第三幕
観客はそれに気づくまでに
数秒の時間を要した。
その時間の後、震え上がるような声がする。
支配人の彼は、途中の舞台を止めようと
駆け足で舞台上に飛び出した。
これはきっと間違いじゃない。
何者かがその場所に括り付けられていたのだ。
何者かが何者かによって。
観客はまばらに、劇場を去るもの、
立ち尽くすもの、その声は響き渡り、
ホール全体に煙幕を張ったような、混乱模様。
私は先ほどの彼女に問いかけた。
問いかけると言うよりも答えを要したのだ。
まず、あれが事実無根の
遺体であるとするならば、
混乱は2乗に等しい。
有無を言わさず大混乱を巻き起こすだろう。
せめて、彼が生きていれば。
そんな期待を胸にして、
私は立ち去るものから
流れ出すように舞台へと向かった。それに気づいたのは劇場支配人、権田である。
彼はきちっとスーツを着こなし、
絢爛な身なりをしている。私に彼はいった。
「小木さん、危ないですから」
慌てふためくように呼ばれた方を見る。
「可能であれば劇場から、離れたほうがいい」と。
彼は必死な表情を浮かべる。
私は押し出すような声で言った。
「それでは、やはり殺人が?」
彼はうんと頷いた。
しばらく去っていく演者たちの動きを見た。
こちらを見ている女性がいる。
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