第7話 傷ついた天使(回復編)

 ラーハムの傷の治りは、芳しくなかった。笑顔が、時折、見えることが、治療の成果をアピールし、小言の煩い勢力を押し戻してはいた。


 やがて、ラーハムが生きる意欲を取り戻した理由が明らかになる。ラー・ハームは、ラーハムとして、再生したのだった。そして、名付け親は、ユリと言う真実。理の全ては分からないが、何らかの形で、ユリから失われた力を得ているのだろうと言うのが、知略の神の分析だった。ユリにラーハムの面倒を見させて回復させよ! それが議会の意思となった。子供に議会命令を、被せるなど、理想のエリは難色を示すが、議会の圧力に押され、承服させられる。


 いきさつは、どうあれ、ユリはラーハムと同じ部屋で住むことになった。ユリはラーハムと居られて、ニコニコだ。体の裂傷は回復しているが、まだ充分に体を動かせるほどには、回復してはいない。その日から、血の滲むようなラーハムのリハビリが始まる。やがて、ユリの激励を受けてリハビリを続け、車椅子の世話になりながらも、前程に動けるまでに、ラーハムは回復する。


 ユリは、ラーハムの近くで、何やら工作をしていた。


 何を作ってるんだ? ラーハムが、ユリに聞いた。


 鳥の模型だよ。ラーハムと同じだよ。ボクは飛べないけど、ラーハムは、飛べるの凄いよね。飛ぶって、どんな感じなの?


 そう忙しく手を動かしながら、ユリの思い描く鳥の模型の製作に余念がない。


 今は、もう飛べないさ。これからも無理さ。そう意気消沈して、ラーハムは答えた。


 そんなことないよ、きっと飛べるよ! ラーハムを元気つけようと、ユリは確証も無いことを言った。


 羽根が1枚で、どうして飛べるんだ! 良い加減なことは、言わないでくれ!!


 いつにない調子で、ラーハムは激昂した。


 少し、一人になりたい。一人にさせてくれ。


 そう悲しげにラーハムは言うと、ベッドへと潜り込んでしまった。


 ごめん。ユリにはそれだけを、言うのが精一杯で、トボトボと部屋を出た。


 2日ほど、ユリはラーハムに合わせる顔が無かった。そんなユリを、心配したエリが、ユリとラーハムの間に立つ感じで会談をした。そして、ユリにラーハムに会うように促した。ユリは、心配しながら、ラーハムに会った。


 ラーハムはユリを見つけると、ユリに駆け寄って、ユリを抱きしめ、誤って来た。


 ラーハムによれば、エリが、機械の翼を作ってくれるとのことだった。初めてなので、試作と言うことになるが、少し待つように言われたと。


 先の見えたラーハムは、目の輝きを取り戻していた。ユリも嬉しかった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る