第4話 傷ついた天使(来訪編)
高い壁を越えて天使が来訪したことがあった。最初に見つけたのはユリだった。
羽が取れた天使だった。天使は酷く傷ついていた。自分の物とも知れぬ血に塗れた傷ついた体は、見るに堪えない姿だった。それは、身も心もだ。天使は、悲しみの涙に沈んでいた。だが、ユリ一人では、どうすることも出来なかった。傷ついた天使が居ることを母であるエリに告げた。そして、それは禁じられた毒沼訪問を知られる事にもなり、ユリはそのことで酷く叱られた。
しかし、事情を汲んだ賢明なエリの判断で傷ついた天使は、介抱されることとなった。天使は羽を1枚失っていて、心も酷く痛んでいた。エリは侍従に命じて、天使を楽園へと運ばせた。エリの侍従は、エリの作った傀儡である。エリ自身、歴戦の戦士であり、傀儡も当然戦闘力は高かった。傀儡の戦闘力も高かったので、エリは次第に戦闘からは、離れるようになっていた。戦闘は専ら傀儡の仕事だ。また、傀儡は、家政婦ごとも出来る。楽園には、そもそも
戦闘が無い。だから、エリとユリのお世話が彼らの今の仕事だ。
エリと傀儡の手厚い介護を受け、傷ついた天使は、回復した。名をラー・ハームと言った。彼の説明に依れば、64階層にも及ぶ天使の階層で最下層では無いけれど、下の方の階層らしかった。そして、全ての天使たちは、神ヤーの息から生まれるとのことだった。
創造の神であるアー神から生まれた、この世界に取っては、デカルチャーなことだった。この天使の来訪は、論理の神オルとその類神たちにも知られることとなり、楽園を取り巻く天界も騒然とするのだった。
天界は、乱れた。異質なものを拒む勢力は、殺すべしと言い、他者の脅威を恐れる者は、追放しろと言った。また、天使の力を利用しようとする者、自分たちは手を下さず他の天使に殺させようとするものなど、様々と入り乱れて、天界は混乱に混乱を極めた。しかし、上神オルの決定により、暫くは貴賓として、楽園での生活が約束された。ユリとエリの住む壁内の楽園に限り。
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