第4話
『ランダムマジック』の中身も気になるが、先にあの子の無事を……と思っていると、すぐ後ろに彼女の気配があった。
水晶か何か……いや、もっと頑丈な何かに閉じ込められている褐色肌の少女。体も拘束具に縛られて、生きているのか死んでいるのかさえ分からない。
「『合成』……してみるか。今の俺にこれは扱えるのか……?」
この鉱物を欠片だけもらって……そうだ、『ランダムマジック』の中身だ!
パン! と球体が弾けて周囲に十ほどの大小様々なアイテムが飛び散る。剣、槍、胸当て、靴、魔石……。
魔石はなかなかレアだな。さて、どんな性能をしているのやら……。
○SR:ワーグナーの魔石
・体内にある毒素を消し去る。
・口にすれば24時間続く苦痛の後に死ぬ。
○
おおう……とんでもないものが入っていた。これを使って、どうしろってんだ?
まあ、これは今は『合成』しても仕方ないな……。他で代用しよう。
欠片とピッケル……これならどうだ?
○UC:魔石ドリル
・耐久値1/1
・鉱物へのダメージ+1200
・大轟音
○
これはまた……ピーキーなものができたな。だけど、これなら……と、俺は少女を捕らえている鉱石を掘り出した。
すると、徐々にだが鉱物は削れていく。
少女までもう少し、というところで鉱石全体がバァン! とはじけた。
中から出てくるのは……浮遊した少女。その瞳が、ゆっくりと開く。
「……あなたが、私を助けてくれたの?」
「えーと、そうなるかな。君がどんな状況にあったかも知らないけど」
「436年と4ヶ月。それだけ私はここにいた。まさか、魔強化されたアダマンナイトを砕けるヒトがいるだなんて……」
400年!? それだけ、それだけこの子は独りぼっちだったのか?
「そりゃ……寂しかったろ」
「50年を過ぎるくらいまではね。それからは、きっと私は罰を受けてるんだと思ってたから」
よく分からないが……長い間、こんなところに監禁されるほどの罪とは何だろうか。
「ま、助かったならいいんじゃねえの」
「冷たいヒト。これから一緒に旅をしようくらいの一言は言えないの?」
「出口までは送ってやるよ。今装備を作るから待ってろよ」
きっと、外では俺のパーティメンバーの悪評の全ての元凶が俺だという事になっているだろう。なら、そんな奴に連れ回されるのも可哀想だ。
○NR:十本目のパルチザン
・物理ダメージ120~163
・耐久値:340/340
・アタックスピード+30%
・魔法ダメージ(炎)+20
・重撃ダメージ+30%
・『薙ぎ払い』
○
○NR:鉄の衣
・アーマー58
・耐久値:590/590
・耐斬撃+60
・耐衝撃+32
・レジスト(炎)(氷)+10%
○
まあ、こんなものか……属性ダメージが入ったのはデカいな。俺には魔法は使えないから……。お、靴には移動速度+10%が付いてる。普通に歩いてる感覚で駆け足程度にはなるから便利なんだよなあ。
「今……何したの? 急に武器と防具が……?」
「ガラクタとガラクタを混ぜ合わせただけ。これが俺のスキルなんだよ」
「ふぅん、変なの」
そりゃ分かってますよ。そのせいでこんな所に落とされたわけだしな。
その装備で道中の魔物と戦闘しながら、俺はようやく尋ねた。
「それで、お前は何なんだ?」
「私はシフィ。魔道書よ」
「魔道書? どっからどう見ても人間じゃねえか」
「私の中にはこの世に存在する魔法の全てが記録されているわ。人化の術くらいあるに決まってるじゃない」
シフィは淡々と言うが、それってすごい事なんじゃ……。
「それじゃ、シフィは魔法なら何でも使えるのか?」
「知ってるのと使えるのとではまた別の話よ。私には魔力の出力がそうないから……そうね、人間のレベルに合わせて言うなら駆け出しの魔法使いくらいよ」
「その辺は武器と同じなんだな……結局は本人の力がないと何もできないっていう」
「その通りね。私を使いこなせる人間なんてどこにも居なくて、果てには悪用されないために封印するなんて、本当人間ってろくなものじゃないわ」
溢れてる溢れてる。どす黒いオーラが溢れてる。
「ま、いいじゃないか。俺が来たんだから、捨てたもんじゃないだろ?」
「あら、あなたなら私を使いこなせるって?」
「俺に魔法は分かんねえよ。だけど、どう生きるかなんて、実はいくらでも道はあるんだぜ」
それを聞いてシフィは目を丸くして……また伏せた。
「私には、分からないわ……でも、そうね。助けてくれてありがとう。あの、その……」
シフィはしばらく口をもごもごさせた後、こう告げた。
「私、あなたについていっていいかしら?」
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