4. Soutien émotionnel 《心の支え》
◇◆ Ron ◆◇
膝の靭帯……患者さんのを治したら、今度はきっと、僕の番。
ジル室長の持論では、『自分と他人を治せて漸く臨床で使える』だ。だからきっと…今日も僕は切れてもいない自分の靭帯を、わざわざ切ってから治す。
これが、凄く、怖い。
《検査》や《訓練》の内容は、事前にはざっくりとしか知らされていない。
『肩の次は膝だ』って、それだけ。
だから僕は膝関節の解剖を猛勉強してくる
リアム先生に話すと《訓練》には猛反対してくれるんだ。本当に困っている患者だけ治せばいいと、そう言って、患者さんの治し方や解剖を丁寧に教えてくれる。
訓練も、行かなくていいと。
だけど、ここには僕を待っている人がいる。
それに……
僕が、やらなくちゃ。
リアム先生、いつもは大学病院の救急部で仕事をしているし、空いた時間にこの研究所や、別の病院や患者さんの元へ往診に行ったりしているみたいだから、ちゃんと寝ているのか心配になる。
いつも、忙しくて2日くらい寝てないって平気な顔して言うからもう少し休ませてあげたいけれど、僕はここに来るとき先生が一緒にいてくれたらどれだけ心強いだろう、って、思う。
ケヴィン先生はここには入れないんだって。いわゆる「部外者」らしいから、ここでの一切はケヴィン先生には話せない。
でも、今日はリアム先生が来てくれるから心強い。
ジル室長もいつもここにいるわけではないし、リアム先生も忙しいから、3人で話すのって初めてかもしれない。
だけど、この後の《訓練》を考えると……急に胸の奥が重たくなるような気がした
…今日僕はこの魔法で……靭帯を………
無傷の真っ白な自分の膝を見た。
膝の解剖構造が頭を駆け巡る
……考えるだけでゾッとした。
お願い、先生、早く来て……
…ううん、いや、……だけど。
僕は今目の前の困ってる人を治さなくちゃ。
深呼吸をして、気持ちを、意識を、切り替える。
『tout guérir』
これは全てを、癒す魔法。
僕は胸の前で両手を組み、祈るように、目の前にいる患者さんの治療をした。
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