第14話 パピィの限界

 ラーハムは、急速に回復した。ユリから何らかの力を得ているようだった。


 パピィは、瞬足の技を使いラーハムの背後を取る。背後からの一閃。相手の正面から、即座に相手の背後を取る上級技である。通常なら決まりの、この展開もラーハムには読み切られている。ラーハムは剣を背中に回すと、パピィの突きを上に弾き、剣を真上に跳ね上げた。


 跳ね上げられた剣は、数瞬後、地面に突き刺さった。


 参りましたと、言い、パピィはラーハムに精神的に兜を脱いだ。ユリもラーハムの勝利を喜んでいる。だが、ラーハムは、不服そうだ。


 駄目だ。反応速度が、まだ遅い。あの一瞬があれば、3人は切り倒したい。1人ではその内ジリ貧になる。ラーハムは、追い詰められたように、そう言った。ラーハムの視点は、あくまで天使戦に有るようだった。ユリには、ラーハムの不機嫌の理由は分からず、ポカンとしている。パピィは、自分とラーハムの力の圧倒的な差を見せつけられて、忸怩たる思いを拾うのだった。


 パピィは、エリの傀儡(くぐつ)である。傀儡とは、人形のことである。パピィに取って、作り主である理想の女神エリの持つ、力と技以上のことは出来ない。それが現実を定める論理神オルの定めであった。パピィが如何に独自の努力をしようとも、その努力は実らないのだ。


 それが世界の定めならば、従うのみである。パピィは、歯噛みした。


 



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