第21話 エルフ

グダグダと話し合い、今まで首だけだったこと、あたしとあなたは同じ人間だということを変身しながら確認し合った。


「・・・でも、キャラクリんときはそうは感じなかったけど・・・呆れるほどスゴイ美女ね」


「確かに・・・天使ちゃんはもう美形そのままって感じだから気づかなかったけど、リアルで見るとマジでスゴイ!以外ことばが出ないわね」


「まぁ、コレじゃ善田さんゼンダウォルフがあんなになっちゃうのも仕方ないって感じ?男の生理はワカらんケド」


「たしかに、あたしら女からみてもズタズタに汚したくなる暗い欲望を禁じ得ませんわ」



二人でエルフに戻った状態で見つめ合い、ぐふふふ・・・・・と笑い合う。

ヨダレを垂らしながら。


「・・・あたし、て首から生えたのよね」


ナイコ2が言う。


「うん」


「じゃああたしがオリジナルであんたが複製じゃない?」


「え?・・・別に、そんでもいいけど」


じゃああたしがナイコ2か。


「いや、イイ悪いじゃなくてさ、あんたの方は体から首が生えたんでしょ?」


「いや、気づいたらこの血塗れワンピに靴下・・・ルーズとサンダルだったのよね~」


「そうなの?・・・もし状況的にソレが正しかったらあんたがオリジナルになるのか」


「え?・・・ああそっか、あたしも生き返らせられたかもしんないのか」


「うん。誰かいなかった?今のあたしん時みたいにさー」


「誰も居なかったわね」


「そっか。じゃーとりあえずあなたがオリジナルで、あたしは・・・ナイコツーでいいか」


「実は既に頭ン中でそー呼んでたwww」


「流石わたしwww」


きゃらきゃらと笑い合って、しばし見つめ合う。


「何考えてるか解ると思うけど・・・」


「うん、痛いのは嫌だから、アレですまそ」


しばし溜めたあと、二人同時にマントを跳ね上げる。


たがいに突き出した手に握られたのは・・・それぞれの体毛だった。


「え・・・縮れてるじゃん、何処から抜いたの?」


「あんたのもじゃん。でも、ちょっと緊張した」


「ああ、なんかそーゆー雰囲気あったよね」


存在確率だか自己同一のなんとかを掛けてドッペル同士で殺し合うとか架空世界的お約束が頭をかすめては、いた。


「じゃ、いくわよ」


「せーのっ!」


「「りざれくちおん!」」






あたしたちは四人になってしまった。







「ちょっとさぁ、やばくない?」

「ヤバいヤバい」

「何コレマジヤバいって!」

「今どきの子はマジとかヤバイとか言わないのよ?」

「ああ、お互いごじゅ・・・」


「「「その先はいわないで」」」


「・・・キレーにシンクロしたわね」

「ちょっとキモかった」

「あんたちょっとハブるわね」

「そうね、あんたの個性はそっちに伸ばした方がいいカモ」

「え?いじめられちゃうの?」

「なに期待にカオを赤らめてんのよ、違うわよ」

善田さんゼンダウォルフに突き出すぞ」

「そうね、名前をアンタだけ固有名にしましょ」

「あ、いいカモ」


「「「ということで、アンタは今からナイマね」」」


あたしのいんも・・・髪の毛から生まれた方に三者一致で命名した。


するとナイコの目が光り、頭の上に天使の輪っかが百個ほど浮かんで消えて行った。


「うわ、某男爵ぽい」

「なに?レベラップ?」

「なにそのフィットネスジムっぽい名前」

「レベルアップでしょ?」


しばらく顔を伏せ、うなだれていたナイマが身を起こした。



「我はナイマ!ナイコが股の毛から生まれしこの世に断罪を下すもの!我が主アイネルの願いにより人類へ審判を下す」



「・・・え?ナニこれバグったの?!」

「ちょっとナイマ、正気?」

「でも面白くない?もっかい言ってみてよ」


ナイマはあたしに目を向け、口を開いた。


「あたしはオリジナルから生まれたせいか、なんかすっごくあなたに愛を感じるの。タケシ・・・一人目に生んだ子供と同じくらい?・・・だから、あなたを散々に陵虐した人類を、もう許すことは出来ない」


「わぁああああ!!!わぁああああ!!!!!」

「落ち着いて!みんなナイコなのよ、長男の事は苦しまないで!」

「解説しないでよ!苦しむのはみんな同じなのよ?!?!」


そう、初めてのカレシの名前を付けてしまったんだよ・・・中卒と同時に独り立ちして音信不通になったからすっかり忘れてたけど。


え?普通忘れないって?

・・・恥ずかしいけどもう五人くらい生んでんだよね・・・ダンナも夫々ちが・・・


「とにかく、わたくしは百日後の人類掃滅にかけて動きます。・・・では、おさらばです」


めたくそに輝く笑顔、しかも憂い系のやるせない陰りを含む哀愁の微笑みであたしらナイコ団()はハートを貫通破壊され、しばらく誰も動けなかった。


「ねっ、ねえ・・・このカオやめよ」

「うん、エルフの姿は基本封印で」

「そうね・・・心の中に秘めた今の笑顔を」





あたしらの雑な百面相で汚したくないから・・・





@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


最終回(打ち切り)に匹敵する最高のシーンを描き上げてしまった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る