第二幕

第一幕の最中、私は舞台裏へと足を運ぶ。

舞台転換が進む中で、

私は一人の女性の叫び声を聞いた。

その方は役者のメイクを担当する、

若い女性だ。

彼女の元へ駆け寄ろうと、私は足を早める。

この幕に私の出番はなく、

少しの休む時間があったからだ。

彼女は尻餅をついていた。

口を開いて時が止まった様に

その表情は固まった。

彼女は舞台造形の背後で、

黒い幕で霞んだ「何か」を見た。

私は彼女の元へ近づき、

その何かに向かって話すように言った。

「やはり、あれは人なんでしょうか?」

彼女は自らの口を右手で塞いだ。

その情を抑えるように。

まずはそこからだ。

「何か」が人であるのか、そうでないのか。

もしそれが良くない方だとしたら、

彼は誰に殺されたのか?

そういったことになる。

舞台上の轟音でこちら側も揺れる。

耳を塞ぎたくなるほどの低音が

鼓膜を揺らしている。

その直後のことだ。その"何か"が

音響効果により、我々の前から姿を消した。

すなわち、

舞台上に"何か"が正体を現したのである。

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