第30話 頂点義定譲渡契約書(2)
決断を迫るガーにアーリは気圧されながらも、考えをまとめる時間を欲した。
も、目録の詳細の確認に、少し時間を頂きたい。これだけの量の宝物、1つや2つの記載漏れでも気づきはしないでしょう。意図的にしても、不如意的にしても。
アーリは、自身の意味不明の揺らぎを、誤魔化すのに、それだけを言うのが精一杯だった。
この目録の正確さは、私の愛の正確さ。私の愛の在り方そのものです。貴方は、私のユリに対する丁寧で密やかな愛を疑うのですか!??
ガーは、自分の抜け目など無い仕事にケチを付けられたような気分になり、不満をアーリにぶつけた。
いえいえ、仮にも義定契約書なのですから、書名には慎重を期そうと言うこと。双方の合意があってこその書面効力の発揮ではありませんか? 貴方様の自負は、貴方様だけのもの。しかし、それは、対面者である、あっしが自らの目で確認してこその正しさでは、ありませんか? 貴方様の仕事の出来に対する疑念などでは、ございやせん。
そう、それは、そう。確認は、貴方にもあるべきものよね。双方の確認があってこその合意に意味がある。しかし、余り長くは待てませんことよ。私の配下に一目で分かるように並べさせます。日が7回昇るまでに確認を終えて下さい。確認の時間であり、貴方に考える時間まで、私に譲歩する理由は無いのですから。
ようざんす。では、早速、始めましょうか。
意図した通りにことを運んだアーリは、しめたとばかりに、心の意気を取り戻す。心のバランスを失ったままでは、誤った判断を下しがちだ。
ガーの意図を悟(さと)った取り巻きの美女たちは、宝物庫の宝物を種類別に並べ始めた。手際が良い。女神の直属だから、能力も高いのかしらん? リトルゴッドのことは、良く知らないけど、これから分かるだろうな、とアーリは、忙しく働く取り巻きたたちを様々な角度で視姦しながら、時間を潰した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます