第23話 アーリ(3)

 昔は楽しかったなあ、ラー・ハーム。だが、腐れ縁も、これまでだ。俺が、殺してやるよ。さっぱりとな。お前が裏切るから行けないのだよ。師を殺したりするから。


 そんな風に記憶の中の親友に語りかけながら、森の深部の沼を目指す、アーリ。大目標は、ラーハムの発見だったが、さっき別れ際に、ユリに教わった、岩の近くのお宝も気になって居たのだった。アーリは、お宝の正体が気にかかり、寄り道をすることにした。聞いた大岩は、ぼうぼうと生い茂った樹木や草々に覆い隠され、判然としない。


 分からないなあ。


 アーリは壁の様な巨岩を想像して居る。


 いっそ、この辺りの草樹を魔法で焼き払うか? でも、予想外の延焼があれば、自身の身の安全、功績の価値低下など、予測不能のリスクも多くなるな。責任を負う立場となっても、不要なリスクは負いたくない。ここは自重。あの親切な子供のアドバイスにしたがって、灯台のような宝石の光を探すか。


 アーリは、入り口とは違って、樹木の背丈も草々の背丈も短くなった林の中を進んでいく。


 毒沼と思われる沼辺に辿り着く。沼辺に従って前に進む。すると、前方に一際明るいオレンジの輝きが見て取れた。


 あれか?


 アーリは、イソイソと輝きを目指し、前へと進んだ。


 すると、ブーン、ブーン、ブーンと一匹の蜂がアーリの前に立ち塞がった。警戒蜂という奴だろう。蜂の巣の周りには警戒蜂という巣に近づくなという警戒を任務とする蜂がいる。天使であったアーリには、そんな世間知は無かった。気にせず排除し、先に進む。


 森の秩序は、精妙だ。潰された警戒蜂の体液は、風に乗り、異変を各所に伝える。森には、様々な小動物が居り、せめぎ合いながらも、助け合い、共存している。森を訪ねる者は、体液を取られたり、痛みを与えられたり、リスクを払いながら、それも、また、共存の内に組み込まれて行く。


 しかし、この対価を払わない者は、森に取って完全なる敵と認識された。アーリは、警戒蜂の残した攻撃フェロモンを体に付けたまま、森を進んで行った。

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