第23話 あたらなる街へ

ミョ~に薄明るい地上の森と草原とそこにぽつりぽつりと開かれている畑・・・そう、めたくそ人間の営みのスケールが小さい。


「はぁ~、こんなんでマジューやら魔人やらとバチバチやり合ってんじゃそのうちサッと絶滅しちゃうんじゃないのん」


百日後に死ぬ人類!とかやったけど、なんかイミないのでは?


ミドリや色の濃い大地に延々とつづく白く光る線は、道だろうか。


その道の先にある、ちっちゃいおまるのような都市っぽい場所を目指し、進んでゆくつか降りてゆく。


マッパで・・・やばいじゃん!

見渡すと、ひたすら進むあたしのうしろでマントとワンピがパタパタしている。


「なん・・・ああ、吸いつけられてるからか」


掴み寄せ身にまとい、ひたすらに街を目指す。


進んだり降りたり昇ったり、てのはなんか手足を動かすよう当然に出来る。

なんて便利な魔法なの・・・



おまるのようだった街は近づいてくると、めたくそにでっかい大都市だった。


「うーん、中に降りちゃっていいか・・・いや、やっぱり」


城壁て感じの分厚いカベの外に並んでいる人々の列に目をやる。


「並ぶかあ・・・」


列の一番後ろに降りる。

誰も上なんか見て無いので、とーぜんの如く誰にも見咎められない。


顔を人にチェンジ!して「あー疲れた」とブチブチいいつつ並ぶ。


つーか腹減った・・・


列のちょい先で某創世記救世主みたいな男と絶世の美女つかエルフがキャラキャラとダベっている。

ふーん、エルフてやっぱいるんだぁ・・・


とくに割り込まれたり喧嘩が始まったりすることなく、列は遅々とではあるが進んでゆく。


エルフが敬礼され、とくになんの誰何や調べも無く、本人も戸惑いながら入城(?)していった。

あー、エルフのがよかったか・・・いや、偉い人と間違えられたらコトだしやめとこ。


順調にあたしの番が回って来た。


「何者だ。何しに来た」


「ナイコ、浮浪者のブレイバー?冒険者登録にきました」


「ブレイバー・・・住んでいた都道府県と庁のある町を言え」


「え?埼玉県、大宮・・・じゃない、浦和だっけ?」


「キサマ、大宮レジスタンスの者か!」


「はぃい?!?!」


「うそうそwww前組んで立ってた門番してたヤツがブレイバーでよ、同郷のブレイバーをそう揶揄ってたんだよw」


「ああ、いや、でもあたしもそのネタはわからないわよ?」


「ああ。そいつも”誰も知らない”つって落ち込んでたしそんなもんだろ、いいぜ」


クイッ、と親指で門の中を指す。


「ありがと。じゃね」


「ああ!浦和帝国の奴らに気を付けろよ!」


またわけわからん諧謔を叫んでくるが、笑顔で手を振り城内に入る。


川口・・・知ってる暴走族が何チームかいたっけ・・・



とまれ()ボーケン者ギルドを探し・・・お、エルフちゃんがむくつけき男たちに囲まれてる。

耳をそばだてると、冒険者の互助会()がどうとか聞こえてきた・・・

互助会。せめて組合だろ・・・

その集団が移動を始めた。


コレは・・・裏路地に引き込まれてヤられてしまう流れ?


空腹も忘れて後を追跡してしまう・・・




特になんも無く、某米国のドラマに出てくる警察署みたいな建物の前で男たちとエルフは別れて行った。


つまらん。


・・・あ、じゃああの建物が互助会?つかギルド??



前の街と比べたらやたら・・・びんぼ臭い。

二階建ての建物で一階は回廊で囲まれたカウンターが外から壁の仕切りも無く丸見えで、ゾンビとかに襲撃される警察署そのモノて佇まいだった。


つーかスリラーとかバイオとか、なんでアメリカ人てあんなシャキシャキ動くゾンビが好きなんだろうか・・・


つーかゾンビものて驚愕に目を剥き絶叫する白人女性の顔のが万倍も怖いじゃんね。

コドモが泣くのって悉くあのシーンだし・・・いや、白人女性てヒューマンの中じゃ最も美しいてのに異論はないけど。



つーかここってヒゲ男爵が言ってたキルギスてとこでいーの?

とにかくも、解放されつつもここが入口!て感じのゲートをくぐり、受付らしきカウンターへ着く。


「誰も居な・・・ええ」


なんかカウンター向こうに白目を剥いた金髪の女性が倒れてアワを吹いている。


奥を見ると、さっき入ってったエルフがめたくそ太った巨漢に奥へ連れ込まれるようにその背中を追って行くのが見えた。



「・・・え?誰もいなくなっちゃったじゃん」


とりあえず、カウンター向こうで卒倒してる女にキュアキュアを掛ける。


甦った女性は周囲を覗い、「夢か・・・」そう呟くと、再びやる気ない風に椅子へ戻る。


「あのー、ぼーけんしゃとーろくお願いします」


「・・・銅貨三枚」


「お金ないです」


応えると、何も言わずに椅子にもたれ、再び動かなくなった。



・・・すごい、このヤル気の無さ・・・なんかアメリカとかヨーロッパみたい・・・



とにかく、お金が無いとなんも出来ないようなので、そのまま外へ出るしかなかった。


相変わらず薄暗い青空の下、あたしはそれなりの人いきれの中をただぼーぜんと足を進めるしかなかった。


何かにけ躓いてコケた。


「はあっ!」


なにも手荷物が無いせいか、急速に接近する地面へ開いた両手が素早く伸び、ビッターン!と華麗なる前受け身で地面を捕えることが出来たのであった。


つーか持ち上がったあたしのカカトが頭に当たってめたくそ痛かった。


カラダ柔らかすぎる・・・


そいやスケートサークルでガニ股走行しながらその開いた股の間にアタマと腕通してピースしてた奴いたっけ・・・






つーか、何に躓いたんだと目をやれば、そこにはなんか高そうな服を着たおっさんが倒れていた。



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