第38話 まほーの理

「どーでもいーけどいいかげん名前おしえてよ」


もー直截に要求ですわ。


「わたくしの名はアナスタシア、二コラの娘です」


あーロシアの・・・


「スターシャ、ナスチャ、サーシャ・・・どー呼べばいいの?」


「アリ―でよろしくてよ」


「男っぽ・・・くもないか。でもソレてアレクサンドラの略称じゃないのん?」


「父二コラはわたくしをそう呼んでたのです。母に似てるからと言って」


寂しげに美しい面を伏せるアリョーシャ。じゃない、アーリャ・・・ちがくてなんだっけ・・・秒で忘れてしまうとは。


うーん、なんなんだこの隙あらば美少女ムーヴをかましてくる謎の生物。


「ナイコ。あなたがわたくしを生き返らせてくださったのですね」


なんか決然とした風であたしを見ながら看破しおった。


アンタじゃなくてルイに解って欲しかった・・・『ニナ、お前が俺の腕を・・・』『ルイ、違うの。これは女神様の奇跡であたしの力なんて・・・』『その奥ゆかしさ、なんという清らかな心根だろう・・・ズタズタに汚し尽くしたい!!!!!!!!』『あ~れ~(婆感)』


「・・・イコ・・・ナイコ様!」


ひとりぐふぐふ笑うあたしは妄想から引き戻されてしまった。


「はあ、なんすか~~~」


もーなんなんこの女・・・いいトコロだったのに!


「どうかお答えくださいまし。あなた様がわたくしを生き返らせた、それも体の一部から・・・全てを!」


この女、いつのまにか自分の頭を拾って抱えておる・・・。


「あのさぁ・・・人の身でそんなことできるわけないってわからないの?」


出来るつったらぜったい男・・・正男だっけ?生き返らせろとか言うやんね。

んであたし放置していちゃらぶしながら魔石かっぱらって・・・あ、ついでにあたしも殺して帰ってくだけやん。


「しかし、私は生き返っております。このように!」


「あんたが生きているのは女神エルテの奇跡によるものよ。なぜわからないの?」


ほんまじ、人間て一回くらい死ねば神の奇跡が自分だってわからんもんか。


「エルテ・・・生命の女神の名ですね。あたしたち冒険者からお金を巻き上げひたすらに肥え太る光の女神に続く腐肉臭き不浄の神」


じわっとあーしの目から水が漏れてしまった・・・なんなんコレ、信仰心のせい?


「あなたの心底が知れました。どうやら、私を救った術士は最早去ったようです・・・奇跡を演じ私を勾引かそうとした罪は許します。去りなさい!」


「はーい。あ~あ残念だったわぁ!」


なんじゃこの女使えんのぉ!


身を返し、やっぱ自分で運ぶしか無いのかと座布団みたいな魔石を拾い上げ歩を進める。

重い・・・


「なっ、その魔石は?!」


光の速さで地球がヤバ・・・あたしはアリーを向いて言った。


「コレの所有権を主張したら、殺すわよ」


口では宣告の形を取りつつも、既に殺す気満々でホーリーピラーの詠唱(誰がしてんんねん・・・)は始まっており、光の鱗粉が周囲より立ち上り始めている。


すごい・・・カネが絡むと人間(あたしwww)てここまで酷薄になれるのね。

もはやアリーのことは軽く気ままに叩き潰せる害虫にしか見えない。


しかし女・・・アリーは腰を抜かしてへたり込むと、めたくそに怯えた風に座したまま後退っていった。


器用な女じゃ・・・


魔法の作動シーケンスを保留し、扉に向かう。

・・・あー!あの扉どーあければいいねや!!!


もういいわめんどくさ。



「ホーリーハンマー!」



巨大な光の柱が打ち下ろされ、扉は何かに叩き潰されるような金音と共に一瞬でぐしゃり変形し、消滅した。・・・あれ?呪文てハンマーじゃなくなかった??ピローだっけ?



まー作動したしいいわぁ。

そしてあーしはしつこく落ち始めた抜け羽の只中鳩フンを警戒しながら・・・てハトじゃねーよ!天上系演出のなかそのホールを出たのであった。


「風の精!出口よろー!!!」


しれっと同じキラキラエフェクトが暗く冷たい石の通路に伸びてゆく。

そして何の臆面もなく再びきらめきが妖精の姿をとり、あたしの肩に腰を下ろした。


「あんた・・・今度こそ間違わないでよ」


妖精は媚び媚びであたしの頬にすりすりしてくる。



「お待ちください!」


絹を裂くようなエロ金切声であーしらの横を抜けアリーが目前に跪いた。


まだブーツしか履いてねーのか・・・エロすぎやん!

布靴とサンダル()だけで嬉々として萎えることなくひたすらにあたしを犯し続けたあの二人の嗜好がなんとなく想像できてしまう・・・


「これまでの御無礼、わたくしは打ち殺して頂いて構いません!ですから、どうかマサト・・・この男だけでも蘇らせてください!」


身を伏し、両手に持ったマサト(仮)の頭を高々と捧げている。


「あんた殺したってその分疲れるだけでなんのうるおいもないんだけど・・・」


「お支払いできるのはこの身のみ、どうか、どうか・・・」


ブーツのみでゲザってる白い美少女にムラムラとよk・・・電気的な振動の高まりを強力に感じ始めてしまった。


「ぐふふ・・・そうよな、ではアリーよ、面を上げい」


両の赤いまなこに涙を湛え、あたしを仰ぐアリーの細い顎先を指で持ち上げる。


「その男を・・・いや、我はエルテの僕、天使アイネルの使徒であるがゆえ奇跡を取引につかうことは無い。ただ、そのほう・・・アリーよ、汝の献身をことさらに跳ねのけようとは思わぬ・・・」


ねっとりといやらしく語りながら、アリーのアゴに当てたユビをその細い首から鎖骨、胸へとなで降ろし・・・白いふくらみに勃ち上がった桜色の先端をつまむ。


「のう?我が何を求めているのか・・・わかるであろ?」


「はい。このような身でよろしければ、いかようにも存分に!畜生と咬合わされようと命の限りにお仕えいたします」


えーめっちゃいいじゃんそのプレイ!


「よい心懸けだ・・・」


おっと、ヨダレが・・・


「私はヒーラー、回復のクラスなので雑に使って頂いても・・・ナイコ様の仕置きに耐える自信があります」


は?じゃーあんたが生き返らせろよ・・・いやいや、恩を着せて肉人形にするのよ!


「・・・先ほど、我が神を腐肉臭き不浄の神と申したな」


「はい、確かに」


「そちの妄を祓い蒙を啓く。この言葉を復唱せよ・・・神聖魔法」


「神聖魔法・・・あうっ!」


エロ声でびくんとなったアニーの頭上に光の輪が弾けまくり始める。

ほんとなんなんコレ・・・・



某男爵と同じくらいびくんびくんしたあと、己が身を抱きしめ呆然とする白い美少女。


「どう?魔法あるっしょ?蘇生系とかで」


「神聖・・・女神エルテの慈悲による奇跡を、この者の命へ・・・体と精神を復活なさしめたまえ・・・リザレクション!」


うわー本職?だけあってめっちゃソレっぽい!全裸ブーツだけど・・・


光の柱と天使の羽が降り、アリーの手の中のアホ面で目を剥いた正男・・・だっけ?の体が復活を始める。


出現したのは、茶色い髪の非の打ち所のない美青年・・・て感じの男だった。

中央アジア系の・・・なんつーの有色白人(なんそれ・・・)みたいな顔の・・・完璧な白系美少女アリーと並んでもお似合いだよね以外の感想が無いくらいのヒゲの無いイケメンだ。


甦った体がふわりと着地し、目を開く。


「ん・・・ここは・・・アリー?」


「マサト!」




二人は抱き合い、強くお互いを求めたのであった・・・・・裸ブーツだけど。

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