第18話 T字路上の悪魔(2)
わあぁあああ! ユリは、血走った目に、彫りの深い顔を近づけられて、思わず大きな声を出した。
大きな声を出さないで下さいな、ぼっちゃん、びっくりするじゃないてすかっ! 全くびっくりするよな、急に大きな声を出してさっ!
自身が驚いたことを責める様に、得体の知れない風体で黒尽くめの男は、ユリに武者振りついた。
ストーキング(こっそり歩き)に失敗したユリは、思わず謝ってしまった。
すいませんっ! でも、大きな声は貴方も出してますよ。お愛顧じゃないですか?
黒尽くめの男・・・いや、アーリは、考えるように、眼前にある架空の大きな時計板の数字列を、右回りになぞる様に、見やると、私が最初で、貴方が次か!
自分とユリを順番にゆっくりと指差して、納得したのか、そう言うと、大笑いした。
ほら!ほら! 笑って!笑って!! こんな時は笑うものだよ。笑って、笑って! 乗りが悪いよ!
アーリは、活発に笑った。
ユリは、着いて行けずに、引きつり笑いをした。
笑い声が突然止むと、彫りの深い顔が、突如、ユリの眼前にまた現れた。どんよりと思い詰めた顔だ。ユリは、出しそうになった声を、引き留める。
ぼっちゃん、あっしはね、犯罪者を追いかける特別捜査官なんですけどね、とある凶悪な犯人の足取りを辿って、ここまで来た訳なんですが、この土地は、不案内なもんで、どこを探して良いのやら、皆目、見当も付かなくなってる訳ですよ。犯人は、傷ついた白い羽根の天使なんですけどね。酷い傷でしたし、片側の翼は、もげてますからね。飛べる訳もない。近くに居るはずなんですよね。壁の外周は探しましたから、内側かなあ?だなんて思って、苦労して内側に入ってみたんですが、内側と言っても、ここは広い広い。外側は調べられたのに、内側は不自然なくらいに大きい。全くどういう構造になってるんだってくらいに広い。こりゃあ、虱潰しって訳には行かないぞ、って感じなのですよ。情報提供を、お願い出来ませんかね?
ギョロリとした目がユリを見つめる。ユリは、ヒヤッとした。嘘は、見逃さないぞ、そんな風に、言ってるようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます