ep.7 ◇ HERVÉ
2-14. Laboratoire 《研究室》
◇◆
先ほどのサンプル。これは、非魔術師には見えない魔力の塊。
これがどうにかして可視化できれば、随分と魔術師に関する医療も発達するはずだ。
それに……私は魔術師について調べていることがある。
私は少し急ぎ足で自分の研究室に戻る。
研究室があるのは別棟の8階。上のボタンを押すが、こんな時に限ってエレベーターは最上階で鎮座しているものだからこの待ち時間すら惜しい。
私は考えを巡らせながらエレベーターを待っている。
魔術師特有の【魔導基部】。これはまだまだ謎が多いブラックボックスともいえる。私は長年ここについて研究しているのだが、今一つ研究は進まない。魔術師が少なすぎる上にサンプルの母数が少ないことも原因なのかもしれない。
フレデリック。ここの大学に通う当時2年生……だった。
彼に色々と研究の協力をしてもらっていたのだが、彼はいなくなってしまった。
なんでも、《天に召された》という。この、《天に召された》というのも、謎が多い。
……
エレベーターがやってくる。
私は急いで乗り込み、研究室のある8階のボタンを押す。
私の研究室にある様々なサンプルは。
興味深いものも多いがそちらの解明も進んでいない。
エレベーターが止まる。8階だ。
そのまま私は自分の研究室へ向かう。……と、そこに見慣れた人影に気づいた。
ふわふわにカールした茶髪とそばかすが特徴的な、童顔の、学生。
……こんな時に。
「あ、マティス教授! お疲れ様です!」
「……ガエルか」
ガエル・ヴァレリー。医学部3年生になる、私の研究室の医学生。
フレデリックのことは、バイト先が同じだからと言ってガエルからもよく話を聞いた。
そんな彼の手には小さなメモリースティックが握られている。
「……論文だな」
「はい、先生に以前指摘されたところを直してきました」
「わかった。私は今忙しい。後で見ておくからそこに置いておいてくれ」
そうして論文のデータが入ったメモリースティックを置こうとしたガエルの手が止まる。
「……これは……」
「……」
「あ、あ……」
「……お前は魔術師の友人がいただろう。なぜこの研究を選んだ」
「なぜって……魔術師が大好きだったからですよ。前々から興味もあったんです。だから……知りたいんです」
「……そうか」
敢えて触れないが、別に、見られて困るものなど何もない。
私のやることこそ、正義だ。
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◇◆
論文を置こうとしたその時、あるものを見た俺はつい手が止まってしまった。
マティス教授も、それに気づいただろうか。
俺が前々から魔術師に興味があったのはある魔術師のことを調べていたからだけど……それに。
マティス先生もフレデリックを知っている。
俺が沢山、フレデリックの話をした。
そのマティス先生は、もしかしたら恐ろしい実験をしているのかもしれないと思った。
……背中に冷汗が伝うのを感じた。
……
今俺が見てしまったもの……それは、行方不明になっていた魔術師たちの何か……その何かは明記されていなかったが……ホルマリンに入れられたそれは、確かに彼らの何かしらの「サンプル」だった。
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