第31話 ザ・ラビリンス
迷宮と言えばココだぜ、なんて通りすがりのおじから定冠詞付きで案内されたのが此処、ペドロッキ地下迷宮であった。
あたしのマントの下、フェルトコートの隙間からちらりちらりと覗く生足を清々しいほどにガン見しながらおじは得意満面に案内してくれ未練たっぷりな顔で去っていったのであった。
股を開くのに愛が必要とか体裁ぶるつもりは無いんだけど、若さなのかなぁ……善田さんの時からそうだったんだけど、肌を合わせるのにどうにも臆病になってしまっている気がする。
いあいあ、やっぱ最低でも屋根とベッドは必要だっつーの。
「おいねーちゃん、こんな所に独り立ってちゃあぶねーぞ」
特に襲うそぶりもなく、むくつけき大男達がドカドカと石畳に鋲打ちの(たぶん)靴底を鳴らしながら通過してゆき石で組まれた地下鉄入り口って感じの穴に降りて行く。
男達の臭…匂いが消えるのを待ってからその後に続きダン☆ジョンの入り口をくぐり階段を降りて行く。
石で組まれた階段は、あたし程度の体重ではわずかにも揺らぐことなく、この身を地下へと誘ってゆく。
「くっせーな……」
街中のし尿の臭いではなく、洗ってないマン……ドブ的なクサさに眉がよってしまう。
つーか、暗い。
立ち止まってるとモヤ~ンと周囲の石組が判るほどには明るくなるのだけど、足を進めた数秒はもー真っ暗闇の中って感じですわ。
ひょっとしてハンドライト的な何かが必要だったのではないだろうか。
いやもーあきらかにそうだから!
「はぁ~魔法でなんとかならんのかな……ライト!」
明るくなった!すごい!!
右とか正しいとか色々同音異義語があんのに的を得た……当を得た、だっけ?効果が発現してくれるなんて、まじめちゃファジー(若いヒト通じんのかコレ)やんねんねえ。
光に照らされたソコは、暗くじめっとした古代のお墓・・・地下の石室へ続く回廊て感じのイヤンな場所だった。
帰りたい。
お姉さまの部屋へ。
ああ、でも今は情事の真っ只中じゃん(たぶん)いけないわ。
そう、男もいない内からこの身を散々に食い散らかされたこのあたしにはこんな場所をさ迷うのがお似合いなのよ……
などとうらぶれ気分でダラダラと歩んでいると、どっかから子供の足音が聞こえてきた。複数……
「ひぃやぁああああ!!!!!!お化けはダメなのよぉおおおおーーーーーーーー!!!!!!」
石畳に反響する不気味な足音に追いたてられ、逃げる。
来た道をひたすらに。
足音は駆け足となり、そしてあっさりと遠ざかった。
えっ?
振り返ると、遠くからコチラヘ向かって健気な感じにぱたぱたと走ってくる小鬼達が見えた。
なんだ、奴等か。
コートを捲り、剣をカッコ良く抜き放…ちはせずに、ゆっくりと引き抜く。
いや、刃が付いてんの思い出したわアブねー……後で右に吊るし直そう。
えーっと、迫る相手には引き足で突き、はぁいポイント!と審判を待つ間もなく二匹、三匹と突き四、五……と背中が重く冷たい何かに激突する。
「ゲッ!」
もんどりうって突いたばっかのゴブに衝突し、そのまま向こう側へと頭から転倒してしまった。
頭打って目から火花とんだわ・・・
背中て叩かれたりぶつかったりすると受け身も何にも出来なくなるんだよ……背筋無いから?
つーか何が居た・・・あ、壁だわ。
「痛ったー・・・はれ?剣は??」
剣は仰向けに倒れたゴブ5に刺さったまま揺れてた。
五匹の小鬼が倒れ伏す惨状を目で確認した後、ゾワーと恐怖心が上がってくる。
ゆっくりと生足他、自分の体を点検してゆく。
「あ、おでこちょっと擦りむいた・・・キュアキュアー!」
・・・よかった、何処も切ってない。
マジ諸刃の剣握ったままコケるとか危なすぎるやろ!!!!!!!
剣をゴブから抜いて、刃を確認する。
血か・・・液体で濡れているのみで刃こぼれも剣先の潰れも無い。
マントで拭き、鞘に納める。
旦那やコドモらがやってたゲームじゃみんな抜き放った剣を片手にやたらどたどた駆け回ってたが・・・アレ出来るようになんなきゃならんのかな・・・無理だろ!
足運びが歩幅になった瞬間なんも出来ずに刺されるわwwwいや、足を斬られる?
県警の警棒術の脚薙ぎがめたくそ凶悪でエペじゃ何度も出足を打たれて転がりまくったっけ・・・もうケーサツ官転生させろよ、無敵じゃん奴ら来たら!!!!!!
『こんなん全然大したことねーよ・・・バケモンみたいに強い奴らだってなーんも出来ずにシロートに刺されて死んじまうしよ』
合コンで食った男のピr・・・コトバが蘇る。
今思い出してもめたくそカッコいい奴だった・・・あれ?奴とはどうなったんだっけ・・・などと人生の四方山を彷徨っているうちにゴブたちの死体は五つのませき?てのになってしまった。
もうお腹減りすぎてクラクラしてきたし、はよ帰ろ・・・
魔石とやらを拾い、来た道を戻る。
あー、分かれ道とかなくてよかった。
途中、なぜか通路のど真ん中で男五人エルフ一人で乱交しまくってる奴らがいた。
美しく清楚可憐なエルフがくっそ汚い大男たちに凌辱される姿が尊すぎてぼったちで眺めてしまったが、それ以上見るならカネとるぜと休憩中()のおじから言われ惜しみ惜しみ立ち去るしかなかった・・・
乱交の向こう側では白い金髪美少女と女の子を背負った男に二人の男が必死になって乱交への参加を懇願していた。
・・・ダンジョンてそういうトコだったのか・・・ちょっと意外。
ラブホてか前世の廃墟系イベントハウス(無許可)的なハコとして使われてるのかもしれない。
意外なこの世界の深さを知って感心しつつ、あたしはギルドへ戻ろうと道を急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます