17. Mission de vie 《使命》

◇◆ Liam ◆◇


エリックは、兄を追って逝ってしまった。

ジル先生に何を聞いたのだろう



病院へ戻ってから死亡診断書を書く

……

……死亡………


用紙に並ぶ文字を見ながら、やるせない気持ちに襲われる。



……間に合わなかった。



あの時病院の玄関口で感じたのは、エリックの魔力がはじけたものだった。

ゼノ様に、魔法を剥奪されたのだ



……そうして、悪い予感は的中する。

エリックがいたのは、フレデリックがゼノ様に魔法を剥奪された場所だった。

そこに目撃者は、いなかった。


着いた時にはもう、エリックは魔法を剥奪され、冷たくなっていた。

まるで、眠った像のよう

そうして警察と救急に連絡し、私が彼を看取った。

悔しさが、悲しさが、どうしようもなかった。

……まだ、8歳だった



きっと、この未来をフレデリックは見ていたのだろう。

彼は、どう思っただろう。


……

……彼らは、きっと、一緒だ



だがこれが終わりでは無い。

魔術師の《死》は非魔術師の《死》とは一線を画している。


死は平等であるはずだが、この不平等の理由はすべて、《秘密》によるものだ。

そもそも魔術師と非魔術師の違いは、魔法が使えるか否かだけではない。



この世は混沌に満ちていて、非魔術師の死者は現界を彷徨い、魔術師は天に召されたらこの世から消えてしまうと、それが「一般常識」として教えられる。


だが


この世界はこの世…《現界》の他に、《冥界》と《天界》の3つの世界から成り立っている

これが、世界の本来の構図……

だがそれは上手く機能していない。


死者の魂は本来、《天界》へ導かれるべきなのだ。

魔術師も非魔術師も分け隔てのない、平等な《死》の形


…だが、エリックも行ってしまった

《冥界》へ。フレデリックの元へ。

こうなることは必然だったのだろうか。


……これ以上は考えたところで答えが出るものではない。


冥福をお祈りする

2人が幸せに過ごせますように




ロン……ロンは、大丈夫だろうか。


ロンを守るために今まで色んな策を尽くしてきたが、小学生になってからロンの本質を見抜く者が増えてきたように感じる。


それは非魔術師も含めてそうだ

噂が噂を呼び、ある街では《マリア》の降臨だと信仰の対象になりつつあるとさえ聞く


ロン……


あの特殊魔法『toutすべてを guérir癒す魔法』を使う際の祈るような姿と暖色の淡い光は、誰が見ても神々しいのだ


だが、あの《検査》…小学生には非常に酷だ

私も通った道だが人の為とは何かを考えさせられる

ロンは、きっと、大丈夫じゃない。



話を、しなくては。優しすぎるあの子を守るために。

それが重圧になるとしても。

私の命尽きるまで一緒に背負うと誓った



それは私の罪であり、使命であり、生きる意味だから




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