第35話 ぼっち中層

気がつくと目が見えず、めたくそあせった。


「あああああ!!!!!キュアキュアキュアキュアキュアオール!!!!!」


テンパって全部を指すallのオールをつけてしまい自分がめたくそ発光しまくって死ぬかと思った。


つーか見えるじゃんね。


「ライト」


光源もないのに周囲が明るくなる。


……いや、ひょっとしてあたしが光源なんじゃね?


「ちょう真面目で学級委員長気質の風の精よ、光をねじ曲げ我にこの身姿を届けたまえ」



目前にほんわりと顔の半分を赤黒い血で染めた女の子が現れ、あたしはヒッと息を飲んだ。


……ああ、吐いた血か。


風鏡…つーの?を二枚にして背中もじっくりと点検する。


マント、コートに鎧も貫通し、コート裏地の白シャツ部分にベットリと血が広がっている。


「えええ・・・お姉さま手づがらに選んで頂いたコートがぁ・・・」


まほーでなんとかなんねーのかコレ……


「麗しき水の精霊達よ、コート洗濯してちょーだい」


あ、フェルトっぽいし不味いかも……


空中にキラキラ光るクリオネ達が現れ、先を争うように広げたコートの血の染みに殺到してゆき、あっつーまに染み抜きが終わってしまった。


ナニこれめたくそ便利じゃん!全然濡れないし。


つーかシャワーよかコレで全身洗った方がよくない?


というわけで、した。


めたくそよかった。


・・・んが、湯あみの心地よさが無いのは寂しい。

まぁ身綺麗になった所で心機一転!

ザバス達が……いやザ行じゃないんだよなんだっけ……いやもーザバスでいーよ、奴等が喜んでたデビルなんとかを探すべく臭くて小汚ないこの迷宮をさ迷う。


沢山狩って数ヶ月はあのおじの酒場で食っちゃ寝したい。


……いきなりいた。

めたくそでかくて広い、カニみたいな赤い背中が曲がった通路の先にあった。


一息に飛び込み、ヒトなら心の臓があるであろう剣を……あれ?


あ、右に差し直してたわwwww


振り返らないのを良いことに間抜けさを仕切り直してゆっくりと抜刀してデビルの背中へと突き込む。



コーンフレークか?

てくらいのかーるい手応えに、思わず腰の入らない突きを立て続けに入れてしまう。


デビルはぶるり震えると、そのまま向こうへと倒れた。



・・・え?弱すぎでは?


消えると大判どら焼きのような魔石が残った。


「でか・・・え?コレ持って歩くの??」


めたくそにやる気が消沈してゆき、帰宅を決意するまでに時はかからなかった。


え、でも道わかんないよただでさえ迷路()だし・・・


「風の精よ、この迷宮の出口までの道を示せ」


なんでもかんでも風の精に頼りすぎなのでは?

・・・しかし特に文句を言うでもなく、不思議な煌めきが伸びてゆき、輝く緑の軌跡がこちらへ進めと導いてくれているような気がする。


「ふむ、感心感心・・・じゃない!ありがとうおまえ達」


沢山の光の粒が集まりちいさな女の子の姿になって、あたしのアタマの高さへ滞空する。

あたしは手で慈しむように妖精をつつみ、頬に寄せた。

お互いに好き好きの波動・・・なんじゃそれは・・・みたいなものを交感し、手から放つ。

妖精はそのままあたしの周りを漂ったり肩で羽をやすめたり、やりたい放題状態に落ち着いた。


……あー、ちっちゃい頃はこんな友達がいたら、なんて妄想してたっけ。

恐ろしいほど遼遠に思える過去のジブンを反芻しながら軽快に歩を進める。


マジで脚が、体がかるい!

こーんな臭くて暗い地下鉄…じゃない下水……あれ?そいや下水臭いぞ?


無論あたしの下のハナシでは……


「あれ?」


なぜか道の先は開きかけた大扉で終わっている。


「風さん、来た時にあんな扉なかったよね?」


妖精は喋らず、あたしに顔を向け楽しそうに踊る。

近道なのかな?


つーか、なんだあの扉……めたくそデカイんだけど…

ダンナ5と3が見てたアニメのロボットが出たり入ったり出たり入ったり出たり入ったり出たり入ったり出たり入ったり出たり入ったり出たり・・・出来るんじゃないかってくらいおっきい。


もやもやムラムラと電気的な発振の高まりを抑えつつ、風の案内の煌めきが続く扉の隙間・・・つーかあーしが五人くらい横に並んで通れる間を抜け部屋を見渡す。


・・・なんで地下にこんなクソデカい空間があるのよ。



そしてその空間の空間では、闇色に暗く輝く巨大なデビル系の魔人が黒い蝙蝠のような巨大な羽を広げて踊っていた・・・いや、地面にパンチとかして・・・いや、足元で動き回る虫を・・・て。


「あー、戦ってるのか~・・・ん?」


なんかゆっくり・・・でもなく近づいてくるんだけど。


虫に見えた男がこちらへダッシュで走って来た。

赤い全身鎧に両手斧のめたくそ強そうな・・・顔見えんからあとはわからん。

ヘルメットの隙間から覗く血走った目が一瞬あたしを見たが、すぐに横を走り去って扉の向こうへ・・・あ、閉まってく・・・すげえな、重機じゃなきゃ動かなそうな鉄の扉を・・・って、え?


振り向くとデビル巨大魔神があたしに向け足を振り上げ?ていた。


「はわぁああああ!」


おもっくそ前に向かって走る。

けっこう余裕あるタイミングで後ろからドーン!て音と振動がやってくる。

つーか振動が激しくてコケた・・・


「ひゃぶっ!」


縦にバウンドする地面()を思うように手でとらえられず不十分な前回り受け身で立ち上がりデビルを向く。


後ろのでっかい扉は完全に閉まっていた。


「あの赤い奴・・・」


あたしを囮に・・・やるじゃん!


「千回死ねぇえええええ!!!!!!!」


PTAかなんかで子供に死ねという罵倒語を教えるなというチラシだか集会だか飲み会でかなり強い要請を百年くらい受けてたような思いでが蘇りかけるが、再度振り上がってる巨大デビルの脚踏み攻撃の予兆でそれどころではない。


あああ右か?左か?

巨大な足が迫る!


「ダァアアアアッシュ!」


前に走る。


そしてジャーンプ!


ずどん、と音がして床・・・石畳か?めたくそ平らなんやけど・・・の上の石とかゴミとか汚物とかあらゆるものが跳ね上がる。


振動を警戒しヒザを柔らかく、体全身で吸収できるように・・・て、やっぱコケた。

振動する石床に着地なんて無理やろ!


でも今度はダメージ無く前転後は素早く立ちあがる。


マジで落ちてる刃物とか石とかにあたんなくてよかった・・・


デビル巨人がゆっくりと振りむく。


でかくて黒い蝙蝠を羽を広げ、なんか怪しい歌を唄い始めた。

デビルの周囲に禍々しく輝く黒い球体が五個くらい?浮かんでなんか闇系の邪悪っぽい映像演出で極まってゆく。


え?コンテ指示みたいな雑な解説すんなて?


んなコトゆわれてもおばちゃんわかんなーい!



「光の精霊達よ、あっちに負けないくらい神々しくてめたくそ強そうな演出がある魔法であのデビルぽいアホ(語彙・・・)を抹殺して」


あたしのちょう高度で純文力一万パーセント()な呪文の詠唱が終わりかける辺りから周囲に金色に輝く光の粉が立ち上り始めデビルの頭上に天より細い光の柱が降りてゆく。


スポットライト?


その柱の数は次々と増えてゆき、青い闇の炎を纒った黒い球体を次々と貫き、霧散させる。


光の粉はどんどん増え続け、光の柱もどんどん増えてゆき、その柱に貫かれまくってる巨大デビルはめたくそに狂い悶えている。


・・・ん?いつまで続く・・・あ、極め台詞言わんといけないの?




「えー、そんなんわかんないよ・・・とりあえずホーリーピラー!」



全ての音が消え、天より迸り落ちた巨大な光の柱がデビル某をその場から消滅させた。

そんでなぜかまぁた雪のようにハトの羽が・・・・・


「ああ、ハトじゃねーよ・・・」


天国系の鉄板演出じゃんね。


白人文化の刷り込みでもーなんか光って羽が落ちてきたら体液全部ウレション状態で垂れ流しながら狂い悶えるというイニシエーションを行われてしまってんのよねあたしら・・・って、ああ・・・一部洗脳が解けたからハトだの落ちフンを警戒してしまったのか、納得。




感動(洗脳)を返して!


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