第22話 それぞれの旅立ち
あたしら三人は暗く寒く埃っぽい裏路地に言葉も無く佇んでいた。
「・・・あのさ」
「うん」
「三人だと寂しいよね・・・」
ため息の三重奏。
ナイコ3が明るい声でのたまう。
「六人くらいはいいんじゃない?」
「うん、大体そんくらいでダベってたよね前世」
「あー、確かにwww」
夫々頷き合い、無言のうちに閉じたマントからちじれた毛を取り出す。
オリジナルであろう、あたしが音頭()を取る。
「いくわよ」
「「わかったわ」」
・
・
・
・
・
・
「ちょっとまって!もうムリ・・・狭いんだよ!もっとそっち寄りなさいよ!!」
「え?なに??コッチの毛でいーの?」
「おーい!だからこっちドン詰まりなんだって!聞こえてんの?!」
「姦しき風の乙女よ、宙を蹴る足となりて我に空の自由を・・・」
「あーもー、なんかそっち収集つかないみたいだから行くね~~」
「どこ行くんだよ!おい、まちなって!!」
「麗しき水の精霊よ!我にビールを齎せ!!」
「あたし見てたけど、10人くらいもうどっかいっちゃったよ」
「ねえ、あたしたちだけは女らしくおしとやかにお喋りしましょう、ね?」
「ゴキュッ、ごきゅっ、プッハァアアアア!!!マジビール出たわ!!」
「「「「「「「マジで?!?!?」」」」」」
「ツマミは?めかぶ出して!」
・・・量産型ナイコに囲まれ、あたしは全てがどうでもよくなっていた。
「オリジナルでーす!みんな聴いて!!」
「おーい!オリジンちゃんがなんか言うって!」
「はーい」
「うーい」
静まり返った。
「あなた達は自由よ。たくましく生きて!」
「「「「「「「「「「「「ヒャッハー!!!!」」」」」」」」」」」」
みんなその場から走り去った。
20人くらいはブー⊂(^ω^)⊃ーンと飛んで行った。
え?飛べるの??
これはいくらなんでも不味いだろ・・・ちょっと町長さんに話しとかないと。
再び一人になってしまったあたしは城へ向かった。
「あの、ナイコですけど。中のヒトに取り次いでください」
めたくそ逞しいヒゲ男にちょっと色気づいてしまいクネクネしながら要請する。
「・・・物乞いなら裏へ回れ」
裏?!ナニをする気なの?!?!と僅かにときめいてしまったが、そいやよれたマントにズタズタワンピだったよ・・・身の程を知れ!
ハラも減ってるし残飯とかもらえるんなら行ってみるかと立派な城門を迂回してゆく。
「オトコ二人分の高さってトコかな」
城壁を見上げながら歩いてると、ジブンと同じ小汚い奴らがタカってるのが見えた。
めたくそ臭ってるが、馴れてきたのかそんな嫌悪感が無いのが悲しい・・・
「ねえ、あんたたちも残飯?」
「ああ。おまえもか?」
「うん、町長・・・じゃなくて男爵様に会いに来たんだけどムリそーでさぁ」
男は目を剥き、あたしを見る。
「そりゃ無理だろ・・・つうか、ここの残飯だって取り合い殴り合いだぜ。そんな体じゃ、つーか女じゃなんも取れねえどころか怪我するだけだし町で股でも開いてたほうがいいぞ」
いや、ソレやって死んだんだよ。
「えー!じゃ戻るわ、ありがと。・・・ところでどっか調子悪いとこない?」
「ん?わかるのか、腹とヒザがな・・・」
「あなたにキュアキュアー」
「なんだそりゃ」
「エルテのおまじないよ。じゃね」
なんかもー全てがめんどくさくなってきてしまった。
「あーあ、もーいいや。別の街行こ」
たしか飛べるんだよな、どーやんだろ・・・頭の上の空気を薄くすればいいのか?
「日がな一日ゲラゲラ笑ってるお気楽身分の風のビッチ達よ、我が頭上の大気密度をガックーンを下げちゃってやっちゃって!」
スペルシャウトは、・・・創作系()呪文だから無くていーのか。
めたくそ耳鳴りがしてなんも聞こえなくなり、髪の毛とマントがめたくそな勢いで上に引っ張られる。
「うごごご・・・息が・・・ひぁああああ!!!!!!!」
めくれ当たったワンピもろとも着衣が全て巻き上げられてしまい、直後にあたし本体が持ち上げられ・・・というよか世界が急速に上昇し始めた。
「ああああああ!!!!!!!!おなかヒュッとするぅううう!!!!!!!」
男は玉袋がヒュンヒュンするらしいがどーなんだろう。
男女間の差別意識解消のために相互理解を高るためのスレでは様々な憶測が語られていたっけ。
つーかぱんつと靴下サンダル姿でひたすら上昇してるこの間抜けな姿はなんとかならんのか・・・つーかめたくそに寒い。
下を見ると、四角く壁に囲まれた城が見える。
庭にキラキラした人達・・・武装した兵士?が集まって、いや、城門から出てゆく。
「風のビッチーズ!声と映像を届けて」
やっぱ兵士ぽい。
先頭は
「ゼンダさーん!」
「・・・ナイコ?!」
「なに?どっか行くの?戦争??」
「いや、おまえ生きてたのか?そちらは・・・同じ顔か」
「あたしもナイコ。・・・13番目に生まれし翼を失った使徒・・・我が両翼を捥いだゼン・・・ウゲッ!」
「もー虚構感の高い声ださないでよ。つーかオリジナルがこなかった?」
「オリジナル・・・本体、みたいなものか?」
「まぁそんなもんよ。殺されてたら引き取ろうと思って」
「いや、俺達はそもそもナイコが殺されたと聞いてその清算?・・・まぁ贖罪の掃討に出るところなんだが」
「どうなってんだおまえら」
「贖罪の掃討!・・・てなに?」
「あーあたしらはなんかどんどん増えちゃうのよ、だからそんな敵討ち・・・懲罰行動みたいなのしてるヒマないわよ?」
「ああ・・・使徒やっちゃったから申し開きみたいな感じで街の人達を、てコトか!それは・・・信仰心は兎も角、状況的にかなりズレてるからやめといたほうがイイかも」
「あたしらからナイマっつー最終兵器みたいなのが生まれちゃったから、たぶんそれがラシィちゃんの言ってた第七の使徒?てやつだと思う」
「彼女も無限に増えるから、それに備えてあなた達は何かをするべきなのよ」
「何か、と言われてもな・・・ああ、我が主に会ってくれないか?説明をもう一度繰り返すことになるが」
ナイコ二人が頷く。
「ええ、そのために来たの」
「
二人は城内へと通され、兵士たちは・・・え?放置??
まーいっか。あたしもどっか行こう・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます