第40話 天使
「え?やりかたしんないけど・・・」
「は・・・しかし、わたくしは聖下の啓蒙によりこの身を縛る何かより解放されてございます」
「けーもーて・・・ああ、神聖魔法の開陳で・・・え?適性無い奴はムリなんじゃないの?」
「そこで、教会の者達・・・唾棄すべき背徳の者らでございますが、き奴ら目の仕業を・・・業腹でございましょうが、真似て頂きとうございます」
何故か地に顔を伏せるアリー。
「いーよ別に」
「聖下に感謝を」
せーげせーげいってっけど、せいげてなんやろ・・・
「で、どーやんの?」
「マサトの頭に手を置き、目覚めよ・・・と申してください」
「あーい」
マサトがアリーに目を遣りながらぎくしゃくとあたしへ跪いた。
ふっ、と笑みが漏れてしまう。
「アリ―大切にしてんのね。いいわぁそういう男」
あっ、なんか今のセリフって恋人を人質にした悪役令嬢みたいw
「こんなのふつうだろ。おまえにはいないのかよ」
「居たことはあるけど・・・」
やっぱ思い出すのは旦那5かな・・・
「今はいないとか、ずっといないヤツの典型的な言い訳じゃないか」
「ああ、そういやそうね」
自分の思わぬ言い訳に吹き出しつつ、目の端でおどおどしてるアリーを見止める。
ああ、マサト止めようとするとあたしにオトコいないのを憐れむ形になるから遠慮してんのか・・・なんという臆病さ・・・めたくそ凌辱したい!!!!!!
などと妄にふけそうになるのを抑えながら、マサトへと手を伸ばす。
「さっさとやるわよ」
「・・・頼む」
必死なアリーの手前か、殊勝にも跪きあたしへと頭を下ろし向ける。
「マサト、目覚めよ・・・全てを解き放て!」
旦那5を回顧してた所為か、なにかのアニメのセリフを続けてしまった・・・
「うわっ!」
マサトの吃驚に向くと、奴ももれなくレベラップエフェクトがめたくそに炸裂し始めた。
「・・・長いわね」
「どこまで・・・あ、聖下のお言葉では98でしたか」
「うん、そー書いてあった。ヒモと一緒に」
あ、おわったっぽい・・・何?!
弾ける天使の輪のエフェクトが終わった後、突然マサトに光の柱が立ち、虹色のオーラが降り注いだ。
『光の女神ソラリスが使徒、聖戦士マサトが誕生しました』
それなりに神々しさをブッた女の声があたりに響き、マサトはぬらりおもむろに身を起こした。
聖戦士マサト・・・思わず吹き出しそうになり腹筋へ力を籠める。
他の神のヤツとはいえ、聖戦士さまを・・・くっ、何も考えるな!言葉の思考を止めろ!神々の戦争の
「天使ナイコ、女神エルテを共に感謝を」
「あー、感謝はエルテだけにして。あと天使はアイネル、あたしはその使徒?ね」
「しかし、この身のくびきを払ってくれたのはナイコだ」
「フ、何言ってんのよ。アニーから話聞いてないの?彼女のカラダを貰ってんだからそれで終わりって話よ」
ぐふふ、と下衆い顔で笑ってしまう。
「アリ―・・・」
「いいの、マサト」
二人は手を繋いで頷き合う。
ええねええねや・・・アリーいじめるときコトバ攻めでこのシーン回想させてアリーの切なさをぎゅんぎゅんに煽り倒して白く清い少女の聖域をめたくそ汚し尽くしてやろう・・・ぎゅひひひ・・・
「じゃあマサトはあの魔石持って。冒ギルまで運んでもらうわよ」
「魔石はお前のマジックバッグに入れた方がいいだろう、なぜ俺に持たせるんだ」
「まじっくばっく?・・・てなに」
「容量無限の異空間みたいなもんだよ、ほら」
マサトが手を振ると、とてもでっかい剣が空中から出現した。
「はえ・・・じゃあコレも」
マントの下、コートのハンドウォーマーからせんべえ大の魔石を取り出し、なんとなくマジックバッグ的なものを想像しながら・・・あ、これがマジックバックか。
意識するだけで手にある物を放り込めるようになった。
でかい魔石もすっ、と入ってゆく。
「・・・・使えるようになってみればなんかとーぜん・・・て機能ねコレ」
じゃー帰るか。
妖精の導き、輝く光の粒を追って脚を上げる。
「聖下、お待ちを」
「なーに?」
「この者、ピエールの復活をお許しください」
足を止め、アリーを向く。
なんかピエ~ル、て感じの巻きひげの男の首が掲げられていた。
「うーん、どうしよ・・・アリーはもうエルテの信徒で神より神聖魔法を与えられているのだから、あなたの欲求は我が主エルテの意思と覚えなさい」
覚えろ、でいーのか・・・心得よのが相当なんかな?
まーいっちゃったしいっか。
「聖下・・・お導き、幸甚にございます」
通じてんのかな・・・
「ピエールよ、女神エルテの奇跡により復活を成さしたまえ・・・リザレクション!」
あ。通じてたわ・・・
あたしらブレイバー達だったら「自己責任になんならやめとくわ」で終わりだもんな。
旦那4がやってたネトゲとか「PT誘ってください」ばっかで自分で集めりゃ直なのにとかブチブチ文句言いながら旦那4もあたしも何時間も誘われ待ちしてた・・・ああ、パーティてそのパーティなんか。
そして全裸巻きひげおじが大地に立った。
「む・・・ん?レフトは?!」
レフトてなんじゃろ・・・てあのジャイアントデビルか。
「消滅していた。たぶん、ナイコ・・・この女の子、ブレイバー・・・天使か?が処理をしたのだろう」
マサトが答える。
なんでレフトなんじゃろ・・・左に曲がってるから?ナニが曲がってるの??
「マサト?!アリーも・・・無事だったとは」
あ、皮つきだ・・・しかしなげーなコイツも・・・
「ピエール、とりあえず何か着て。靴も履いて」
しかしほんとコッチの奴らてガキもおじもみんなムキムキやよね・・・うーん、眼福。
「お?なぜ俺は裸なんだ?」
「いいから、はやく!・・・ちょっと、なんでブーツとマントだけなのよ!」
「この方がアーマークラスが上がるんだよ」
「おまえは一体どこからそういう俺らブレイバーの雑な知識を拾ってくんだよ」
ああ、いい仲間たちだな・・・ダンナ4が入ってたクランも初めはこんな感じだったのに、あたしが・・・おっと、愚痴と後悔は止めておこう。
ここはゲーム的な世界だけどゲームじゃないのよ。
何回も死んでるしね!
・・・あれ?なんかおかしいな・・・
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