第9話 片翼の天使(草刈り仕事)

 見るに堪えない老人と化した上司に、ラー・ハームはとどめを刺した。それにより、ラー・ハームは、全ての天使にとって反逆者となった。神ヤーの息から生まれた責任ある者に、とどめを刺したのだ。明らかな反逆だ。神ヤーもチクリとしたことだろう。許す訳が無い。


 即座に討伐軍が組織され、反逆の天使は追い立てられる。反逆の天使は、最も殺した天使と言われるほどの猛者である。攻め寄せる雲霞の如き腕利きの猛者どもを次から次に斬り伏せていった。誰も反逆の天使に敵う者は居なかった。


 天使に死んでも、弔いは無い。神の息吹から生まれ、その意の向かうところによりて死する運命。生まれたと思ったら、抗することも許されぬ刈り取り機械の餌食になるだけ。


 反逆の天使は、幸薄き天使たちをバッサバッサと切り倒した。生き延びる為に。草刈りとは、こういったものであろう。


 鬼と化した反旗を翻す天使に、刈られるだけの草の中に、仇なす天使が紛れていた。それは、悪魔だった。


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