第18話 ネックチョッパー

空腹を抱え、日暮れ・・・まぁ変わらず暗く薄明るいんだけど・・・までギルド横の路地で寝そべっている。

中のにぎやかさに窓を覗き込むと、誰もが生き生きとした顔で飲んだり食ったり話したりとキラキラ輝いている。


昏く寒い裏路地でボロに身を包んで空腹を耐えるジブンが酷くみじめで、あたしはいつの間にか涙を流していた。


心を決めて、再び覗き込む。


冒険者ってひとたちなら、それなりにお金もってそうだ。

このカオの器量でも声かけられたり襲われたりすんだし、勝算は高いのかも。


入口の前に立ち、出てくる冒険者を品定めする。


大きいのは痛そうだし、なるべく小さい人にしよう・・・

丁度いい感じのヒトに声をかけると女だった。


悪態を付き離れようとすると、手を捻り上げられる。


そのままゴツい警備員?みたいのに捕まり、殴られて頭がぐわん、と揺れた。

高く鳴る音に遠のく耳に物騒な会話が届く。


「・・・処理しときやす」


「首はここに晒しといて」


―――――殺されるんだ。


笑いが漏れてしまう。

殴られ、犯されを繰り返し、最低の気持ちで体を捨てようとした先で、あっけなく。


「泣くならはじめっからやんじゃねえよ」


男の怒号に、泣いていたことに気づく。

みじめだ。


こんな簡単に―――――理不尽よ!・・・嘆く心にふと、馬車での会話が蘇る。

この世界に降りた時、あたしのせいで死んだという三人の男の話が。


名前は・・・サドン、哲也、ケンシロウ・・・だっけ、憶えてないや。


そうだった、簡単に殺されてしまうのだった。

この世界では、ヒトの命は時間や食べ物より遥かに低いのだ。


当然、法・・・簡単な街の決め事なんかよりも。

そういえば娼婦は初めから法の外だっていってた・・・気ままに生殺与奪できる人間てことだったんだね・・・


引き摺られていく目の端に、妙な男の脚の動きが映る。


「その脚、具合悪いの?」


「ああ、昔な―――――って、殺されるヤツがヒトの心配してんじゃねえよ」


笑う男の引き攣るような脚の動きに、囁き声でキュアを掛けた。

男は特になんの反応も無く昼にも連れ込まれた暗い部屋へとあたしを運び、血生臭い匂いの中髪を掴み上げ首を伸ばされる。


ニワトリもこんな風に殺されるんだっけ。


「よっ」


男の声と共にうなじに鋭い痛みが走り、意外にもそれ以上はなんの苦しみも無く意識は闇へと落ちて行った。


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