登場人物、団体と用語解説(おそらくネタバレに警戒しなくてもいい程度)

この作品の用語が多いので参照しやすいようにまとめを作ってみました。ネタバレは多少ありますが事前に知っていても大丈夫な程度の情報だと思います。最終的に話に出ることなく、裏設定になっちゃうやつもあるかもしれません。



●サレンジア伯爵令嬢アリア・クリューフィーネ

クリューフィーネ家の次期当主。デビュタント以降は正式にサレンジア=ワルマイヤ・フィルハーモニアオーケストラ(SWPO)のアシスタント指揮者に就任。


その正体は地球からの転生者。音大卒の指揮者志望で周りから期待されていたが、コンクールでいい結果残せなくて期待はずれとされた。やけ飲みして酔いつぶれて交通事故で命を落とし、芸術が好きの管理者に見込まれ転生のチャンスを得た。


炎みたいな赤い髪がトレードマーク。ちょっと生意気な目つきと桜色の唇がチャームポイント。胸元がかなり寂しいことになっているのを本人はちょっと残念に思ってるみたい。



●サレンジア伯爵スタンニスラウ・クリューフィーネ

アリアの父。ウェンディマール王国の貴族。SWPOの監督。ローサリンガン帝国音楽祭で優勝したことで「ウェンディマールの至宝」と呼ばれるようになった。


無自覚のワーカーホリック気質。本人はただ好きなことを存分にやるつもりだけど客観的に見ると完全に過労。


幅広いレパートリーを持つ。中でもブラームスとベートーヴェンが得意。特にブラームスは帝国全土でも右に出る者はいないと言われている。



●サレンジア伯爵夫人マニエラ・キャビネ

アリアの母。ウェンディマール王国で活躍しているソプラノ。昔は王都カランカオーでアイドルみたいに人気があったが、結婚してからあまり主役を演じなくなった。夫スタンニスラウとはすごく仲が良いが、よく口論して喧嘩したりもする。



●シャルカ

アリアの付き人。幼馴染&親友でもあるから、プライベートでは昔のように親しく接するように求められている。頭はいいが時々馬鹿なことをやらかす。田舎のワルマイヤでの子供時代はアリアと一緒に散々馬鹿をやって、二人の悪ガキとして大人たちに手を焼かせた。スタンニスラウの伯爵叙任と王都移住によってアリアの生活環境が大きく変わった時、アリアの精神安定のためにシャルカを一緒に王都に連れてきた。


辻褄が合うようにするため、管理者の設定によって、この世界の音楽史について何も知らないアリアの代わりに、シャルカが音楽の歴史を勉強した。



●アンドレイ(サレンジア伯爵家の執事)

●セルジェンク(ティヴァル男爵、SWPOのコンサートマスター)

●リンクス(SWPOのステージマネージャー)

クリューフィーネ家(サレンジア伯爵家)の人々。SWPOの裏方のスタッフも立場上伯爵家の家臣や使用人になる。


セルジェンクはコンサートマスター(第一バイオリン首席)である同時に、下級貴族でクリューフィーネ家の家臣でもある。スタンニスラウの伯爵叙任以降は村を一つ任されて男爵になった。



●モラウーヴァ公爵の孫娘エリュシカ・カレンデム

アリアのライバル。愛称エリカ。気高く美しい金髪縦ロールの令嬢。転生したアリアが初めて出会うとき驚愕するほどの立派なものの持ち主。アリア曰く「他人に厳しく自分にもっと厳しい」。アリアとは競争関係だが、アリアに対して非常に好意的。二人が競い合って、ともにさらなる高みを目指そうと考えている。


エリカの父はモラウーヴァ公爵の長男。聡明で勇敢、領民からも人気が高い、公爵自慢の息子だったが、次期当主の鍛錬と箔付けのために騎士団に入って、洪水の被害にあった地域で人命救助していたところ倒壊する建物の下敷きになって殉職。公爵は大変悲しんで、それ以降エリカに非常に甘い。それに次期当主が公爵の次男になったため、エリカの相続順位が大きく下がった。そのおかげてエリカはかなり自由にさせてもらえているし、音楽の才能が開花した。公爵が理解を示したから音楽活動の邪魔になりそうな婚約話も全部断ることができた。



●アイミ&シゼル

エリカに心酔する二人の下級生(魔法科一年)。光魔法が得意、猪突猛進高飛車な茶髪の娘がアイミ。風魔法が得意、腹黒陰気メガネ黒髪のほうがシゼル。アリアを見かけるたびとにかく突っかかってくるが、エリカによると二人は本当はとてもいい子らしい。


彼女たちは小モラウーヴァ王国時代からカレンデム家に仕える忠臣の血筋。今でも両家が忠誠を誓う対象はウェンディマール王ではなくあくまでモラウーヴァ公爵というスタンスを崩さない。家の教育によるものか、二人は同年代のカレンデム家の娘であるエリカに傾倒している。



●サレンジア=ワルマイヤ・フィルハーモニアオーケストラ(略称SWPO)

前身は先代ワルマイヤ男爵(アリアの祖父)が設立したワルマイヤ・フィルハーモニアオーケストラ。はじめは田舎の音楽愛好者の集まりから発展した無名なローカルオーケストラ。スタンニスラウが監督になってから飛躍的成長を遂げ、ローサリンガン帝国音楽祭で優勝したことで一気に有名になった。今はウェンディマール王国五大楽団の一つに数えられている。


最初はワルマイヤ男爵領の領民だけで構成されたが、スタンニスラウのサレンジア伯爵叙任以降はサレンジアの領民からも団員を募集するように。それに合わせて楽団名も変更。クリューフィーネ家の領地外から優秀な演奏者を招こうとしないため、他の一流のオーケストラと比べると個人能力が突出した団員が少ない。その分結束力は随一。団員は全員領民同士、幹部は家臣団の下級貴族、そして監督は領主だから。


スタンニスラウの伯爵叙任と同時に活動拠点を王都カランカオーに移り、西区画で新しい屋敷を構えることに。屋敷の別館に中規模のホールを建て、そこを新たの本拠地にして今に至る。


ウェンディシュ王立交響楽団(WRSO)の上層部は自分たちこそが王国一であるべきと思い、その地位を脅かすSWPOに対して強い対抗意識を持つ。しかし帝国音楽祭の優勝に実はそれなりの数のWRSO団員が栄光を共有した。あの頃のSWPOはまだ小規模。音楽祭へ行く資格を獲得したのはいいけど編制人員が足りないしバックアップ体制も整えていなかった。だからWRSOは足りない団員と付属合唱団を提供、旅のサポートもした。WRSOの中では一緒にローサリンガンまで旅をした人々はSWPOを戦友のように思うが、そうでない者は強く嫉妬している。特に監督はスタンニスラウを目の敵にしている。


スタンニスラウを一方的に敵視しているマツィジヴィア公爵のマツィジ=ヴィアッカル・フィルハーモニアオーケストラ(MVPO)ともライバル関係。


ちなみに、ポーランド語でのフィルハーモニアの綴りはFから始まるから、本当はSWFOにすべきかもしれないが、SWPOのほうがわかりやすいと思うからこのままにした。



●新ザロメア劇場オーケストラ(略称NZTO)

カレンデム家が所有するオーケストラ。名前通り、王都西区画にあるザロメア劇場を本拠地とし、主な活動はオペラ。


NZTOの成立までに紆余曲折があった。ザロメア劇場は放漫経営によって一度破産した。債権回収の一環としてモラウーヴァ公爵は劇場の土地と建物を抑えたが、再開発の目処が立たないので三年も放置した。孫娘のエリュシカが指揮者志望だと知ると、公爵はエリュシカと一つ約束を交わした。「学年首席になったらオーケストラをプレゼントしてやる」と。エリュシカが見事首席の座を手に入れたから、公爵はザロメア劇場を再建すると決意した。


破産前の劇場オーケストラの団員はもうみんな再就職したから、彼らを再び招集するではなく、公爵の豊富な人脈と資金でヘッドハンティングして、最高のオーケストラを一から作ることにした。名前も新ザロメア劇場オーケストラに変更。ただし節度なく他のオーケストラから一気に何人も引き抜くといらぬ恨みを買うし、公爵家の品位も損ねる。なので一つのオーケストラからヘッドハンティングするのは三人までと決めた。当時のSWPOからも第二バイオリンの首席、オーボエの首席、そしてトロンボーンの首席の三人がNZTOに移籍した。ヘッドハンティングで獲得した最高の人材は三十人ほど。オーケストラの編制を満たさない。足りない人員は若手の中から選りすぐりの精鋭を集めた。その若手の精鋭たちもなかなかやるが、やはり首席たちとかなりの差があり、成立してからまだ日が浅いのもあってチームワークがNZTOの不安定要素になった。それでも団員の個人能力が突飛しているからウェンディマール王国五大楽団の一つに数えられている。


NZTOの監督はウェンディシュ王立劇場オーケストラ(WRTO)からアシスタントのカリームを引き抜いた。カリームはもともとWRTOの監督カサグランと意見が合わず冷遇されていた。だから移籍してからずっとWRTOに喧嘩を売ってるし、向こうからも目の敵に。もっとも両方同じオペラがメインの劇場オーケストラだからライバルになるのは必然とも言える。


監督のカリームは基本的にオペラに専念。そしてコンサートは卒業後アシスタント指揮者に就任するエリュシカの領域。二人の活動範囲がかぶらないようにする予定。



●ウェンディシュ王立交響楽団(WRSO)とウェンディシュ王立劇場オーケストラ(WRTO)

ウェンディマール王室が運営している二つのオーケストラ。姉妹楽団のような関係。一部常用外の楽器を担当する団員は両者の間で共有。一部施設も共同で使っている。大編制の楽曲を演奏するとき追加の人員が必要ならお互いに融通することもある。


現在のWRSO監督はクピラスカ楽爵。WRTO監督はシダラン伯爵家のカサグラン。



●神聖オーラニア帝国

大陸統合会議で成立した超巨大国家。名目上は外交併合したがそれぞれの国に高度の自治権を維持している。その実態は連邦みたいな体制。帝国の最高権力者である皇帝は独特な選挙制で決められている。構成国の内政に干渉できないが、帝国の外交、皇帝直轄領の運営、自由都市の税収の一部など大きな権限を得る。代わりに帝国を外敵から守る義務を背負い、そして数多くの構成国の間で揉め事が起こる時公正に仲裁しなければならない。


皇帝になる資格を持つ五大国は:

グレート・アングリア・ユニオン(大体地球のイギリスとポルトガル相当)

アキエタニア王国(大体地球のフランスとスペイン相当)

ラテウム王国(大体地球のイタリア+バルカン半島の一部)

ゲルマニクス王国(大体地球のドイツ+北欧の一部)

ウェンディマール王国(大体地球のポーランド+チェコの一部+他の東欧の一部)


現在皇帝選に投票権を持つのは五大国国王、二つの大主教領の大主教と帝国自由港のリューベングの都市長、そしてローサリンガン帝国音楽祭の優勝者。皇帝選で三票を集めた候補者は当選確実と言われている。大主教と都市長は勝ち馬に乗りたいから。候補者たちがまだ二票しか確保できていない時点で彼らは様子見、三票を集めたら情勢が一気に動き出す。


六年前の皇帝選も、音楽祭前ではアキエタニアはラテウムの支持を、そしてゲルマニクスはウェンディマールの支持を得て2対2だった。音楽祭でスタンニスラウが優勝したことによってゲルマニクス陣営のほうに天秤が一気に傾いた。だからスタンニスラウは名実ともにエンペラーメーカーだった。親ウェンディマールのゲルマニクス王を皇帝に当選させたその功績は大きい。それでスタンニスラウは伯爵に昇格した。



●ウェンディマール王国

オーラニア大陸東北にある古くから存続してきた国。広大な領土、そして強大な経済と軍事力で五大国の一つとして数えられているが、技術と文化の領域では後進国だと思われている。大体地球のポーランド+チェコ(自由都市となっているプラハ周辺を除く)+バルド諸国相当。


「貴族らしくない自分を周りが大目に見ている」とアリアが認識しているが、本当はウェンディマールの貴族社会全体で見ても礼儀作法にそんなに厳しくない。マナーにこだわりすぎるのはもはや旧時代的な考え、これからは形式なことよりもっと実用性を重視すべき、という風潮が広まっている。


ウェンディマールの貴族は領地の位置によって二つの派閥に分かれている。由緒ある三大公爵家を旗頭とする、領地が王都カランカオーより東の貴族たちで構成される東部派閥と、後から王国に組み込まれたモラウーヴァ公爵が率いる西部派閥。モラウーヴァ公爵は実質かつての小モラウーヴァ王国をそのまま統治しているから、その実力は公爵家としても別格、東の三大公爵の総力を上回るくらいの軍事力と経済力を持っている。東部派閥は所領が広いし人数が多い分総合的な力が上だが、西部はモラウーヴァ公爵のもとで一枚岩だから、双方の実力は拮抗している。そのバランスを壊しかねないのが、スタンニスラウの伯爵叙任だった。


ワルマイヤ男爵領は北東の辺境だから、クリューフィーネ家は東部派閥の取るに足らない弱小貴族だった。しかし新領地のサレンジアは王都の南西の要地。つまりスタンニスラウの伯爵叙任によって、東部派閥から一人抜けて、西部派閥に新たな有力貴族が参入することになる。当然東部派閥は猛反発。結局スタンニスラウは音楽ばかりやってる名目上だけの領主、サレンジアは国が代わりに面倒を見てくれる体制だから、派閥のパワーバランスに影響がない。


ちなみに東部派閥の貴族は王都東区画に、西部派閥は西区画に屋敷を構えるのが不文律になっているため、スタンニスラウが伯爵叙任したとき東区画の古い王都屋敷を手放して、西区画に立派な屋敷を新築した。



●サレンジア伯爵領

スタンニスラウがローサリンガン帝国音楽祭で優勝した後、褒賞に何がほしいかと国王から聞かれた。「王都で活動したいから王都の近くに領地がほしい」と言うと、新しい領地としてサレンジアをもらった。


サレンジアの地は王都カランカオーの南西を抑える、国防の要だからずっと国王直轄地だった。神聖オーラニア帝国成立まではウェンディマール、ゲルマニクス、小モラウーヴァ三国の国境地帯で、領都の城塞都市ウローツカ(恐らく地球のブレスラウ辺り)は何度も激戦地になった。長く続く平和期間で軍事的重要性が下がっても、交通の要衝だから商業が発達する豊かの領地である。それで人種構成が複雑で、かなりの人数のゲルマニクス人が在住している。例えばNZTOに移籍した、SWPOの元オーボエ首席もサレンジア生まれのゲルマニクス人。


スタンニスラウは普段王都で音楽仕事に専念しているから、伯爵領の政務は国から派遣される代官が行っている。スタンニスラウは下級貴族出身だから、一応領地運営の教育を受けている。本人曰く「やろうと思えば多分最低限の領主仕事はできる」。でもサレンジア伯爵領ほどの規模の領地を治めた経験がないし、国としても彼の音楽の才能を活かせたいから、実際サレンジア伯爵領は国が責任を持って面倒を見ている。スタンニスラウがサレンジアでやる仕事は、二年ごとにSWPOを率いて夏の巡回演奏ツアーくらい。



●ワルマイヤ男爵領

クリューフィーネ家の古くからの領地。ウェンディマール北東の辺境にある。男爵領にしては土地はかなり広いが、ほとんどが沼地で生産力が低いし、交通が不便。領都のオシュトルティンは大きい村程度の規模しかない。


スタンニスラウがサレンジア伯爵になってから、当然領地の中心は伯爵領のほうに移り、ワルマイヤ男爵領は飛び地となった。国が面倒見ているサレンジア伯爵領と違い、ワルマイヤ男爵領はクリューフィーネ家の家令が管理している。こっちは昔からの体制だからわざわざ変える必要もない。



●モラウーヴァ公爵領

モラウーヴァのルーツは千年ほど前に建国したモラウーヴァ王国にまで遡る。全盛期は今のモラウーヴァの三倍くらいの領土を支配していたが、六百年ほど前に内乱によって一度滅んだ。数年後王家の分家筋にあたるカレンデム氏が国を取り戻したが、その頃西のゲルマニクスと東のウェンディマール二つの新興勢力が台頭し、再興したモラウーヴァ王国の支配領域は現代のモラウーヴァ領とほぼ同じになった。歴史書では古の王国を大モラウーヴァ、再興したのを小モラウーヴァ王国と称する。


小モラウーヴァ王国はゲルマニクスとウェンディマールの二強に挟まれて度々戦乱に巻き込まれたが、巧みな外交と侮れない軍事力で長らく地方強権として独立を保っていた。大陸統合会議で神聖オーラニア帝国の成立が決まったとき、そのままモラウーヴァが構成国の一つとして加盟する選択肢もあったが、この機会でゲルマニクスとウェンディマールの国境を整理して問題を徹底的になくすことに周辺国が合意した。最終的に大都市プラーウガを帝国自由都市として独立させ、ゲルマニクスは南のチローヴとスターインマーク二つの公国を吸収、そしてウェンディマールは小モラウーヴァ王国と王室婚姻を結び一つの国に。人種的に見るとウェンディマールとモラウーヴァは大元が同じだからこの外交併合に合意した。戦争で負けたわけでもないから、モラウーヴァは独立放棄の交換条件としていくつの特権を獲得した。特に重要なのは領内の独自の司法権と、領内の貴族の本領安堵、そしてモラウーヴァ公爵の家臣のままでいること。一貴族としてモラウーヴァ公爵の力はいささか大き過ぎるが、東西派閥争いの激化以外、二百年間特に問題にならなかった。



●ウェンディマールの貴族制度

不必要に複雑化してきた称号や規則を一度整理して、簡略化したのが今の貴族制度。


領地を持つ貴族は三階級で分かれている。上級の公爵、中級の伯爵、下級の男爵。(メタ的に言うとこの作品にはそんなに階級の区別が必要とは思えないし、公爵と候爵の発音が同じでややこしいからこんな感じにしました)


領地貴族の称号は所領の地名と爵位の組み合わせ。複数の称号を持つ場合は一番上の称号で呼ぶのが普通。例えばアリアの父スタンニスラウは高齢で引退した先代男爵からクリューフィーネ家当主の座を相続したときの称号はワルマイヤ男爵。後に褒賞でサレンジア伯爵の称号をもらった。これで正式にはサレンジア伯爵兼ワルマイヤ男爵だが、一般的には一番上の称号サレンジア伯爵で呼ぶ。


他にも色々貴族称号があるけど、全部領地なし給料なしの名誉称号。貴族の特権に色々あるがこの時代になると大半はもう意味がない。本当に重要なのは、一族の子女が王立学院に入学する権利(義務でもある)。学院の行政科を卒業できたら優先に役人になれるから。貴族の血筋に魔法の才能を持つ者が生まれやすいから、王立学院の魔法科も特にレベルが高いと知られている。



●楽爵

音楽の領域で大きな貢献をした者に授ける、一代限りの貴族称号。領地がないし給料も出ない名誉称号だが、持っているだけで音楽界隈で活動するときかなり有利になる。国認証の凄腕、みたいな感じで。



●商爵

ビジネスで成功した者が国庫に巨額の金を納めることで獲得する貴族称号。称号は商会が存続する限り一族に相続させることができる。商爵の称号を持つ者は、取引における信用が高いし、国家事業の参入に有利、貿易税で優遇してもらえるなど、色々利点があるが、税金とは別に称号を維持する費用として毎年上納金を納める義務がある。上納金の支払いができなくなる場合称号は失われる。つまり大金で名誉と特権を買い、自分の才覚でその特権を活かせば出費以上の利益を上げられる、というシステム。



●ウェンディマール王立学院

●王都カランカオー公立学校

●カレポリ技術職業学校

王都カランカオーにある三つの教育機関。王立学院は全国の貴族の子女が10歳から16歳まで在籍しなければならない。音楽科の平均レベルは高いが生徒それぞれの家の方針が違うから、意欲が高い生徒と他の分野に手を広げる生徒との演奏技術の差が大きい。それに貴族学校の性格上オーケストラの教育に向いてないから学院オーケストラの実力は低い。


王都公立学校は一般民衆向けの総合教育機関。学費は安くないが成績優秀者には奨学金が出る。すでに就職してる人や王都在住じゃない人向けの通信教育カリキュラムもある。音楽科の教育方針は生徒たちをオーケストラに就職させることが最優先。反面個性が強い生徒の長所を活かせない場合もある。


カレポリ技術職業学校は工業、魔法などの専門技術を学ぶための一般民衆向け学校。設立当初音楽科はなかったが、音楽文化の盛行によって演奏家の需要が増え、三年前ついに音楽科を増設した。



●デビュタント・コンサート

音楽文化が盛行するこの世界で、伝統のデビュタントから発展した新しいお披露目の形式。普通のコンサートとの相違点は、時間配分に主役の紹介や自身が音楽についての想いを語るパートを入れるところ。そのため演奏時間は若干短くなるのが普通。演奏会付つのパーティーという形で開くこともある。


主役が楽器を演奏できる場合、大体は自分で独奏や小編成の演奏を披露する。主役が音楽に詳しくない場合なら、当たり障りないことだけ語って、演奏は招待した楽士に任せる。有力貴族や裕福な商家なら、家の力を示すために一流オーケストラを招くこともある。



●音楽評論誌『王都カランカオーの風に乗せて』

不定期刊。大体は注目度が高いイベントの直後に魔法を駆使して最速で発行する。



●作曲禁止令

ベートーヴェンマニアで知られている皇帝シジムンド六世が、自分が望む形と違うブラームスの『交響曲第四番』に失望したから頒布した勅令。「ベートーヴェンを超えられないからこれ以上やっても無駄、今後一切の作曲を禁ずる」というとんでもない法律が出来上がった。


管理者のワールド設定の都合で一部例外があるが、この法律の影響によって地球の1890年以降のヨーロッパの作品はほぼ消滅した……と思われるが、実際は作曲禁止令に反発する人が少なくない。密かに作曲活動を続けて、閉鎖的サークルで発表したりする。神聖オーラニア帝国の力が及ばない新大陸などでは作曲しても罪を問われることはないが、本来なら交友関係になるヨーロッパ作曲家が歴史から消えたり、帝国からのパトロンを失ったり、副次的影響を受けている。

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