第16話 冒登弐

グダグダなポルノ展開3Pで再びズタズタに汚された後、二人を仲介人にして癒しの魔法を使うというミョーな契約を口約束で結ばされ、再度二人により苛烈な責めをこの身に加えられながらあたしは気を失った・・・らしい。


すでにこの部屋に二人の姿はなく、ただ腐りかけの臓物臭だけが冷えた夜気に漂っているだけだった。


二日連続で・・・つか、ひたすら犯されてるだけじゃん!

なんなん異世界転生、最低すぎるやろ!


痛みとも痺れともつかぬ曖昧さに支配されまるで動かなくなった体にイメージ解凍()でキュアをかけ、血生臭い石床に身を起こす。


あーしんど・・・


ん?キュアキュアしたのに首にまだ違和感が・・・と手をやると、何かが巻かれている。


「首輪か?臭い・・・」


見えんのでわからんけど、犬の首輪っぽいアクセが巻かれている。

うーん、あの二人のドレイってシルシか、洒落てるなあ。


さらにズタズタになった血塗れのワンピを拾いまとい、幸運なことに持ち去られていなかったマントに身を包んで解体部屋を・・・ん?解放されてるあっちの庭に出るのか?それとも後ろのドア?


ドアでいいか、とノブを押し・・・あ、引くのか。

引くと、当然ながらというか、廊下が左右に伸びている。


明かりがあり賑々しいほうへと足を向けると、そこはあのギルドホールだった。


再び黙って列に並ぶ。


何度も割り込まれたり喧嘩を横目に割り込んだりしながら、どうにかカウンターへたどり着く。


「ぼーけんしゃとかに登録したいんだけど」


「それはコッチじゃねえ隣だ」


なんの感情もわかず、誰も並んでない隣へ足を向ける。


「ぼーけんしゃとーろくおねがいしまー」


「無理よ」


見ると、あの若い子がナンパしてた美人さんだった。


「え?」


「あなた、奴隷でしょ。奴隷の登録は主人がいないとムリなの」


「え?そーなの?・・・ひょっとしてコレ?」


首輪にユビを入れて引っ張る。


「そうよ。・・・なに、売ったり売られたりしたワケじゃないの?いっとくけどここは奴隷の売買や契約にはかかわらないから」


くるっ、と奇麗に巻かれたロールを金色に輝かせながら頭を振り、アゴをしゃくる。


・・・あ、行けってことか。


「ありがと」


離れ、よろよろとギルドの外へ出て行く。

巻いてる、て事はコテがあんのか・・・幾らすんだろ。

手を見る。

金の入った袋は当然のように無い。

剣を忘れ・・・あ、剣帯ごと持ってかれたのか。


「はぁあああ・・・・・」


長くため息を吐きながら建屋脇の路地に入り込み、雑に積み上げられた廃材やゴミの間に身を横たえ、寝た。



暫くしてどんな方法なのかあの二人に見つけられたあたしは連行され冷水をブッかけられた後に箱に詰められ何処かへと運ばれた。

ドッカンバッキンと雑に輸送されなんの音もしなくなると、二人が誰かと会話する声が聞こえてきた。


「―――――そうか、癒しの奇跡を」


「はい、この身で確かめておりやす」


「見せよ」


「はっ―――――」


箱が空けられたのか、あまりの眩さに目を眇めるあたしの前に立つのはあのなんとかという男爵だった。


「やはり―――――おい、この二人に礼を。篤くもてなせよ、くれぐれも殺す事無きように・・・な」



ヒャッハァアアアア!!!!!!ザマァ見晒せこの恩知らずの鬼畜ブラザーズどもがァアアアアア!!!!!!!!




―――――というところで目が覚めた。



「はぁ~~~~~・・・・・」


路地裏から見上げる細長い空は、この世界に降りたばかりの時と同じく、青く暗い。


脈絡もなく他人に救われる夢見て狂喜するなんて、まるで子供じゃん・・・


こんなホコリっぽいトコで寝てたワリに、喉がそんなイガイガしてない。

うーん、さすが若さ。

口を閉じて寝てるだけでお口の目覚めも・・・


「くさッ!」


ああ、そうだった。

吐いたりいろんなもん出されたり突っ込まれたりで・・・キュアキュアじゃ消えんのか。

水とか出せる魔法てないの?

水を思い浮かべると、精霊魔法→水→タイダルウェイブと出てきたので、早速・・・いや、タイダルウェ~~~ヴって何?

疑問すると、詳細がわかる。


AoEエリア・オブ・エフェクト。精霊魔法究極奥義の一つ。莫大な水流を呼び寄せ全てを荒れ狂う水の嵐へ放り込み粉砕する。


あおえ、てなんじゃろ・・・いや、そんないらんのよ!精霊ヤバすぎるやろ。

そいや風の精霊共召喚したときも突然敵の前に置き去りにされたんだった・・・これは封印したほうがいんかな。


つーか英語でウォータとかワラwwwとか言えば出てこないの?


「ウォータ・・・おー出た出たwww」


ほよんと水のカタマリが浮き上がる。


口を付け、存分にすすぎ捨てたり飲んだりして、消す。



一息つくと、首輪がゴツゴツして痛い。

外れねーのかコレ・・・ん?


バックルぽいとこをグニグニとやってたら緩んだ。

おっ、と引っ張るとするりとヒザに落ちる。


なんだ、ただのアクセかよ・・・なにが奴隷やねん!


おもっくそ地面に叩きつけた。

はぁ~アホくさ。もっかい並ぶか・・・

ん?そーいやカネかかるとか家宰のヒトが言ってなかった?


・・・ハイムリぃいいいい!!!!!


よかったよかった。

冒険者不能です!


途端に気分は明るくなり、地に落ちた首輪を見る。


まーコレも売れるかもしれんし、もってくか。



うーん、どーやって稼ご・・・やっぱ夜鷹闇で誤魔化して売る人くらいしかないよなあ・・・



ため息を付きながら見上げる空は、やはり冷涼とした暗い群青だった。

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