13. Surprendre 《驚き》
◇◆
大学の研究ってなんでこんなに面倒いんだろうな……とりあえず、これで提出してみよう。
外は晴れているのに、俺の気は重い。
突然出てきた俺は誰かって?俺はガエル・ヴァレリー。市内の大学に通ってる。医学部の3年生なんだけど、今ちょっと研究に忙しい。
ふわふわにカールした茶髪とそばかすがチャームポイントだ。あ、興味なかった?ごめんごめん。
俺の研究室……教授はマティス教授だ。
先生は医者で、魔術師について研究している。なかなかに厳しい先生。
マティス教授の研究室があるのは別棟の8階だ。
エレベーターで8階まで上がり、部屋の前までくる。
論文もいまいちだから足が重い。
ノックをして中へ入った。いつもの動作だが、「誰だ」とマティス先生の低い声が心臓を跳ね上がらせた。
なぜか、怒られるんじゃないかと焦ったが、今日はまだ悪いことをしていない。
「……俺です、ガエル・ヴァレリーです。」
俺を見たマティス先生の目つきは一瞬鋭かった…が、たちまちいつものマティス先生に戻った。
「論文か」
「はい、先生に以前指摘されたところを直してきました」
「わかった。今手が離せない。後で見ておくからそこに置いておいてくれ」
論文を机に置こうとして何の気なしに戸棚を見た俺は、先生の研究内容にくぎ付けになった。
「……これは……」
「……」
「あ、あ……」
「……お前は魔術師の友人がいただろう。なぜこの研究を選んだ」
「なぜって……その友人が大好きだったからですよ。だから……知りたいんです」
「……そうか」
(俺は、ある魔術師のことを調べていた……それに。)
マティス先生もフレデリックを知っている。
俺が沢山、フレデリックの話をした。
そのマティス先生は、もしかしたら恐ろしい実験をしているのかもしれないと思った。
今俺が見てしまったもの……それは、行方不明になっていた魔術師たちの何か……その何かは明記されていなかったが……ホルマリンに入れられたそれは、確かに彼らの何かしらの「サンプル」だった。
Continue..
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