第29話 頂点義定譲渡契約書(1)
ふむう、気弱そうな少年だったが、貴方には、余程、好かれているようですね。他人の好みは、さまざまなのだし、好きにすると良い。
そう言うとアーリは、宝物に向き直り宝物の海にダイブした。
うひょひょ〜い♪
アーリは、自分のもの気取りで、ダイブをやり直したのだ。
お待ちになって。お楽しみのところ、申し訳ないけど、それは契約が修了してからにしていただけます? 貴方は天使様とのこと。天使のことは分からなかったので、下の者に急ぎ天使のことを調べさせましたの。
下の者が言うには、貴方はとても強いとか。我々、リトルゴッドでは、刃が立つ者が居ないほどに、お強いと。そして、何より暴虐だ。一旦、暴力となれば、容赦しない。力は容赦なく振る舞われ、元の形を残さないのだと。しかし、そんな貴方がたでも契約と言うものには、従うらしいと聞きました。貴方を止めるには、この契約に頼らざるを得ない。
ガーは、どこからか大きめの紙に書かれた書面を持ち出し、アーリに手渡した。
頂点義定譲渡契約書
・毒沼ガーの持つ蜜蜂小山にある宝物庫の所有権は、天使アーリに譲渡される。
・ただし、権利の移行は、天使アーリが、少年ユリを権体ガーに会わせた時点で、完了するものとする。
以下、宝物の目録が長々と羅列されている。
ほ、頂点義定契約書だと!?
アーリは、邪悪に染まる黒い目を白黒させて、驚いた。瞳は点眼と成っている。義定とは、絶対神の認め定める義である決定と言うことを示していた。定まった正義を乱すことは、神は許さないのだ。その誇りを懸けて。
(頂点と言えば、頂点神であり、唯一神のヤー様のことであろう。そして、ヤー様の義定契約書となれば、ひとたび、誤りがあれば、こちらが処分されかねない。我々天使は、ヤーの偉力により、即煙のように消されるだろう。まさに身投げと言って良い危険な契約書。しかし、それも契約に、背いた場合はだ。この契約は、高い崖では有るが、飛ぶべき障害の幅は、側溝程度の狭い幅。超楽な条件だ。溝をぽんと抜けてやれば、それで莫大な宝物が我がものとなる。さて、どうしたものか。幸い期限は書かれてない。最もネックとなりそうな期限無しなら、ラーハム探索を先にすることも、考えられる。問題は居場所だが、それも既に当ては付いている。この、毒沼女神の言い分などから、問題の子供は、恐らく城の子供だろう。期限無し、居場所も明確。何を恐れることがある・・・。しかし・・・、何かが、俺を思い止まらせる。何だ? 何だというのだ?)
おや?義定契約書などと見たら、急に大人しく成られましたね。やはり、これは効果覿面(てきめん)だった、ご様子。で、どうされますの?
ドゥ、ノット? ウィル、ユー?
ガーは、アーリに迫った。
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