第25話 貴族蜂

 ひとしきり蜂たちをアーリが殺したところで、何故か蜂たちの攻撃が終わりを告げる。蜂たちは攻撃を止め、アーリの周りを周回し始めた。


 なんだ? なんだ? 仲間が殺され過ぎて、急に死ぬのが怖くなったか? ビビってるのか?w


 言葉を返すことも無い虫たちに、アーリは殊更(ことさら)な侮蔑を与える。


 しかし、蜂たちは、アーリが想像するような恐怖を感じだ訳ではなかった。虫が従うのはフェロモンだけだ。フェロモンの正しさだけを、蜂たちは信じる。フェロモンの導きが火に向かへと言うなら、虫たちは進んで火中に赴くだろう。それは、やられ過ぎる場合、一族の生存が危惧される。だから、通常被害の及ぶこと無い攻撃群の外周域に、何匹かの貴族蜂と呼ばれる特殊な攻撃停止フェロモンを持つ蜂を混じらせてあり、狂気的攻撃の連続による破滅を避けるシステムを採用しているのだった。種の存続と繁栄。彼らの忠誠は、それにのみ、忠実なのだった。


 そうしていると、毒沼の方で異変がある。泡がボコボコと上がり、人の頭がボコリと沼の水面に現れた。


 泥は集まり、次第に人型・・・、女性の形を形作って行く。美形の女性像だ。泥で服や装飾品も形作り、それは絢爛な色合いも付けた。


 毒沼から現れた人型は、騒ぎの主を見つけ、嘆息するのだった。

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