第41話 帰還

三人を引き連れて出口を目指す。


「おい、そっちはチガウぞ」


「え?」


妖精の光のしるべは左手のドアへと消えている。


「そのドアはトラップだ。かなりの密度でホコリが充満してて、火を焚いたまま入ると大体二三人が入ったあたりで謎の爆発が起こりさらには抜けた床から最下層へ落とされ大抵は死ぬ」


ピエールさんがフツーなテンションで教えてくれた。


妖精・・・たまちゃんを向く。


「・・・あ~るぅ日のぉ~~~」


前世の歌姫、たまつきなおらちゃんのクリスマスソングを歌い始めるたまちゃん。


なぜそんな歌を知ってるんや・・・



「やっぱ風の妖精に案内頼んじゃダメやよねん」


「俺が先導する。マサトは後ろを頼む」


「ああ、わかった」


「聖下、何卒ご理解いただきませ」


「あーい」


 つーわけで巻きひげ全裸マントおじを先導させ・・・いいんかこんなの前で・・・あたしらは進んでゆく。


「そうだ、ゲイリーはどうした?」


「そういえば・・・新鮮な死体は俺達三人だけだったし、逃げたのか?」


「ゲーリーて赤い鎧の人?」


「聖下、見止められたのですか?」


「あー、部屋に入った時でっかい悪魔と踊っててあーし見たらダッシュで部屋出てドア閉めおった」


「なるほど、女の子を生餌に脱出したのですな」


「見下げ果てたヤツ・・・」


「ふーん・・・そんな男ならアリーもセクハラされてたんじゃない?」


「・・・マサトがいましたから、それほどは」


「なんだってアリー・・・クソ、見つけたら只じゃ・・・」



なんか金属が石畳に転がる甲高い音が響いた。



「ん?なんだこの赤い鎧は・・・ああ、死体か。行くぞ」


「あ、せめてお祈り・・・あっ!・・・いえ、行きましょう」


「憐れなヤツ・・・」



うーん、生き返らせてアリーを嬲るオプションアイテムにするのもいいかもしれん・・・と、毛を一本抜いてマジックバッグへと仕舞った。



それからは特になーんもなく、入って来た地下鉄みたいな入口から出てギルドへと向かう。


「おい、セイバーズじゃねえか!」


「マジかよ、おーい!レプトは倒しちまったのか?!」


「ああ、討伐は叶わなかったが倒されたよ」


「カッコつけんなよ、全滅だったろ」


「ピエールはもう・・・でも、そうね」


なんか大通りからギルド建屋までめたくそ声を掛けられている。

人気者だなぁ。


まぁ、あたしは今回稼いだカネで百日後迄お高い宿屋のスイートでゆっくりするつもりだしもう冒険者なんてどーでもいいや。


すれ違う冒険者たちに、マリオとルイの顔をみとめる。

二人とも、憧憬の眼差しをあたしより頭四つ分は上に向けていた。


(マリオ、ルイ。二人とも、さよなら・・・)


木枯らしが胸の内、打ち捨てられ乾ききった悲しさと寂しさにもはや涙すら出ない死んだひとみで二人に別れを告げる。


リーラ、ミーアとは視線が絡んだが、どちらからともなく他人として黙したまま目を反らし合う。




この世界に降りてから初めての恋が、今終わった。





「・・・ぃ。・・・おい!」


「ん?なぁにぃ?」


あークソだる・・・


「こっちの報告は終わった。お前の番だろ」


いつの間にかギルド内。

カウンターの向こう、ボンタさんだか門田さんだかがこちらを覗いている。


「ナイコさん、三人を連れ帰ってくれてありがとう!・・・実は絶望視してたんだよ」


「いえ、あたしも帰り道わかんなかったんで助かりました。お互い様ですよ」


「しかしなぜそんな深層におりちゃったの?」


「うーん、邪悪な妖精にかどわかされて・・・ですかね」


なんか頭の上でめたくそ頭頂部をパンチしてるがやめてくれ・・・禿げたら悲しいやろ・・・


「ふふ、そうかい。僕にも見えるよ、なかなか可愛い風の精だ」


「あら、じゃあコレってあたしの妄想じゃないんですね・・・さすがファンタジー」


なんか話しやすいやゴン・・・あ、ダイゴさんだ。

まったりほんのりした気分になりかけたとこで後ろから肩をつつかれる。


「なによ」


「ナイコさんほら、魔石出してよ」


「え?あんたらには上げないわよ?」


「いや、レフトの討伐を確認したいだけだって!全く、人を守銭奴みたいに・・・」


「マサト!」


アリーがめたくそ必死にマサトの口をふさいだ。

清楚で従順な美女が必死に遮るその行動の様はアタシを守銭奴だって公表すんのと同じなんだけど・・・まあいいや。


「・・・アリー、あとでお仕置きよ?」


「はっ!・・・な、何卒・・・いえ、どうかご存分に」


「アリ―、済まない・・・とにかく、レフトの魔石を出してくれ」


「あいあい、はーい」


出して・・・重っ!カウンターへゴン置きする。


「あ、あとコレも」


固まってしまったダイゴさんの前に、も一個せんべいサイズの魔石を置く。


「・・・・・ああ、やれやれ・・・先日最古の竜の一柱が持ち込まれたと思ったら立て続けにコレか」


龍の柱?廃材みたいなもん??


え、じゃあこれもゴミ処理場にもってきちゃいけない粗大ゴミみたいなもんだったりすんの??


「あの、粗大ゴミてやっぱ・・・有料ですよね?」


「え?粗大ゴミ?」


「あの、有料ならこちらで処分するので返してください」


マジックバッグなんてあんならゴミや産業廃棄物まで全部自分で処理しますわよ。


「処分?・・・ああ、クリーンセンターの・・・違うチガウ!しっかり報酬は出すよ」


「でも廃材・・・竜のハシラがどーとかって」


「ああ、この世界は創世の伝説に五竜が登場するんだけどね、それを一柱二柱と数えるんだよ」


「あー悪魔のやつみたいな・・・」


「それそれ、ソロモンなんたらってヤツと同じ」


「ちなみに、いかほどざんしょ」


「そうだな、古代竜には金貨五袋を出したんだけど・・・」


金貨?!


マサトが身を乗り出して割って入ってくる。


・・・今重要な金勘定中やぞ!金貨じゃあああああ!!おまえにはやらんぞ!!!!五袋?!


「そんなことより、レフトで間違いは無いのか?」


「ん?・・・ああ、えーと」


ダイゴさんが冒険者カードとか発行する黒い機械を取り出し、座布団魔石に当てた。

それより五袋てどんな袋??


「・・・アグェリアルレップ・・・レフトで間違い無い。やったな」


マサトはため息を付き、返事を継いだ。

それはともかく袋のサイズを聞きたい!


「ああ・・・いや、倒したのはナイコさんだろう。おめでとう」


「・・・うん、よくわからんけどありがとう」


別にそんなつよつよって感じのロボ・・・じゃない、モンスターて感じじゃなかったし、今のマサトを見る限り・・・コイツなら千体万体いようと草刈りのように刈っていけそうな気がするんだけど、雰囲気的に「やったな」「ああ」て感じだし流されておこう。


ああ、そうだったのか!


「あのさ、あんま強くなかったし・・・あんたらとの戦闘で消耗してたんじゃない?」


「聖下!それは・・・・・過分すぎるご配慮に御座います!」


うーん、アリーはもう下僕のイエスマン・・・イエスウーマンて感じだしあんま信用できん。


「まあマサトとアリーの後俺も瞬殺されたし、それなりに削れてたなんて印象はなかったよ」


ピエール髭マントおじが冷静に語る。


「そーなん?・・・なんか納得いかないわ」


「ふ、悪魔を祓いし者の勇名を譲ってもらうわけにはいかないよ」


マサトが爽やかにほほ笑みながら言う。


「・・・マサトはちょっとどっかで剣を振って来たほうがいいかもね」


したらそんな勇名も何もあんたの力をを飾るにはまるで足りないってわかるでしょうに。


「そうだな。ピエール、行くか」


「おいおい、ちったあ休ませてくれよ」


「じゃあ酒場からだ!」


「そうこなくては、な!」


男二人が肩を組んで出てゆく。

・・・うーん、眼福じゃ・・・・





「ダイゴさん、教会のことでお話が」


アリー?

えー、はよかえってあんた虐めたいんだけど!

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