈夫。安心して。私が八幡君に言っておこう」


「今度はお前が襲われるぞ」


「ぁ、確かにそうかも」


「ちゃんと考えろよ…」


「それでも、私がちゃんと注意しないと…」


「…」


コイツはガチだ。

覚悟を決めてる。

だってこんな手が震えているんだ。

確かに怖いよな。


…。仕方ない。


「俺もついて行ってやる」


「えっ?戦力不足。レベルアップしてから来て」


「酷くね?」


「仕方ない。八幡君は君の5倍は強い」


「…」


「ということで今言ってくる」


「早!」


「即決即断は大切」


「いくら何でも早すぎるんだよ」


「じゃ、病人は安静にしていて。きっと、身体中傷だらけの私が帰って来る」


「…安心出来ねぇな」



俺は愛羅について行った。


校舎裏。

それも、俺が殴られた場所で八幡とやらと話している。


「八幡君。噂は聞いている。勝手に私の彼氏を名乗らないで貰いたい」


「…そんな、だって好きだって言ってくれたじゃないか!」


「あの、好きは先輩として。私はLoveの方で言った訳ではない。それにあれはお世辞というもの。その違いを分かるようになった方がいい」


おっと、愛羅が八幡にジャブを3発入れた!

八幡は苦しそうだ!


「…なら、無理やりにでも…!」


八幡が愛羅に手を伸ばそうとする。


「おっと、その汚い手を退けてもらおうか」


「…お前はさっきのポンコツ!退け!またあんなになりたいのか」


「…いや、今度はお前の番だ」


「…っ!いいんだな!」


俺は八幡に1歩近づき全身全霊の力を入れ、


玉を蹴り上げた。



「ぐぁ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!」


「うわぁ、痛そうだね…」


「お前女だろ。分かんないだろ」


「生理よりマシだとは思ってる」


「俺は軽め生理よりキツいと思ってる」


「君は生理の痛さを知るべき」


「そうだな。それよりも…」


「くっ、お前やりやがったなぁ!ぶぁ!」


俺はまたしても八幡に一発入れた


「止め、ぐ、なぁ、ちょ、いっぅ!」


なんなら10回ぐらい踏む。


「お前もやらないか?」


「私はいい。汚そう」


「もうちょっとオブラートに包めよ」


「うぅ、」


「ま、こんぐらいにするか。ちなみにお前が殴ってる写真沢山あるから、これ流すけど良いよね?勿論、この高校外にも流すけど」


「…(パタッ)」


あっ、気絶しちゃった。


まぁ、いいや。


「…。ありがとう」


「どういたしまして」


「…ふふっ。そういえば君の名前は?」


「森野 柚葉」


「柚葉君…。覚えておく」


「別にいいのに」



こうして、愛羅と俺の不思議な出会いは終わった。

普通の日々、変わらない日常へと変わるかと思っていた。


でも、そんな事は無かった。

むしろ、ここからがこの物語の始まりかもしれない。




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