第39話 れべらっぷ?

「マサト、ごめんなさい。あたしはもうあなたのモノじゃないの」


「え?どうしたんだ突然」


力無くジブンの胸を突いて身を離したアリーにマサトが戸惑っている。


「それに・・・御前です。ふしだらな行いは控えて」


「御前って・・・え?この女の子が?」


マサトがあたしを見る。

うーん、美青年に見つめられて赤面してしまう。


「我が女神エルテの僕、天使アイネルが使徒・・・ナイコ様よ」


アリーがあたしへと傅くように身を寄せ、膝をつき控える。


「我が女神って・・・教会の者か?アリー、洗脳されたのか・・・?」


マサトの目に剣呑な光が差す。


「違うわ、エルテの・・」


「そうね、洗脳と同じ・・・教化の為のイニシエーションてヤツを施したわ」


ちんこの皮は切らないから安心して。

マジこの世界ほーけーしかいねーからな・・・なのにみんなめたくそ凶悪なカリで・・・

あたしはポッと熱くなった頬をおさえ恥じらいつつもアリーを遮り、マサトへ向かって肯定する。

そうそう、マサトだよマサト。正男じゃなかった。


「ナイコ様!・・・」


「いいの。あなたも自分を振り返って見なさいよ、わかるでしょ?」


「・・・はっ!身の不明、汗顔の至りです」


マサトは跪いたまま頭を下ろすアリーから怒りのまなこをあたしに向ける。


「アリ―に何をした!」


「あら、それよりもアリーがあなたに何をしたかを聞くべきではなくって?」


ふふん、と嗤い、無知を嘲るようにアゴを上げる。

・・・身長差があるからかな~り間抜けに見上げるカタチだけど。


「?何をさせたんだ?!」


聞くだけしか出来ないコドモかよこの男・・・


「聞くだけじゃなくて少しは自分と状況を見て考えなさいよ。そんな素っ裸な成りでなにも思わないの?・・・アリーは裸ブーツだけど」


赤面し顔を再度伏せるアリー。

・・・・むちゃくそ辱めたい!!!!!!!


「そういえば・・・俺は確か、アリーを庇ってレフトの轟拳に」


うーん、ながいブツぶらぶらさせたままのろのろ会話すんのも間抜けだよね。

・・・あ、こいつムケてるわ珍しい・・・


「ちょっとさ、あんたとアリー、服とか着てよ。待ってるから」


「はい、速やかに身を整え戻ります。マサト、いこう」


「え?でもこの・・・女の子は」


ん?ああ、自分をゲームマスター、この場の主人と勘違いしてんのか。


「べっつに逃げないわよ、この石もあなたに運ばせるつもりなんだから」


足元に降ろしたレフトなんちゃらって巨人デビルの魔石を蹴る。・・・痛い!


「なっ、その魔石は」


「マサト!はやく来て!」


マサトはあたしとアリーと魔石に忙しく視線を彷徨わせ、言った。


「ここに居てくれよ?訊きたいことが沢山あるんだ」


「あーい」


名残惜し気に魔石へと視線を落とし、彼はアリーが装備を拾い始めたホールへ駆けていくのであった。



どちゃくそデカい魔石に座り込み、肩の上でキラキラしてる妖精ちゃんに語り掛ける。


「人間も三人そろったら娑婆臭いやり取りばっかで疲れちゃうよね」


なんか腕を組んでうんうんと頷いている妖精ちゃん。

なんもわかってないんだろうけど、めたくそあたしが欲しがってるアクションで笑ってしまう。


「名前欲しいね・・・うーん、なんにしよっか」


妖精ちゃんはスイカの種のようなつぶらな瞳をあたしに向けて首を傾げている。


「そうね…あたしの最終住所が埼玉県だったから、埼玉の妖精でたまちゃん!でどお?」


ネーミングは雑だけどかわいくね?と妖精ちゃんを向くと彼女(?)はあたしの肩から飛び立ち強く光を放ち輝き始めた。


「我はたまちゃん!風の女王より命の使徒へ使わされた空の眷族。天使ナイコより名を頂き個としての思考得た!」


一回り大きくなった妖精が目を光らせながら喋った。


「知的レベルが上がった?!」


たまちゃんはあたしの頭上で一回転すると叫んだ。


「パイルダーオーン!」


は?


「ゆけ!天使ナイコよ。愚劣極まる唾棄すべき不逞のヒト属を皆殺しにするのだっ!」


「知的レベルが低い?!」


つーか人族てエルフもやろ?

あれ?妖精族だっけ??

いったい何のノリで話してんのかわからん・・・ダンナ5と3みたいやん。



そんなこんなでたまちゃんと遊んでいる内に二人が戻ってきた。


「ナイコ様、お待たせいたしました」


アリーの声に向くと、二人とも血塗れクソまみれの装具を着用し新たなる汚臭をめたくそ振りまきまくっている。


「・・・水の精霊よ、この二人洗濯して」


すかさずマサトが抜剣仕掛けるが、アリーが素早く剣柄を抑える。

そしてその間で洗濯魔法は発動し効果を完了した。


アリーすげーじゃん、マサトをとどめる動き見えなかったわ・・・


それは兎も角、二人の汚臭はその身にまとった汚物と共に消滅した。

この魔法、速い!安い!めたくそ便利!


「アリ―、あなたもこの魔法を習得なさい」


「は、かしこまりました。・・・厚顔ではありますが、どうかご教示ください」


あっ、習得できんのかこいつ・・・


「うーん、精霊魔法って聞いてなんかアタマに浮かばない?」


「精霊魔法・・・いえ、特には」


レベラップ風のエフェクトも出ないか。


「アリ―に精霊系の適性は無いよ。それよりコッチの話が先・・・いや、先ず礼を受け取ってくれ」


「なに?男女平等パンチでもするの?」


旦那5の蔵書に拳で応じた女を打倒した後、血塗れで地に付した女に気拙い顔でのたまってた漫画の一コマを思い出す。

アニメの方ではめたくそドヤった得意満面顔で言ってて笑ったが・・・懐い。


「よくそんな言葉を知っているな・・・いや、アリーを救ってくれてありがとう」


そういうとマサトは深々と頭を下げた。


「あら?あんたブレイバーなの?あたしもなんだけど」


「ああ、そうだ・・・なんだって?!」


懐から黒いアレを取り出す。


「ほらほら、コレが冒険者カード。銅の下らしいけど、まーあたしじゃそんなモンよね」


「ブレイバー・・・確かに、いや・・・アンノウンばかりじゃないか」


正男はカードを無視してあたしを嘗め回すように見てブツブツ言っている。

・・・ので、所在なくカードをしまった。

なんやちょっと変わったカードぽいから同郷ヤツに自慢したかったのに・・・


「アリ―、なんかあんたの男の視線がうざいんだけど」


「は、とんだご無礼を!ちょっとマサト、女の子をそんなじろじろ見ないで!」


「あ、ああ済まない。でもコレはブレイバー同士の挨拶・・・ほら、犬が肛門を嗅ぎ合うような、そんなアレなんだよ」


なんじゃそんなアレって。


「君もステータスオープンは使えるんだろ?・・・アリー、ブレイバーは相手のステータス・・・身の上や来歴を見ることが出来るんだよ、だから決して邪な視線をこの女の子に送ったわけではないんだ」


え?そーなん?


「しらんかったわ・・・じゃあステータスオープン!」


「いや、叫ばなくても・・・」



マサト・シン・エガナミーツ 本郷路正人


 光の神ソラリスに人を救う勇者として招かれた転生者。


状態・Leashed


戦士Lv36(98)


STR 107(215)

DEX 96 (198)

VIT  120(241)



「あー、なんかズラズラ出てきた・・・」


「レベル36の戦士、だけ判ればいいよ」


「36なの?なんか(98)とか出てるけど」


「そんなバカな」


「でも状態リーシュ・・・てヒモって意味だっけ?(www)アリーも大変ね」


ヒモwww好青年て感じなのにめたくそ意外ね・・・


「そのことで、聖下に是非お願いしたき儀がございます」


アリーがあたしの前で両のヒザを着き、組んだ両手を胸前に上げ祈るようなポーズを取った。

美少女がコレやるとマジでハマるわ・・・




「何卒、マサトにレベルアップの儀式を行って頂けますようにお願いを致します」



・・え?知らないよそんなん・・・・・

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