第22話 アーリ(2)
アーリは、昔を思い出す。アーリの心は、昔へと帰って行く。ユリと居た時の装いのアーリは、今は居ない。思い出されるのは、最初から。それは、神ヤーの息から生まれた瞬間からだ。生まれて、すぐに神ヤーに異端者撲滅の戦いを命じられた。そして、上官とおぼしき天使の指示に従い、異端者を殺しに殺しまくった。武器や戦闘技術は、生まれたときから備わっていて、訓練などはしたことがなかった。体が自然と動いた。
戦いが終わり、皆が次の戦いの為に休息に耽る中、同じ動きを繰り返す奇妙な天使を見掛けた。他の天使は無視する中、アーリは、その天使が気になった。
その頃は、まだ二人とも数字が割り振られて居たときで、それは長くて不便だったので、おいとか、お前とかで呼んで居た。名番号で呼ばれる時は、専ら神ヤーの下知あるときだ。対面では使うことは無いものなのだ。
おい、何をやってるんだ?
後にラー・ハームと呼ばれることになる天使は、答えない。
何度も聞くが、その天使は答えない。
なんだ、単なるバカか、不良品か・・・と、アーリがその場を離れようとした時、その天使は呟いた。
こうじゃない! もっと速く、もっと効率的に!!
そう言って、同じ動きを繰り返す。
その顔は、真剣で、何かを見つめる目があった。
その目を確認した瞬間、アーリに戦慄が走った! こいつ、訓練?練習?してる!? 俺達天使は、神ヤーの息から生まれ、生まれた時から完成品。故に下賤な造物共と違い、成長などしない。完成品ゆえに成長の余地など無いのだ。行き着く先は、神の凌駕! こいつは、神ヤーの定めた成長限界を超越しようとして居る!!?
それは反逆罪に等しい行為。反逆罪は、即刻死罪の重罪だ。しかし、周りに居る天使は、無関心で居るか、変わり者の運動者くらいの認識なのか、咎めるものは一人も居ない。
神の定めたレールを外れる者など居ないと、こいつらは思っているのだ。神ヤー、その者も含めて・・・。
面白い奴だ。
このアーリと呼ばれることになる天使の戦慄は、圧倒的興味に置き換わる。アーリは、何も言わず、ラー・ハームの横に立つと、同じ様に基本となる攻撃行動を繰り返した。ラー・ハームは、アーリの様をちらりと見やると少し微笑んだのみで、 何も言わなかった。
二人は、神ヤーの招集が掛かるまで、熱心に行動を繰り返した。訓練の成果であるかは分からなかった。しかし、二人は、戦で戦功を立て続けた。
二人は、お互いを認め、釣るんで行動するようなった。
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