ラスト・ラブ last days part.1

憑弥山イタク

ラスト・ラブ

 タイムリミットは、残り8時間。

 私が、サユキと一緒のベッドに居られるのも、最大であと8時間。


「リン、私の事、本当に愛してた?」


 サユキが、少しばかり苦い顔を見せて、私にそう尋ねた。無論、私はサユキを愛している。この世に生きるどんな命よりも、最優先でサユキを愛し、常に想い続けている。


「愛してる。私を含めた、他の誰よりも」

「……安心した。私を愛してくれる人が、こんなに近い所に居るだなんて……私、もしかして幸福、なのかな?」

「幸福なのは私の方だよ。一方的に見てるだけの私に気付いたのは、他でもないサユキなんだから」


 下着さえ身に付けず、私達はベッドの上で言葉を交わす。体で存分に語り合った後の会話は、砂糖よりも甘く、何故だか虚しさを感じる。


「……ねえ、リン?」

「ん……?」

「…………ありがとね……私の事……好きになってくれて───────────────」

「………………感謝されるつもりなんてなかったのに…………」


 外気を取り込む隙間は、全てテープで塞いだ。

 七輪を焚いた室内には、熱と煙が漂う。

 呼吸を止めたサユキの顔は、酷く綺麗だった。

 もうすぐ私も、呼吸が止まる。

 最期に、サユキとゆっくり会話ができた。

 十分だ。満足だ。

 人生の終幕にしてはお粗末だが……存外、悪い気はしない。

 サユキも、同じ気持ちだったのだろうか。

 今となっては、確認もできないが…………。

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ラスト・ラブ last days part.1 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama

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