第五幕

人が去った、

ある種の虚無が残る小さな衣裳部屋で、

小木と彼女と刈谷は話し合うことにした。

「遅れました、私、伊東と申します」

メイクを担当する彼女はそういう。

「私は刈谷」

「小木です」

一瞬の沈黙の後、小木が口を開く。

「どうですかね、

何か思い当たる節というもの」

伊東は少し経った後に、こんなことを話した。

「私は井筒さんという方に

言い寄られたことがあります」

ほほう、と小木は顎をいじる。

井筒というのは、この舞台における

引き立て役である。

稽古の最中も彼は熱心に中立の立場にいた。

彼の人柄、人情に厚いところがある。

「私もその話聞いたことがある」

刈谷も口を開いた。

「私は当事者ではないんだけど、

何人かの女性から聞いたことがあるわ」

「女癖が悪いんですかね」

と伊東はため息をつくようにいう。

小木は、

肝心な部分を追求することを忘れていた。

あの死体は一体誰なのかということ。

私は急いで彼女らに問いかけた。

「確かに」と伊東は言う。

「間違いなく、島田さんだった」

刈谷が確信を持ったように言う。

ー島田、彼はと、頭に彼の顔を浮かべる。

脇役ながらに主張がある、彼だ。

だが、彼はどうしてこんなことに?

「恨まれるような人間ではないですよね」

確かにと刈谷は頷く。

「こんな噂を聞いたことがある」

と刈谷は言い立てた。

まずはその前に、この物語の

シナリオを伝えなければならない。

少しの間お付き合いを願いたい。

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つなぎ幕の隠し舞台 雛形 絢尊 @kensonhina

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