第65話 人の良さと無尽蔵の体力に、最強格の魔獣もメロメロ
明けて翌日。俺はメラニペ、ネコミと一緒に領内の湖へと向かった。水妖さんに会うためだ。
「わああああああ、王様だああああああ! こんにちはああああああ!!」
湖についた俺たちを出迎えたのは、周囲の大気を震わせるほど大きな、それでいてとても可愛らしい声。
巨大な湖に身を浸しているのは、身長10mを優に超える人魚。
陽の光を浴びて輝く橙色の長髪が美しい、水も滴る巨女である。
瞳には星にも似た
「でっっっっっ」
息を呑むネコミ。その気持はとてもよく理解出来た。
魔獣なので当然服など着ない。
そんな人魚、それも10mの巨女が目の前にいれば、どうなるか。
「うわああああああん!! 王様が私を見てくれないいいいいい!! 嫌われたああああああ!!」
「嫌ってない! 安心しろ! ただ男はいろいろ複雑なんだ!!」
そう、目を開けようものなら見えてしまうのである。巨女サイズのアレやソレが、まるっと全部。
「安心シテイイゾ! ユミリシスハ興奮シテイルダケダ! オ前ハ魅力的ダゾ!」
「ええええええ、やったああああああ! じゃあ一緒に遊ぼおおおおおお!!」
「勘弁してくれ……」
初夜を経て以来、そういった刺激に対する耐性がストップ安だ。
明鏡止水の境地で居続けるのも大変なのである。
「なるほどー。女体の素晴らしさを知ったが故に、という事でござるか。御館様も大変でござるな」
うんうん、と頷くネコミだが……お前と話す時も大変なんだぞ、全く。
「っていうか、メラニペは良いのか。俺が水妖さんにそんな目を向けて」
「ン? 強イ奴ガ多クノ妻ヲ持ツノハ当然ダゾ! タダシ、ユミリシスノ妻ハ強ク、美シク、気高クナケレバ駄目ダ!」
「そ、そうか……」
水妖さんは強く美しく気高い、という判定なのだろう。
そうやって全面的に肯定されてしまうと、欲望に流されそうになるのでやめてほしい。
そういう事は、やはり結婚する相手としたい。それに、今はもっと三人との時間を大切にしたかった。
「コホンッ。あー、とりあえずだ。水妖さん、一つ作戦に協力してほしい」
「作戦だああああああ! 何をすれば良いのおおおおおお!?」
作戦に関して話すと、返ってきたのは「ううんんんんんん!!」と考え込むような反応だった。
「何か問題があるなら言ってくれ」
「王様のお願いを聞くんだからああああああ、王様にも私のお願い聞いてほしいいいいいいい!!」
「もちろんだ、望みを聞かせてくれ」
えへへ、と笑顔を浮かべて、両手を差し出す水妖さん。
「私と遊ぼおおおおおお!! もっと私を見てええええええ!!」
ただ遊ぶだけでメンショウの軍勢を足止め出来る。破格の条件だが、問題は遊びの内容である。
理性を削るような遊びなら、俺も覚悟を決めなければいけない。
「あ、遊ぶって、何をして遊びたいんだ?」
「一緒に泳ぐのおおおおおお! それと鬼ごっこおおおおおおお! 逃げる王様を捕まえたああああああい!」
「な、なんだ。そのくらいなら良いぞ」
健全な遊びでホッとする。それなら問題ないだろう。
――と、思ったが、甘かった。
事あるごとに“私を見て”と言ってくるので、アレやソレを直視させられたのである。
水妖さんが無邪気だからこそクるものがあったし、胸に挟まれたときは色んな意味で大変だった。
「御館様の貞操観念は凄いでござるな。どこまで耐えるか試したいでござる」
「やめろよ? 絶対にやるなよ?」
「お、フリでござるか!? フリでござるな!!」
「本当に違うからな!?」
そんな一幕もありつつ、無事に水妖さんの協力を取り付ける事が出来た。
ちなみに、無尽蔵の体力と付き合いの良さに感動した水妖さんは、以降俺の言う事を無条件に聞いてくれるようになった。
さらにちなみに、水妖さんと遊ぶ俺を見て羨ましくなったのか、メラニペに誘われて……森の中で思いっきり寂しさを吹き飛ばしてあげたのは、ここだけの話だ。
「エヘヘ……ユミリシスデ、イッパイダ」
……そのセリフで延長戦にもつれ込み、メラニペも動けなくなったのもここだけの話である。
――その後、ネコミと水妖さんの活躍により、無事にメンショウ軍を足止めする事に成功した。
そして、その影響は意外な所に現れるのだった。
「お前とこうして話すのも
メンショウ帝国の軍師衆を束ねる筆頭軍師、セイ・ヒョウカからの連絡である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます