第17話 T字路上の悪魔(1)

 ラーハムは、パピィ、マピーと終りの見えない剣撃を繰り返している。ユリには、同じに見えてきた。退屈だ。


 せめて、スウェーとかいう、あのピカッて光るやつが見たいなあ。退屈だなあ。


 そんな風にユリが思っていると、名も無い傀儡が、エリの用件をユリに伝える。


 皆んな、お母様が呼んでるみたいだから、ちょっと行ってくるね。聞こえてるのかな?? ユリは、剣撃に夢中になっていう一行に一応の挨拶をすると、名も無い傀儡に付いて行った。


 傀儡の案内に従って、楽園のあるエリ城へと帰って行く。今居たところは、ラーハムの為に建てられた離宮だ。


 歩くと意外と距離がある。子供の足では尚更だ。しかし、ユリの足取りは軽かった。


 ラーハムが来るまでは、高壁の外側は危険であり、内側は安全だと聞かされて居たけど、内側には悲しい退屈ばかりがあった。


 でも、ラーハムが来てからは、毎日が楽しくて、性がない。こんなに楽しくて、申し訳ないと思えるくらいだ。


 お母様の用事を早く片付けて、またラーハムに会いに行こう。ボクの役目は、ラーハムの傍に居ることだからね。離れちゃ行けないんだ。議会の決定なら、しょうがないよね、ウンウン。


 などと、我田引水な納得をしつつ、活発に歩を進める。


 本城と離宮の間には、T字路があった。そこのT字路に見慣れない風体で全身黒尽めの男が座り込んでいた。


 困ったなあ、困ったなあ。どうしたものか。うんうんうん。


 けったいな恰好の黒尽くめの男は、何かに困っているようで、うんうんうん、と唸っている。ちょっと危ない人にも見える。周りを見てないみたいだし、こちらも急ぐ手合いです。心で、すみません、と詫びて、T字路をスルーしようとした。


 ちょっと、ぼっちゃん! こっちは困り果てて、うんうんうん、唸っているのに、それをスルーだなんて、酷いじゃないですか!!


 そう言って、得体の知れない黒尽くめの男は、瞬速の速さでユリに近づくと、ユリの前に顔面を突き出して来た!

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