第32話 守護天使(1)

何故だ? 何故、俺が莫大な借金を背負わなければならない? 使い切れない財産の主となったのでは無かったか? 収入印紙だと?? まだ、実益は得ていないのに? 実益は得ては居なくても、その権利が確実であるなら、支払い権利は、所得者に課せられる・・・そして、収入印紙代の取得者は、神ヤー!


 アーリは、再びの絶望に落とされる。その絶望は、死に逼迫する。


 そうだ、ヤーは、拾得した利益については、がめついのだ。組織立って、事細かく拾得に走る。そうだ、これは策謀だ。ヤーを使った犯罪だ! こんなことが出来るのは、この女、毒沼のガー! この女神の謀略により仕組まれた支払いの義務。こんなもの納得が出来ない!


 アーリは、そこまで考えてプッツンしてしまった。


 キャンセルだ! ノーカウントだ! こんなものに誰が従うかよ!!


 アーリは、愛撫の延長で絡みつくガーの取り巻き女たちを跳ね飛ばして、ガーに詰め寄る。


 ガーも敵対したアーリに対し、凶悪な敵意ある視線で返す。アーリは、負けじと口撃で返す。


 あんた、やってくれたな。こちらを油断させて、あんたの毒で俺をメロメロに籠絡し、弱った判断力の俺に誤った契約をさせるとはね。どんだけ、汚い奴なんだよ。悪魔の俺もビックリさ!


 怒りに任せて、まくし立てたので、アーリはつい自分が悪魔だと告白してしまう。間を置かず、取り巻き女性の一人が悪魔の詳細をガーに告げる。


 ガーは、落ち着いた様子でアーリに向き直ると言った。


 あら、天使様だと思っていたら、堕天使様でしたか。いえ、今はただ悪魔と見下げれば、良いのかしら? 私よりも汚いことがお好きな悪魔野郎に汚いなどと言われることは、お褒め頂いたと思って良いのかしら。


 ガーは、皮肉を交えて、アーリに精神攻撃を与える。


 先程まで、艶めかしいやり取りをして居た者達には相応しくない、殺気に満ち溢れた空気が流れる。


 アーリには、ガーの余裕に満ちた態度が、鼻持ち成らない。


 その余裕面も、ここまでだ! 止めだ、止めだ! 止めろ!!


 そう言って、熱心に宝物を並べ直す取り巻き女性や並べられた宝物を弾き飛ばした。


 ガシャガシャ、ガシャン!!


 宝物が金属音を立てて、配置を見出した。


 弾き飛ばされた取り巻き女性をガーは、なんとか受け止める。しかし、この一連のパワーを見ても、ガーとその一行の劣勢は必至だった。


 残念だったなあ。契約は破棄。しかし、宝物は全て頂いていく。レアアイテムもあるだろうから、使い勝手などは、追い追いで構わんさ。力で接収。そういう手法が、広い宇宙には有るのだよ。良い勉強になっただろう。これは授業料だよ。


 アーリは、高らかに笑い、勝利の笑みを浮かべてた。


 そんな風に、高飛車に振る舞うアーリは、突如、蹴り飛ばされる。激しい勢いで、宝物の中に飛ばされたアーリは、なにが起こったか理解が出来ずに、混乱の中で宝物の山の中から、キョトン顔で這い出ることになった。


 宝物の中から這い出たアーリが目にしたものは、アーリに取っての絶望だった。

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