第16話 マピー(2)

  良い加減にしないか、マピー! ラーハム様は、お客人だぞ! お怪我をさせて良いなどと言うことはない! 仮にもラーハム様がお怪我をされては、我らの主エリ様のご名誉にも関わるのだぞ!


 常軌を超えたラーハムの動きと、珍しく声を荒げたパピィの言に、マピーは、すっかり毒気を抜かれ、弁明に追われる。


 でもでも、お兄さま、私(わたくし)の有り様は、お兄さまのご名誉を思っての行動です。何卒、お嫌いになぞ、成らないで、おくださいまし!


 傀儡に名誉など、あるものか! 主の名誉こそ我らの名誉ではないか! お前は、まだ、わきまえぬのか! ・・・それに私とお前は対で生まれた者、なんで嫌いになどなろうものか。


 お兄(あに)さま・・・


 二人は、睦まじく、お互いの身体を温め合った。


 二人は、仲が良いんだよ。誰も居ないとこでは、いつも抱き合ってるよ。まー、お母様がそう作ったんだけどね。デフォルトだよ。


 ユリが設定から、ぶっちゃけた。ラーハムは、笑顔をユリに返した。


 しかし、最後の攻撃は、なかなか良い攻撃だった。スウェー出来なかったら躱せなかった。ラーハムが、戦闘の短評をする。 


 それを聞いた、マピーが短評に食いつく。あれは何ですの?と。


 スウェーは、体を光量子化させて、物理攻撃を躱す行動だ。躱せるのは物理攻撃だけだから、頼るのは危険だ。魔法力も、使うしな。


 スウェー・・・。素晴らしい技術ですが、我々には無理ですね。


 パピィが、さも残念そうに呟いた。


 そうでも無いさ。傀儡は、主に従うんだろ? なら、エリ様が使えるようになれば良い。それだ!とパピィとマピーは、顔を見合わせる。が、すぐに絶望と諦めの表情に変わり、うな垂れた。


 なんだ? エリ様もいっぱしの戦士だったと、ユリから聞いたことがあるぞ? な、ユリ。


 ラーハムは、同意と確認を求める。


 あのね、お母様は、大きな戦いを経験されて、それを機に剣を置くとお決めになったので、自ら剣をお取りにはならないよ。ましてや、そのための訓練とかね。剣を取らない、その延長で作った傀儡な訳だしね。


 そうか、残念だな。パピィとマピーを見ても、良いセンスだと思うけどな。惜しいことだ。そうだ、二人のコンビネーションは、良いんだろ? 攻撃パターンは、乗数倍となる。2人で、攻めて来いよ。スウェーも使わないこととする。どうだい? パピィさん??


 よろしゅう、御座います。ただし、これからは、さん付けは、ご遠慮したく存じます。傀儡の身には、やり難く思いますので・・・。以後、呼び捨てでお願いしたします!


 言うや否や、パピィは、ラーハムに不意の剣撃を加えた。


 

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