第43話 専属レベラップ用務員さん
「凄いな、ナイコさんは只のブレイバーじゃなかったのか」
痩せたけど超重量級マッチョなダイゴさんは、相変わらず椅子をギシらせカウンターの向こうから身を乗り出す。
・・・しかしヒトの顔ってこんなに筋肉付いてたんか・・・そいやアンチエイジングでカオ筋トレとかあったっけ。
「だから・・・って、ダイゴさんに言うのは初めてか。全部女神エルテの奇跡であたしのチカラなんて毛筋一本分もないからね!・・・まー、只のおんなではあるけど」
「聖下、私には女神との同化を解きながら・・・御身を只の女などと!」
アリーを向き、片口元を歪め笑ませながらのたまう。
「アリ―、今夜はあなたのカラダに思い知らせてあげるわ。女ってのがなんなのかをじっくりたっぷりねっちょりぐっちょり・・・」
「ゴホン、ギルドは公共の場だからね?サバトの相談は酒場でやってくれ」
ダイゴさんから制止された。
「あ、ごめんなさい。あーあ、やっぱり人間て持ち上げられ続けるとダメね・・・すぐ世の中が自分の侭になるって思っちゃう」
あたしじゃなくエルテ様のお陰だからね(ツーンと鼻高々に)!て感じか・・・
「それは兎も角、アリーさんの相談はいったいなんだったんだい?」
アリーは身繕いを正し、ダイゴさんに正対する。
うーん、この所作、さっきから何回も見ているような・・・時間が巻き戻っている??
「位階の開放・・・レベルアップの儀式をギルドで行うようにするべきです。ナイコ聖下の御手によって」
「それは難しい・・・いや、不可能に近い・・どころか、出来ないと言い切れる」
「でしょうね」
否定されたのにアリーの表情は変わらない。
「売僧どもが世俗の権益を手放すはずがありませんわ」
「やはりそこからの話もあるのかい・・・聞きたくはないけど」
「かんたんなこと。吹き払えばよいのです・・・教皇以下すべての愚僧どもの妄を聖下の神威で!」
えっ、あたしが働くの?
「教国……神都エルテナへ、教皇へ会うつもりか」
「なぜ聖下が豚どもの巣窟へと赴かねばならないのでしょう。……き奴等めには、精々気を揉ませてやればよろしい」
フッフ、今夜はその豚どもで散々によがり狂わせたアンタを……あ、あたしの意のままになる豚達を入荷しないと!
当分はセクハラ親父だっつーゲイリー?ズで我慢するしかないか…
「どういうこと……ああ、そこで最初の話へと戻るんだね」
「はい」
アリーは小首を傾げ、清らかに微笑む。
どちゃくそに汚したい……つか、あたしらのこういう可愛さ美しさって、男達の妄想への媚態が基本になってんじゃないのかしら。・・・いや、男意識してるときはまーた別の感じのモーションだけど。
森にすんでいた頃は黙ってるだけで男が餌運んできてくれて、あたしら雌はそんな雄達を鼻で笑ってプレゼントもろともに追い返し、うらぶれ消沈した雄はプレゼントの餌をやけ食いして死んでいった(化石があるっぽい)というのに……
あ、ひょっとしてエルフはそーいう古き良き……
「教皇の軍を相手に……勝算はあるのかい」
「何を他人行儀な」
アリーは笑い、両の腕を広げた。
「勝算はわたくし達ですわ!」
コイツなんも考えてねええええ!!!!!
ダイゴさんはため息をつくと、諭すように語り掛けた。
「アリ―、教会の聖天使騎士団を甘く見過ぎているよ。彼らは・・・」
「その前にダイゴさん、ご自身のステータスを確認なさることををお勧めいたしますわ」
訝し気に眉間を寄せたダイゴさんは、直後何かに気づきを得た様なカオになった。
「そんなバカな、コレは!ホーリーピラーズ、コリドアルディアーク、ゴッズハンマー、
うは、クールな強面に精悍な笑みが広がる。
いまのダイゴさんの顔だけでテキノカンタイが二万隻くらい沈んじゃうのでは?
「では聖下にレベルアップの儀をお任せしつつ教会の不審を煽り聖下の情報を得たき奴等めが異端として神敵認定差し向けるであろう暗殺者と倒滅軍を完膚なきまでにギッタンバッタンに……」
「途中から妄想になってるよ」
「つーか襲わせて返り討ちにしましょうてことでしょ?」
「まさに!聖下の知慧、このアリー感服の至りにございます」
段々とポンコツ臭くなってきたぞコイツ……穢れなく清楚な儚さが消えてしまう前に、はよしゃぶり尽くさなきゃ!
「よし、じゃあボクはレベルアップをギルドで行うように業務体制を整えるよ」
「違和感なく行えるように礼拝堂を新設してくださいませ」
はよ金袋もらって帰りたい・・・つか高級宿探さなきゃ。
SMプレイ・・・地下の拷問部屋が併設されてるスイートがあるとこを・・・やっぱ城?
「そうだな、ナイコさんはご本尊として其所へ詰めてもらおう」
「えー、あたしデビルの報酬貰ったら宿屋のスイートからもう死ぬまででないって決めてんだけど」
「たしかに暮らせるだろうけど、それじゃヒマだろう?」
「女にヒマなんてないの」
今もめたくそ急いでるんだって!
「聖下、き奴等めがレベルアップの儀にどれ程の対価を要求していたかご存じですか」
「知らないわよそんなん」
「金貨10枚か全財産の半分です」
「やるわ」
ククク・・・冒険者どもめ、教会を懐かしく恋焦がれる程に絞りつくしてくれよう・・・
「決まりだね。まあ毎日ある訳じゃないし、平時は……用務員さん的な仕事でもやっててよ、モップがけとかさ」
「ああ、掃除のおばちゃんか」
「まぁ、身もふたもなく言えば・・・ね」
え?異世界転生したのに掃除のおばちゃんなの?
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